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[Decode:Art] 芸術に秘せられた魔法

 前回の『受胎告知と聖杯』の記事を通し、特定の古き絵画は「誰の目にも見える美しさ」と「知る者にしか見えない美しさ」の二重構造で描かれていることと、その両方の視点でなければ「見えぬものがある」ことをお伝えいたしました。本件もまた絵画のDecodeを通し見方を綴ってゆきます。なぜに今さら古き絵画の見方を綴るのかに関しましては本件の最後で。ではさっそく始めましょう!


人間を知る

 絵画のDecodeには人間の性質を知る必要があります。なぜなら魔術師は人間の性質を知り尽くした上でその知識を絵画に落とし込んだから。人がどうやってモノを見るかを調べ尽くし、その性質を利用し、己の見せたいものを印象付けるのです。つまり、人の性質を先に理解していれば魔術師が見せたいものをピンポイントで見ることが可能となります。

視覚

 では絵画を見る時に知るべき人間の性質とは?それは五感の87%を占める視覚です。「見る」「見ない」という行為は自分で意思決定をし行なっていますが、「見る」を選択した後のモノを見る「視点」の動きは無意識です。故に、何かしらの方法で無意識に働きかけられたら自分でコントロールはできません。魔術師はこの性質をよく理解していました。

釣られる

 人の視点は釣られます。この「釣られる性質」と「釣る方法」を知らなければ、自分がどのようにモノを見ているか本当に理解しているとは言えません。まずは釣られる性質から。

引用元:『美術と視覚』ルドルフ・アルンハイム

 何も描かれていない正方形のキャンバスですが、これでも図形の持つ引力に人の視点は釣られます。最も引力を有するは「中心」。これは写真を撮るときにあなたも無意識に行なっているのでわかると思います。なぜか被写体を中心に収めようとしますよね?「日の丸弁当」と呼ばれあまり褒められた構図ではありませんが、人の性質が無意識にそうさせます。

 次に「四隅」。つまり「角」。中心の次に人の視点が釣られるのは角です。特に90度の直角。故に、視点が釣られることを意識せず描かれた絵を見た時、中心の後に移動するのは必然的に角であり、視点はそのまま額の外へ移動してしまいます。

 「線」も同様に視点の移動の補助をします。対角線や中心線はたとえ「見えていなくとも」人は意識するため、絵画になんの細工も施さなければ「線」も「角」と同様に視点を額の外へ誘導します。

 「↑」このような矢印がよく分かります。「90度の角度と直線」の組み合わせの記号で瞬時に人の視点を引きつけます。前述の「額の画像」に当てはめるなら、中心から四方に向かい矢印が伸びているようなもの。額の外に視点が流されてしまうのは仕方がありません。

 では、これら人の性質を踏まえた上で、魔術師はどのように人の視点を作品にとどめさせるのでしょうか?芸術作品に「矢印」は描けませんので、その他のもので代用しなければなりません。次は釣る方法です。


釣る

『受胎告知』のパス

 前回の記事『受胎告知と聖杯』のパスを例に見てみましょう。

 人の視点はまず中心に、次に角に釣られます。しかし受胎告知は角へ視点が移動する前に「黄金螺旋の線」が配置してありますので「角」より「線」に釣られます。(黄金螺旋の線も中心線・対角線と同様で描かれていなくとも無意識に釣られる線)

 この黄金螺旋の線は名前の通り螺旋であり曲線ですので視点は角へ留まらず流れるように反対側まで誘導されます。誘導された反対側もまた対になっておりますので同様に反対側へ誘導されます。つまり視点は8の字を描き、無意識で延々と絵画に惹きつけられるのです


目で釣る

『無原罪の御宿りの寓意』ジョルジョ・ヴァザーリ

 黄金比で天地が分割されたこの絵画。結論から申し上げますと、この絵画の視点は分割された上下を楕円を描きながら移動します。(黄金螺旋の軌道)

 しかしながら、この視点移動は黄金螺旋によるモノだけではなく、視点の上下移動を助ける強力な補助線によるもの。その線とは「視線」。絵画に描かれた人物の「視線」は矢印と同様の役目を果たします。

