39.線は、僕を描く(砥上裕將) 感想・考察

砥上裕將(とがみひろまさ)さんの『線は、僕を描く』を読みました。
第59回メフィスト賞、第17回本屋大賞3位を取っている作品です。
本屋大賞1位が『流浪の月』の年の第3位だから流石に期待。

水墨画に魅了された大学生の成長を描く物語です。
正直私は水墨画について全く興味はないのですが、自分が知らない世界を小説で読むほうが楽しいんですよね。
そう思って購入。
作者がそもそも水墨画家のため、水墨画について、その世界と芸術家の人達について知ることができます。

こっからネタバレ~~
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順当に面白い。
この物語は全く芸術ど素人の主人公青山霜介が水墨画の古匠、篠田湖山に育てられるという話ですが、水墨画を通して、主人公も千瑛も成長していくというような内容でした。
面白いのは、主人公が湖山に教わるところ、偏屈な芸術家特有の教え方に見えるようで理にかなっているというような描写が上手い。
普通の水墨画は四君子(しくんし)の4つの題材を教わるところから始めるのでしょうが、それに触れつつ巨匠の教え方を見せるというのが面白い。
そこで壁にぶつかったり、大学でひと悶着あったりとするわけですが、登場人物の成長が見られて最後は大団円というのも良い。
こういう小説って、俺たちの戦いはこれからだエンドもよくあるので湖山賞取るところまできちんと書いてくれてよかったです。

後は作者の文章力が素晴らしい。基本主人公の一人称視点で語られるわけですが、主人公の景色や人に対して感じる感性ってものが非常に純粋で読んでいて清々しい気分になるんですよね。
風景の描写がちょっとだけ村上春樹みを感じて非常に読みやすい。
こういう小説って水墨画で苦悩する姿とか、どう仕上がるかとか水墨画家じゃないとわからない苦悩ってのを表現するの難しいと思うんですけど上手く表現していて読みやすいのも凄い。
流石に結末パートの「花に教わって生を描こう」というのが、さすがに素人の私には理解できませんでしたが、、、修行パートで成長したんだね!って感じで面白かったです。
後安易に湖山先生死ななくてよかったです。
出会った瞬間に死亡エンド有りそうだと思ってたので。(芸術系の小説、アニメあるある)

正直めちゃくちゃ面白いとまでは行かなかったんですけど、水墨画という難しい題材を小説で学べたのは良い経験でした。

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