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夏の扉を開くとそこには白い一枚の手紙が置いてあった。 幻の手紙は心の中の琴線に触れ温もりを運んできてくれた。 そんな夢を見た事があった。 舞い戻る想い出が今度は秋への扉を叩こうとしていた。 1988年夏の終わり。 私は上海の地に降り立った。 少し砂っけ混じりの乾いた空気に大陸の空気を感じた。 上海の虹橋空港の滑走路では若い男女が自転車に二人乗りしている姿が見えた。 よく見ると滑走路はところどころ陥没していた。そしてその陥没したコンクリートの隙間から我先に咲かん
前編 / 憧れ 小学生の頃から憧れていた国がある。パリとロンドンだ。 1980年代私はパンクやbritpopsが好きになった。とりわけ、DURANDURANやTheCure、Cocteautwins、The smith...挙げていればきりがないがその独特な音楽波に段々とハマっていった。高校生の時にイギリス人の文通相手が出来たというのも大きな理由の一つだった。彼は私と同じ歳で国際フレンドシップクラブという団体を通して文通相手を紹介してもらった。当時はまだ今のようにインター
夜風の戯れ時、心地よく輝く街並みはとてつもなく新鮮な気持ちにさせてくれる。 ここはロンドン、ソーホーの高層ビルが連立する一帯。ここを過ぎると大通りに出る。そして目の前には突如、壮威な程美しい建築物が姿を現す。セントポール寺院。建物の周辺を囲むようにライトアップされてまるで闇夜の中に浮かび上がる巨大なオブジェのようだ。窓からの夜風が気持ちいい。流れるままにこの地にやってきて流されるままにこの地に住むようになった。このまま時間よ止まればいいのにと夜風を肌にジンジンと感じながら何
いつか、また会おう! あいつが残していった言葉。あの日、振り返りざまにそう聞こえたような気がした。 俺の中ではまだ終わっていない気持ち。嘘はつけない気持ちに整理がつかなかった。諦めようと努力もしたがそれは俺には不自然なことのように思えた。たとえあいつが誰を追っていこうと構わない。何があろうと俺のあいつへの気持ちはこれからも変わることはないしこの想いは決して消えることはない。俺はこの先永遠にお前だけを想って生きていく。それこそが俺に残された希望であってそして、それこそが今の
さようなら 小さな幻影 僕のディーバ もう逢う事もできないけれど 僕は君のその言葉を 胸に抱いて生きていくよ 「私を認めてくれて、ありがとう!」 ねえ、君 知ってた? あの時放った君の言葉は僕の救いでもあったんだよ 君が僕に与えてくれたものってたくさんあるんだよ 一つ一つ想い出していたらきりがないくらい 皆に君を愛する事は罪だと言われても 一緒に生きていこうと誓ったのに 君は酷いよ 孤独という沈黙だけ僕に残して居なくなってしまった そんな事言って
その夏、空は晴れて貴方は笑う。あどけない笑顔が心に染みわたる。 そして、彼女は死んだ。 彼女と初めて出会ったのは夜の公園だった。私は一人行き場を失い途方に暮れていた。もう一度だけ人を信じようと必死に生きてきたのにまた人を信じる事が出来なくなってしまった。もはや心はカラカラに渇き果てどうしようもなく、とにかく一人になりたかった。明日の仕事のスケジュールは真夜中まで詰まっているというのにだ。こんなに苦しめられるなんて!自分の気持ちの持って行きようがなくなって今日の予定をほった
朝起きてからの数時間。幸せを感じる事の出来る崇高な時間。 窓を開ければ美しく光る朝日と揺れる緑葉が風に揺られてきしむ音がする。 一杯の紅茶と新鮮で鮮烈な程に真っ赤なトマト。毎朝私はトマトを4つ切りにして白い大皿にそれを盛る。 海の粗塩をパラパラふりかけて食べるのが猛烈に美味くて止められない。 冷めないうちに紅茶を飲む。窓から時々勢いよく流れ込む風を感じながら一筋の朝日の光に照らされた白いキッチンを眺める。 昔若かった頃、キッチンにありったけの夢を詰めて料理していた。 お気
不思議と淋しくはなかった。このままどこか運ばれるまま運ばれて気ままに生きたいと思ったあの夏。想い出は私の心のドアを叩いて想いはもう居るはずもないアナタの元へ向かっていた。 何もかもが嫌になって仕事も、同棲中の彼氏も、今の生活も全て放棄してしまいたくなって私はこの地から離れようと埼玉から池袋へと向かった。このドロドロとした人間関係をどうしても一掃したかったのだ。池袋駅で下車して馴染の居酒屋でホッピーを注文した。ついでに焼き鶏のタレと塩、軟骨、砂肝と注文し濃いめの焼酎に黒ホッピ
石畳が続く小径を夜の海目指して歩く。やがて時間を追う度に何かにふと心を奪われた。甘くて懐かしいような香り。辺り一面に漂っている花の香り。 心地良い風が吹いていてその風に乗って甘い女性の歌声が運ばれてくる。 その瞬間一人旅の淋しさで壊れそうだった胸がわっと温かくなった。 私はまるで吸い込まれる様にその甘い声の主のもとへと足を運んだ。 そこは白壁の古いバルだった。 白い壁は屋根まで深紅のハイビスカスに覆われていて、その白い壁には一灯の琥珀色のランプが燈りハイビスカスの花
涙の先に見た空はまるで虹のように輝いているなんて誰が想像しただろうか。 辛かった日々のほんの少しの幸せがガラガラと崩れていった秋。 あの頃の私は空なんてまるで見ていなかった。 「WHY?」 問いかける事しか出来なかった自分が惨めで時間がただただ無残に過ぎていくだけだった。 春になってそれは突然やってきた。 もうすっかり幸せという感覚を忘れてしまっていたあの頃。私はようやく住み慣れた場所を離れる決心をした。 東京に住みたくなって昔の友人を頼りに一人電車に跳び乗った
「それは本当にぽつぽつ綺麗なの。眺めているとまるで体がゆらゆらしてくるのよ。気持ちが穏やかになって満たされて、もうずっとあの中に留まりたいって思ってしまうのよ。」 想い出が回る漆黒の海。幾度も繰り返す波を眺めながら君を思ふ。 そうして僕の胸の中に永遠に閉じ込めていた記憶を呼び覚まそう! 二人で一緒に見たもの、集めたもの、訪れた愛する土地、太陽、星影、月の夢、庭に一面に咲くフリージア、砂浜の記憶。 ここにはこの世でたった一人、愛する人が住んでいた。少なくとも昨日までは。
肌を刺す風の様に 駆け抜けて 憂愁の光の國目指す 矢は何千本も躰に突き刺さり 一時は命も危ぶまれた その姿は煌めく黄泉の國の幻 何千年とこの空虚な大地を駆け巡り かつては野獣と恐れられしもの 時を経て 闇の扉はもう存在しない 放たれた幻は天と地を一瞬にして駆け抜けて 生命を産む泡となる! さあ、君も旅に出よう この地の果てまで行けるのならば あの幻の野獣の如く空まで瞬く間に駆け上がり 風と一体になりて全てを吸収し尽して例え何を言われようと後戻りなんか