 この絵画の中心は聖母マリアに踏みつけられる蛇。その蛇の視線はマリアへ。マリアの視線は左斜め下を向き、視線の先には黄金螺旋があります。螺旋に沿って視点を動かし、螺旋付近に描かれた人物の視線に注目してください。皆一様に蛇または聖母マリアに視線を送っています。故に視点は再び蛇またはマリアへ戻りループします。一番大切なものに全ての注目が集まるよう「人物の視線」で釣るのです。つまり目で釣る。

 

指で釣る

『アダムの創造』ミケランジェロ

 「視線」に釣られるのと同様に「指線」、つまり「指が指す線」も矢印の役目を果たします。アダムの創造を例に見てみましょう。

 この絵画はアダムとゼウス(一般的な解釈では違いますよ)の二つの主役が、対角に区切られた二つの直角三角形のエリアに分けて描かれています。この二つのエリアを視線は行き来します。

 まずは中心の重なりそうな指に視点は釣られます。その後はどちらが先でも構いませんが、指が指す先の主役に視点を移動させると「主役の視線」は再度指先に。そのまま反対側へ視点を移動しても「主役の視線」は先と同じく指先ですから、視点は再び指先へ。『受胎告知』のように行ったり来たり指先を通して視点は釣られます。つまり指で釣る。


まとめ

 有名な絵画は「パス」や「視線」や「指線」を用いて、己の見せたいものをしっかり見てもらうよう魔法がかけてあるってこと。名画と呼ばれる特定の画家の特に高額な絵画なら尚更緻密に魔法がかけてあります。

 でね、その魔法ってのはね知の一卵性双生児のこと。

 近代の始まりと同時に、実用的技術は無用の芸術と、科学は魔術と切り離され、それ以前の知の一卵性双生児の母体から孤立したのである

『錬金術 大いなる神秘』序文より引用

 ここまでの知識は美術・芸術の学校で教えている普通の知識。いつも言いますが現代の学問の元は自由七科ですので、部分的であり、視点がズラされてもいますけど古き知識が組み込まれています。小学校の低学年で密儀の神の名を習うのと同じこと。美術として「美しく見える比率」は教えますが、その比率が「生命原理」だとは教えません。生命原理に関する数や幾何学や象徴は密儀であり、現代では「魔術」と呼ばれ学問から切り離されたものだから

 故に「学校で習える知識」だけではどんな魔法がかけられているか真に理解できません。特に存在に諸説ある天才が残した名画なら尚更。例えば、本件の知識を当てはめても以下の画像の真の意味は理解できません。

『洗礼者 聖ヨハネ』レオナルド・ダ・ヴィンチ

 画像からもお分かりの通り、本件は来週の『洗礼者 聖ヨハネ』のDecodeへと続く知識。この絵画の魔法はものすごい精度ですよ!お楽しみに〜!


大切なこと

 では最後に、冒頭でも触れましたが、なぜに今更、古い絵画のDecodeの知識が必要なのか?

 今でもガンガン使われているからですよ。それにね、、、

Bank of America & United Nation

 重要な場所に意味深に掲げられた象徴の大切な部分が明確に分かるからです。重要そうに見えてそうでないもの、適当に描かれているようで重要なもの、これらの違いが明確に分かるようになります。

 誰が見ても手前の夏至の王子が重要に見えますが、パスが示す「背景の女性」と「燃える木を見つめる男性」の象徴がこの絵の核心。Decodeしてみて実際そうでしたし、この絵画が示す「時」から世界は大きく動きました。

 また、このような数学的な事実(パス)を一緒にお伝えすれば、適当な解釈を垂れ流す偽物ときっちり差別化できますでしょ?変なのに踊らされて無駄にするほど我々に時間は残されておりません。

時間を大切に。若ければ若いほど。

 これにて本件は締めとさせて頂きます。あなた様の心にわたくしの心のパスが届きましたなら引き続きお付き合いをお願いいたします。


↓第3話『[ Decode:Art ] 洗礼者 聖ヨハネ』


本:『As above So below』

アパレル&小物:Cavalier Camp

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