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製作ノート vol.4 「ものづくりに出会う旅」

秋田に行って来た。そろそろ旅を復活させたい、いや、させねば!という思いからだ。

世間ではリベンジ旅なんていう言葉も聞かれるけど、私のはそんな勇ましいものではない。
完全プライベートの一人旅は2年半していないので、このままでは旅する筋肉が落ちてしまう…という焦りがあった。旅の感覚を思い出すためのリハビリのような旅がしたかった。

それに中途半端にたまっている航空マイルの有効期限が近付いていて、使ってしまいたいという事情もあった。今回の旅、JAL の「どこかにマイル」を使った旅である。「どこかにマイル」は簡単に言うと旅ガチャのようなもの。自分が選んだ4択の中でJALが一つ行き先を決定するシステムだ。通常必要とされるマイルより少ないマイルで往復航空券を利用できる。

で、決まった行き先が秋田だった。今まで行ったことがないところに行きたかったのでちょうど良い。一泊でサクッと行ってくることにした。
旅には見たり食べたり色んな楽しみがあるけれど、私はその土地の工芸品、民芸品に出会うことが楽しみで仕方ない。

前回の旅は2020年1月、北九州で出会ったプロダクトは小倉織だった。

そして今回、秋田は角館への旅で出会ったのは、樺細工(かばざいく)というもの。山桜の木の皮(樺)を乾燥させ、それを材料にしていろんなものを作る。代表的なものは茶筒だ。樺は湿気を寄せ付けないそうで、茶葉の保管にはぴったりなんだとか。

桜の木の皮は最低でも2年乾燥させるとか、樺細工は昔の武士の内職だったとか、そういう話を地元の人に教えてもらうのも面白い。

そうだ、たしか武士って戦がない時はヒマなんだった。それに要職でもない限り薄給。そしたら内職の一つや二つしたくなるのも道理だ。やっているうちに、「俺、戦よりこっちの手仕事の方が好きだなぁ」と気付いちゃう武士もいたのではなかろうか。

さて何を買って帰ろうか、と色んな店を回ってみた。茶筒も良いけど、店を見て回ると今はいろんなものを作っていることがわかる。モダンなデザインのトレイやアクセサリー、スマホケースまであった。

悩んだ挙げ句、私が選んだのはイヤリング。

樺細工「たたみもの」のイヤリング

樺細工の中で「たたみもの」という種類らしい。たたみもの、とは樺を重ねて貼り合わせ厚みを作ってから造形するもの。重ねた部分が地層のようで美しい。

私が買ったのは田口芳朗さんという方の作品で、まさに一点物。田口さんは不世出の名工らしく、私はこの作品を「伝四郎」というお店で見つけた。
このイヤリング、旅を再開させた記念品にしようと思う。身につけると、山桜が育った年月と樺細工になるまでの時間を感じられる気がする。

それにしても、予想以上に旅する筋肉は衰えていた。たった一泊の旅なのに、帰ってきたら結構くたびれていたから。
でもまた出かけたい。旅したい、と心から思う。




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