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製作ノート vol.1 「スローブック」

私は2001年から絵本を作るようになった。途中ブランクはあるものの、製作はコンスタントに続けている。ただ、今まで自作の絵本は親しい人へ贈ることはあっても売ったことがなかった。それが最近になって方針転換(方針というほどのものじゃないけれど)。渋谷〇〇書店の棚で新作『ちもとペーい』を売りはじめました!…このことについて書き留めておきたい。

渋谷〇〇書店では自分の棚を開設してから、市販絵本の古本と共に自作絵本を非売品として数冊置いていた。それをお客様や他の棚主さんに「自分の作った絵本です」と紹介すると、「どうして売らないのか?」と素朴に質問される。それに対する答え、理由は「自分が手製本で一冊一冊手づくりしているから」だ。

原画を描き、製本のために原画を再構成。紙の選定、購入、そして印刷。いよいよ製本。ボンドを塗る作業。寒冷紗、花布をつけ、またボンドを塗る作業。表紙の準備、糊付け。本文と表紙を合わせる作業。これらを全部一人でおこなう。表紙用の厚紙をカッターで切り出す作業(これが結構チカラが必要)もあって、今の自分は一度に3冊製本するのが精一杯。

ボンドや糊を塗るたびに乾くのをじっくり待つ必要があるため、全工程が終わるまで自分の場合(専業でないこともあるが)5日間くらいは見込む。神経を集中させ、ひたすら紙と対峙する。手製本の本は、短時間では出来ないスローフードならぬスローブックだ。

こうして出来上がった自分の絵本は手塩にかけて育てた子供のような存在だ。原画製作を含め、かかった時間や手間を考えると値段のつけようがない。愛着がありすぎて手放せない。

でも渋谷〇〇書店で他の棚主さんが自分の著作を積極的に売っているのを見て大いに刺激を受けた。気持ちが動きはじめた。

売ることに興味が出てきたんです!…でもでも葛藤が…!なんていう話をある方にしていたら、「まずは売ってみたらどうですか。売ったらまた新しい悩みも出て来るかもしれませんし…。製本は慣れてくるとどんどん数が作れるようになりますよ。」と言われた。

まるで「つべこべ言わずにやってみなさいよ!」とお尻を蹴飛ばされた気がして、自分の決意が固まった。この方には本当に感謝している。こんど会ったときにちゃんと御礼を伝えようと思っている。

そして何より渋谷〇〇書店に感謝。自作品を発表し、私に新しい世界を見せてくれた棚主さんたちに感謝だ。それから製本について色んなヒントを与えてくれた棚主さんもいて本当に有り難い。何がどうなるか分からないけど、やってみよう。

値段のつけようがないという私の絵本は、友人とも相談して「市販されている絵本の定価」を参考に値付けした。利益なんて当然出なくてむしろマイナスだけど、まずは知ってもらうことからスタートだね、と友人と話している。

「見返し」用の紙あれこれ


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