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水野美紀が「監視されている!」と戦慄を止められない子育て“神アプリ”とは?

 42歳で電撃結婚、翌年には高齢出産。女優・水野美紀さんが“母性”ホルモンに振り回され、育児に奮闘する日々を開けっぴろげにつづった子育て奮闘記『余力ゼロで生きてます。』(2019年11月、朝日新聞出版)からの記事。今回は子育てに欠かせない携帯アプリを紹介。まるで監視されているようだと、水野さんが絶賛するアプリとは? さらに子育て奮闘記第二弾『今日もまた余力ゼロで生きてます。』も好評発売中! こちらもお楽しみに。

『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』(朝日新聞出版)

 妊娠中も出産後も、心の拠り所になったのは携帯のアプリ。

 ダウンロードして出産予定日を入力すると、毎日5行くらいのアドバイスやメッセージが送られて来る。

 妊娠中には「ママリ」。産後は「ninaru-baby」(ニナルベビー)というアプリを毎日チェック。

 これが本当にすごくて、毎日タイムリーな情報を与えてくれる。

 そんな訳ないのだが、その精度たるや監視されてるほどのレベル。

 いやいや、大げさな表現なのは分かっている(笑)。

 だってそれほどタイムリーなのだ。

 だんだんお腹が大きくなって下着に困り、

「みんなどうしてるんだろう?」

 と思うと、マタニティー下着販売のおすすめサイトが送られて来るし、そろそろ入院準備しといた方がいいかな? と思ったその翌日には、

「入院の準備はしましたか~?」

 と、入院準備品リストのサイトを添えて送られて来る。

 授乳していて乳首が擦り切れて、激しい痛みに悶絶していると、

「乳首のケアをしましょう~」

 と来るし、我が子にオムツかぶれの症状が現れたら、

「オムツかぶれに悩んでいませんか?~」

 と来る。

 めちゃくちゃタイムリー!

 ……もしかして監視されてるのか? なーんてビビるくらい(笑)。

 ちなみに今日は、生後293日。今日のメッセージは、

 赤¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥
¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥
¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥
¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥fvbちゃんが起
きざまに泣くことに触れたもの。
えtfgjk¥^^^^^^^^^^^^^df cghfffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffても大丈夫ですよ、
というアドバイスだ。まさに昨夜、起きぬけにわーん! と泣いたところだ!---

 だああああ!!

 失礼。我が子が乱入しました。文字化けではありません。キーボードを叩かれました。

 今日のメッセージは、「赤ちゃんが起きぬけに泣くことに触れたもの。慌てなくても大丈夫ですよ」

 と書いてあった部分をむちゃくちゃにされました……。

 えー、仕切り直して、とにかく、私のような初産の初心者マークの母は、分からないことだらけ。我が子のちょっとした変化にいちいち不安になるのだが、こうしてアプリを覗いていると、うちも御多分に洩れずということなのだなと安心する。

 睡眠時間の変化や排泄の変化、身長や体重の伸び、首すわりや寝返りの時期、全てアプリに記されているデータに大きく前後せずに当てはまる。

 それを手軽に確認できるのは本当に大きな安心材料になる。

 ありがたいことにうちの我が子は順調に育っているようだ。

 産まれたばかりの頃は、信じられないくらいちっちゃくって、耳なんて信じられないくらいペラペラで、泣き声も頼りなかった。

 産まれたばかりの赤ちゃんはものすごい勢いで育つ。

 3キロだった体重は2カ月で倍の6キロになり、今や8キロ。

 まだまだちっちゃいけど、産まれたてほやほやのあの頼りなかったころに比べたら、9カ月経ってずいぶん頼もしくなったものだ。

 目下の心配事は鼻水である。もうかれこれ1カ月くらい垂らしっぱなしで治らない。

 睡眠時に鼻が詰まって苦しそうなので、朝病院に連れて行ってお薬をもらったのだが、処方された数日分のお薬を飲みきってもまだ治らない。

 なぜなのか。

 保育園のお友達からもらってくるのである。

 4月から保育園が始まって通い始めたのだが、我が子の所属する「ポンポコリンクラス(仮名)」の8名のお友だちは全員鼻水を垂らしているのであるからして、もう、誰がいつパンデミックさせたのかも定かでなく、誰が誰にうつしているのかも定かでない。

 そしてこの“治りかけてはうつされて”の永遠のループは一体いつ終わるのかも分からない。

 でも、こうして抵抗力が養われ、強くなっていくのだと医者はいう。

 まだ自分でチーンと鼻をかめないので、親は鼻吸いチューブで吸って吸って吸いまくる。

イラスト:唐橋充

「ウイルスだからなるべくマメに吸い出してあげてね」

 と病院の先生にも言われた。

 うちには4つも鼻吸いチューブが用意してあって、夫婦で交互に吸う。

 これをめちゃくちゃ嫌がって抵抗されるので大変なのである。

 寝かせて、股の間に頭を挟んで押さえ込み、素早くチューブを構えて鼻に当て、絶妙な圧でじゅじゅっ、と2秒で吸う。

 なかなかにコツがいるがもう慣れたものだ。

 そして柔らかいティッシュで優しくふく。

 まだ皮膚が薄いから、ティッシュの摩擦で鼻の下の皮膚がただれてしまわないように、鼻セレブでそっと拭いてあげる。

 お風呂上がりには、夫が鼻の下に馬油を塗ってくれる。

 いつ終わるともしれない鼻水との戦い。

 親はスキルアップして備えるしかない。

 このあいだ、ウイルスで胃をやられた。

 ずっとみぞおち辺りがシクシク痛み、ご飯が食べられなかった。

 しかし、その間も鼻水は出続ける。出続けるからには吸い続ける。

 我が子が自分で「チーン」できるようになるその日まで、吸い続けなければならないのだ。

 パンデミックは一体いつ終焉を迎えるのか。

 一つのパンデミックが終焉しても、きっとすぐに次なるパンデミックが襲って来るだろう。

 母は戦う。

 そろそろ電動鼻吸い器、「メルシーポット」を試してみるべきか。

 私は古い人間なのでどうもアナログが好きだ。

 口でチューブを吸った方が自分で加減ができて良いような気がするので電動には手を出していなかったが……検討の必要がありそうだ。

 そして、今、

 私は戦慄を止められない。

 0時に更新されるアプリをチェックした。

 本日のアドバイスは、

「赤ちゃんの鼻水に悩んでいませんか~?」

 監視されてる! 監視されてるぞ!!

水野美紀(みずの・みき)
1974年三重県生まれ。女優、作家・演出家。87年芸能界デビュー。2017年第一子を出産。映画「踊る大捜査線」シリーズ、ドラマ「探偵が早すぎる」シリーズ、テレビ番組「突然ですが占ってもいいですか?」、舞台「ベイジルタウンの女神」。舞台では脚本・演出を担当、自身で演劇ユニット「プロペラ犬」も主宰している。他にも多数の出演作があり、CMにも出演するなど、幅広いジャンルで活躍し続けている。また、何気ない日常をユーモラスにつづったエッセイ集『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』も好評を得ており、続編が9月20日に発売予定。その他の著書に、『ドロップ・ボックス』『私の中のおっさん』『プロペラ犬の育て方』がある。

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