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濃い時代、静かな時間

中学生の頃、ホームルーム的なものが始まる時間よりだいぶ前に学校に着いていた気がする。
別のクラスの友達と登校していて、教室に着くとまだ数人しかクラスメイトが来ていない状態。
あの時間がわりと好きだった。
本を読むか、宿題を片付けるか、ぼんやり過ごすか。
放課後の時間はなんだかけだるい感じで好きじゃなくて、すぐ帰っていたように思う。
朝の澄んだ空気のなか、数人のクラスメイトと無言で過ごすのが楽だった。
朝早くに教室に着いているクラスメイトたちは、そんなに嫌な人はいなかった。
イジメっ子とかぶりっ子とか、そういう人はいなかった。
そんなに目立たないタイプの人たちだった。

もう、あの時間は一生体験できないのかもしれない。
私が働くことになって始業よりもだいぶ前に職場に着いたとしても、これから始まるのが学校か労働かでは気持ちが違ってくる気がする。
学校生活だってだるかったけれど、責任とかノルマとかそういうものはないから楽だった。
大人になればなるほど、同じ空間にいる人に気を遣って話しかけなきゃとなることが増えた。
朝の中学校はおはようと挨拶すればいいだけで、気楽だった。

人生のほんの3年間のことなのによく覚えている。
大人になった今、3年なんてあっという間に過ぎていく。
数年前のことでも何をしていたか思い出せない。
それだけ単調な日々を送っているということだろう。
中学の3年間は波瀾に満ちていて、だからこそ朝の教室が好きだった。
一時の平和。
あの時に戻りたいとは思わないが、色んな意味で充実していたのは事実で、今後の人生であんなにもがちゃがちゃすることはないのだと思う。
少し寂しい。

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