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ぼやぼや、初めての東京暮し

4月1日、入社式。
東京暮らしがはじまった。

私は人混みが嫌いだ。
みんなが違うことを考えながら色んな方向に向かって歩いていくのが嫌いだ。むさくるしさに息が詰まりながら、身体が斜めになりながら電車に押し込められるのが嫌いだ。全員下を向いて速足で通り過ぎていく。忙しない街だな、と思った。

私が住んでいるのは自分の父親の会社の社宅、リモートワークをすると昼過ぎから小さい子たちの叫び声やとたとたと走り回る音が聞こえる。

どうして駅を歩く人達から生活を感じられないんだろう。
生気なく灰色に見えるんだろう。

世界の色はピンクに染まっているのに、どこか機械的でかたい。温かくなってきているのに、空虚で冷たい。

致死量の人型にのまれて行き場を失った弱々しい幽霊は職場と家の行き来しかできず、今日も故郷に縋って布団に浸かる。

あと何年経てば慣れるんだろう。
毎日に愉しみを見つけられるんだろう。

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