見出し画像

政治家をこなす。小泉進次郎の模範的人気【ミッツ・マングローブ/熱視線】

 女装家・タレントのミッツ・マングローブさんが時代を駆け抜けた「アイドル」たちについてつづった書籍『熱視線』(2019年8月刊)より、珠玉のコラムを選りすぐりで紹介。今回は小泉進次郎さんについてお届けします。

ミッツ・マングローブ『熱視線』
ミッツ・マングローブ『熱視線』

 参院選から早2週間。よくよく考えると何のドラマも意外性もない、単に「数字(得票数と議席数)」を報告していくだけという、恒例の選挙特番祭りが、今回も全チャンネルで催されました。人間なんて所詮「数字」と「勝敗」にしか興味がないのかもしれません。別に誰も開票結果を逐一知る必要などないはずなのに、毎回あの『手に汗握る感』は何なのか。と言いつつ私も各局ザッピングしながら観ていたひとりです。

 ただ延々と「当落」を垂れ流すだけでは、2時間以上の番組は成り立ちません。各局とも様々な布陣やスタイルを駆使してお祭り感を演出していました。例えば「候補者の事務所から声を潜めて中継する」というお馴染みの光景では、リポーターとして小島瑠璃子のスケジュールをどこよりも早く押さえたテレビ東京。さすが選挙特番には命を賭けてらっしゃる。バブル期のような景気の良さです。別に局アナでもいいのでは?と思ったものの、流石こじるり。素晴らしい仕事っぷりでした。

イラスト:ミッツ・マングローブ

 もちろん政治の世界にもアイドルはいます。今は、なんてったって小泉進次郎でしょう。嘘だと思っていたら、本当に人気があるようで……。今回の選挙特番でも、各局ほぼ同時間帯に『進次郎追っかけVTR』を放送していました。候補者じゃないのに。しかしながらスペック的(2世・政治家にしては高い顔面偏差値)にも、ポジション的(漠然とした将来性に溢れる若手)にも、その人気の方向性的(インスタントカメラ持ってそうな追っかけマダム多数)にも、充分アイドルと呼ぶにふさわしい存在です。それが、どうしたものか個人的にはちっとも心躍りません。顔がタイプじゃないのはさておき、ずっとその理由を見出せぬまま、今までやり過ごしてきましたが、この度ようやく突き止めることができたので、ご報告させて頂きます。

 最近の職業アイドルは、どこか自意識が明確過ぎる上に、雛形や模範をどれだけそつなく完璧にこなすかの競い合いみたいに見えるのですが、まさに進次郎氏からも同じ印象を受けるのです。カラオケの採点機能や、太鼓の達人で高得点を出せる人が「優れている」とされてしまう、そんな点数至上主義の波が、政治家の世界にまで押し寄せているなんて。かつての田中角栄が八代亜紀ならば、さしずめ小泉進次郎はMay J.といったところでしょうか。

 それにしても進次郎氏は、とことん「クサい」。巧けりゃ巧いだけクサい。あの姿に政治家としてのカリスマ性を感じろと言われても、私はそんな真っ直ぐな心を持ち合わせていません。それでもいつか、彼の中に潜んでいるであろう難儀な性を楽しめる日がやってくると確信はしているので、どうか今のまま、無闇やたらに得意気な進次郎流を貫き続けて頂きたいものです。May J.が、意地でも『ありのままの~♪』を歌い続けたように。May J.、最近ちょっと面白いですし。

(初出:週刊朝日2016年8月5日号)


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!