42.名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件(白井智之)感想・考察

白井智之(しらいともゆき)さんの『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』を読みました。
2023年、本格ミステリ1位、このミステリーがすごい!2位と数々の賞を受賞している作品です。
カルト教団内を調査する中で起きた殺人事件の話です。
特殊設定ミステリっていうジャンルなんですかね。
評判が良いので読んでいきます。
454Pと中々にヘビーなページ数

こっからネタバレ
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面白すぎでは?
最近読むミステリーどれも当たりすぎ。

ジョーデンタウン、それは"奇蹟"により、病気や怪我が存在しません。
そこで相次ぐ不審死。
"現実"では起こすことが不可能だと思われる、
第一の密室殺人
第二の毒殺事件
第三の2重密室

いつ自分たちが殺されるかわからないカルト集団の異様さと、集団催眠は異質で読んでいて緊張感がすごかった。

200P近くある解決編では多重解決により2転3転していきました。
解決編では、りり子がジムジョーデンに都合の良い推理を披露し、一件落着で帰宅するかと思われましたが、そこでどんでん返し。
リリ子までもが殺されるとはまさか思いませんでした。
そこからの大塒の解決編パート。
今までの伏線が回収されていきます。
"奇蹟"を信じる故に、見えていないものと認識できていないものによるトリックは面白すぎた。
"現実"を生きる探偵が"奇蹟"を信じる人々に推理を披露していく様は圧巻でした。
"奇蹟"を信じてジムジョーデンを犯人とするか。
"現実"を受け入れ"奇蹟"なんてないと断ずるかの2者択一。
その詐欺師のような択一に隠された意味と、4年後のQの追及。
そして最後の"名探偵のいけにえ"のタイトル回収は鳥肌が立ちました。

物語全体としての評価をします。
文章力もあって読みやすく、先が気になる作り方はミステリー小説なのに序盤から退屈せずに読み進められてよかった。
事件の内容もトリックのオンパレードでどうやって解決するんだと疑問なうえに、
カルト集団の異様な空気感の怖さで、怖いもの見たさで手が止まらない作りになっているの面白い。
そしてそこからの解決編面白すぎないか?
個人的には冒頭の集団自殺の真相が、大塒が嵌めたことが示されたときが一番驚いた。

あえて批評するなら下記ですかね。
・大塒とリリ子のキャラに感情移入しづらい。
凡人の探偵と天才の助手っていう関係なのでしょうが、考えが常人離れしてるので感情移入がしづらかったです。
とっととジョーデンタウン退去命令されたとき逃げろよってのと、調査団が狙われているという危機感がないのがちょっと気になりました。
・オチは面白いけども…
集団自殺は大塒が仕組んで、これこそが"名探偵のいけにえ"というオチは面白いのだけれど、リリ子がそれを望んでないないのにやめろよと思う部分はある。
タイトル回収するためだけのオチ感はある。

でも、それくらいは気にならないくらい面白い作品だった。

  1. この事件実在の事件ジムジョーンズがモデルになっているみたい。
    関連資料見て調べてわかりました。
    実際にあった集団自殺からミステリーを作り出したと考えても恐るべき発想力。
    作者の白井智之さんこの作品だけでファンになりそうです。
    色々調べたら白井智之さんは、グロい作品多いみたいだけど今作はマイルド目らしい。
    個人的にはグロいの苦手なんですけど、これだけ面白い作品を見せられたら他の作品も読んでみたいと思います。

    2023/12/26 追記
    『名探偵のいけにえ』が面白かったので同作者の『エレファントヘッド』も読みました。
    別記事書こうか迷ったんですけど軽くこちらで。
    めちゃくちゃ面白いんですけど、めちゃくちゃグロいし、えげつないので耐性ある方のみ心して読んだ方が良いと思います。
    これ『名探偵のいけにえ』がかなり良心的に思えます…。
    エレファントヘッド読んだ反動で、まだ動悸が止まらない。


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