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パンダを運ぶドキドキを今に伝えてくれる新聞記事

■きょうもパンダ日和 気ままに編集日記(2)

 10月20日に発売しました『パンダが日本にやってきた!』には、これまで朝日新聞で報道されてきたパンダに関する記事をたくさん収録しました。

 上野動物園でシャンシャンや双子が生まれたことを伝える最近のニュースはもちろんですが、80年代の地方面など年代ものの記事もいくつかピックアップしています。

 今回は、そのなかから本書の106ページで紹介した福岡市動物園の記事を取り上げます。

『パンダが日本にやってきた!』(朝日新聞出版)

 ご存じの方も多いとは思うのですが、上野動物園の次にパンダのペアが来園したのは福岡市動物園でした。1980年3月のことです。オスのシャンシャンとメスのパオリン。

『パンダが日本にやってきた!』では、シャンシャンとパオリンが到着した翌日1980年3月24日付の朝刊記事をご紹介しています。この記事は、2頭のパンダそのものではなく、中国から輸送するのを担った人たちに着目し、その感想を丁寧に聞き取ってまとめています。

 飛行機のパイロットの方、客室乗務員の方、空港から動物園まで運んだトラック運転手の方、さらに見学に来ていた親子の方、まったく興味がないという会社員の方。とくにトラック運転手の方が何度も予行練習をしていたという話は、緊張の様子がとてもよく伝わってきて、読んだあとにもう40年以上も前のことだというのに「無事に着いてよかったなあ」と思わずホッとしてしまいました。

 福岡市動物園にシャンシャンとパオリンが2カ月ほど滞在した様子は、公開初日の1980年4月2日付の「1万8千人が『わーいパンダだ』」や、2頭の帰国を伝える同年6月1日付の「パンダ大使 お元気で」など何度も記事になっていますが、着眼点のおもしろさから3月24日付の記事を選びました。

 106ページのデザインは最初は写真が入っていませんでしたが、途中、どうしても当時の写真をあわせて掲載したくなりました。いい写真が残っていないかなと資料を探していて見つけたのが、福岡市動物園協会さんが発行している『動物園だより』(現在は『動植物園だより』)のパンダ特集号(1980年8月刊)です。現在、福岡市動物園の公式ホームページで全文公開されています。

https://zoo.city.fukuoka.lg.jp/letters/
※福岡市動物園のHPリンク
https://zoo.city.fukuoka.lg.jp/letters/

 全24ページの冊子とは思えないほどの充実ぶり。パンダの詳しい生態にはじまって、パンダが福岡にやってくるまでの経緯やパンダ舎の準備、2頭のプロフィールや滞在中の1日のスケジュールなどが詳しく紹介されています。パンダの愛らしさを伝えたいという思いから通訳の方が作詞された「Pandaって何だ」という童謡も楽譜入りで掲載されています。

 2カ月という短い間とはいえ、当時、上野動物園でしか見ることのできなかった貴重なパンダの姿に福岡の街が大いに盛り上がった様子がよくわかります。

 期間中の観覧者総数は87万人を超えました。この数を見ると、パンダが到着した時には、記者の問いかけに「興味ないですわ」と素っ気なく答えていた冒頭の会社員の方も、一度は見に行ったに違いないと想像してしまいます。


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