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よい質問の3パターンを究める・セミナー・研究会編【シリーズ「問い」を問う(その1)】

現在、共創ワークショップでは、「問い」について議論をしています。その一環で、考えるきっかけとして、いくつかわたしが考える「問い」についてのトピックをあげさせていただきます。

セミナーや研究会における問い=質問

まず、特定のテーマについての議論における「問い」の仕方について取り上げます。つまり、ゼロからの問いではなく、なんらかの前提条件がある中での問いといえます。これは、質問と言ったほうがいいのではないでしょうか。

問い=質問の3パターン

この状況下でわたしが考える3つの問いのパターンは、以下のとおりです。1)事実確認の問い、2)議論をすすめる・深めるための問い、3)議論を飛躍させるための問い。それぞれを以下に解説します。

1)事実確認の問い

まずすべきは、事実確認の問いです。セミナーや研究会で司会者が、「質問がある人は挙手してください」と問いかけられたときに、まず最初に質問すべきことです。この時点では、2)議論をすすめる・深めるための問いや、3)議論を飛躍させるための問いとは別に、この項目だけを質問します。

特に専門的な話や新しい概念についての話では、前提条件が参加者全員に共有されていない状況で話が終わってしまうことがよくあります。その場合、話者が伝えたかったことと聞き手が聞いて思っていることがずれていることがままあります。

またレジュメの内容と話者が話した内容に齟齬がある場合や、前提条件として知っておきたい統計データなど、話者の話そのものの理解に必要な事実確認は話者にとっても聞き手にとっても重要なことです。話者にとって当たり前すぎる情報は、重要な前提条件であったも提示し忘れてしまうこともよくあります。

そのようなときに、話者と聞き手の前提条件を確認するような事実確認の問いをすると、話者にも聞き手にも喜ばれます。

ポイントは、質問する時に、「事実確認の質問ですが」とことわることと、他の内容の問いと一緒にしない、ということです。下記の2)と3)の内容について質問したくても、それは次の機会に後回しにしましょう。

2)議論をすすめる・深めるための問い

これが、いわゆる「質問はありますか」と話者や司会の人がいうところの質問=問いとなります。この質問をするには、話者と聞き手が、話された内容について共通の理解をしていることが前提となります。

ここで質疑応答の流れをまとめてみると、まず最初に、事実確認の質問を受け付けて話者と聞き手の共通理解を確認する。次に、共通理解をしているという前提の中で、聞き手が思ったこと感じたこと考えたことを話者に問います。

議論をすすめる・深める問いとは、前提条件を共有した上で、その延長戦にある問い=質問であることが重要です。ここで問う内容は、あくまで話者の議論をひとつの事例=ケーススタディとした上での、解釈の仕方や聞き手が持っている他の事例との比較などであるべきです。

しかも「話者の考え方の枠組みの中で回答できること」であることが肝要です。もし話者の考え方の枠組みや前提条件を外してしまうような質問は、次にのべるコメントといったほうがよいと思います。

3)議論を飛躍させるための問い=質問というよりコメント

実際に、セミナーや研究会の場で多いのが、話者と聞き手が共有した前提条件や話者の枠組みを全く無視した「質問というよりコメント」です。

このことは聞き手もわかっていて、前置きとして「質問というよりコメントですが」とことわって発言していることが多いのですが、単なるコメントにおわらない貴重な質問である場合もあり得ます。

そこで「議論を飛躍させるための問い」という区分をしたわけですが、実際には、ほとんどのコメントが単なるコメントに終わってしまうのはそれなりの理由があります。

それは、話者の枠組みや話者と聞き手の共通理解や前提条件とは異なることを、聞き手は理解しているものの、その具体的な違いの詳細について説明しきれていないということです。

聞き手が、自分の枠組みや新しく定義した前提条件を示したうえで、あらためて話者と聞き手の共通理解を得たうえで、問いを発することができたとしたのであれば、これは、話者のテーマが当初の枠組みや話者の手を離れて新しいフィールドで「新しい問い」となったということができます。

セミナーや研究会における問い=質問のまとめ

結論として、セミナーや研究会における聞き手が発する問いには、1)事実確認、2)(本当の意味での)質問(議論をすすめる・深めるための問い)と3)コメント(場合によっては、議論を飛躍させる可能性を持っている)の3つだということができます。

したがって、わたしは、常に自分が質問する時には、問いを発する前に、「これは事実確認ですが」、「質問ですが」、「コメントですが」などと、ことわりをいれるようにしています。

これは、話者や聞き手に対して親切であると同時に、自分自身が、自分の問い=質問を、どのレベルのものであるのかを把握していますよというメッセージになります。

たまに、コメントだか質問だか、話しているうちにしっちゃかめっちゃかにダラダラと訳の分からないことをしゃべりこんでしまう聞き手がいませんか。司会者から、「短くしてください」とか「何が聞きたいのですか」と突っ込まれている方です。

もし、その傾向があるようでしたら、質問には3つのパターンがある。そして、質問する順番があることも覚えてください。

3つの問い=質問をする順番

1)事実確認の質問は、話し手が話し終わった直後に、2)議論をすすめる・深める質問は、中盤に、他の聞き手のみなさんの質問が終わったあるいは質問が途切れたタイミングで、3)コメントは、あくまで一番最後に、例えば、司会の人が「最後に質問はありませんか」といったタイミングでいうのが、わたしの流儀です。

事実確認をまずしなければならないのは、これがブレていると前提条件が話者と聞き手で共有できていないことになり、そもそもの議論が始まらないからです。本格的な議論が始まる前にすっきりさせておく方が、話者にとっても聞き手にとってもさいわいです。

議論をすすめる・深める質問については、実は、他の聞き手も気がついて質問したいと思っていることが多々ありますので、他の人の質問を聞いているだけで解決してしまう場合がよくあります。同時に、他の人の話を聞いている過程で自分の質問内容も進化することがよくあります。

つまり、みなさんの質問をあらかた聞き終わった時点で、まだ討議されていない内容についてのみ質問するようにします。結局、時期的には、中盤や終わり頃に発言することになります。

コメントについては、あくまで事実確認が終わって、他の聞き手が疑問点を解消した後のおまけみたいなものと考えたほうがよいと思います。コメントについては、先にのべたように議論を飛躍させる可能性を持っています。

しかし、質疑応答の時間の真ん中でこれをしてしまうと、他の聞き手が持っている議論をすすめる・深める質問を解決するさせることなく、議論が脱線する可能性が極めて高いことを考えなくてはなりません。

また、話し手の前提や枠組みを無視した聞き手がいいたいことだけを一方的に主張するコメントが、よくありがちであることも見逃してはなりません。聞き手の自己満足にはつながるでしょうが、そのようなコメントは話し手と他の聞き手にとってはあまり意味がないことがありがちです。気をつけましょう。

以上が、セミナーや研究会におけるわたしの問い=質問の流儀です。ご参考まで。

(この項 了)



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