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核弾頭を喰らう2

「核弾頭が消えたってどういうことかしら」麻田真実(まみ)が目の前でコーヒーを啜っている玉出の アタマを小突きながら質問した。 「小突くなよ、ボケ」玉出が真美の指を振り払いながら、 眉間に皺を寄せた。 「おまえ、スタバの女王って呼ばれてるらしいぞ」阿保がそう言うと、 「あら、そんなにわたしキレイかしら」真実が両手で頬を挟んで、顔を赤らめた。 「ちがう、スタバで何人ものむさくるしい男たちをかしずかせて、コーヒーの代金を その都度払わせてるから」 「なんだと、テメェ―っ」

    • 時間虫

      牟田歌夢(かむ)は

      • ミュータント(突然変異体)

        核弾頭を噛み潰して喰らい生きながらえているという 伝説の幽鬼(ハゲタカ)。  一方、小学生、夢憧翔(むどうしょう)は 平穏な日常を家族と送っていたが、ある夜 半ぐれたちに袋叩きにされたことをきっかけに、 憎しみの突然変異体(ラ ハイネ) に生まれ変わってしまう。  そして世界中の核弾頭を食べ尽くしてしまった ハゲタカは世界一の核物質を体内に貯め、世界一の 放射能に汚染される。  家族や友人の励ましを得た翔は地上最強の ミュータント(アームストロング)にまた 変異し、ハゲタカと

        • 核弾頭を喰らう1

                フカザワカズキ「玉出―っ、戦争したくねぇか」 学校からの帰り道、、玉出マサルのクラスメート、 阿保(あほ)正一がアホなことを抜かした。 「アホ。戦争なんてやったらきっといてぇぞ」 玉出が女子生徒たちのスカートをまくりながら そうほざいた。 「おまえはあいかわらず腰抜けで間抜けだなあ。核兵器でも使われたら、イタイなんて 感じてるヒマはないんだよ」 「そうなのか」「おまえはあいかわらず腰抜けで間抜けだなあ。かく」 「わあった、わあった。何で二度いうんだよ」

        核弾頭を喰らう2

          ラストダンスなど踊らないで  

              フカザワカズキ 未真魚(みまな)暁(あかつき)は都立高校の一年生。 右乳房にしこりがあるのを見つけたのは、 二月の中旬頃だった。 「おかあさん、ごめんね」 暁は台所で味噌汁を作っていた 母親の京香にポツンとつぶやいた。 「ごめん。病気になんかなっちゃって」 「いいのよ。いちばんつらいのはアンタ なんだから」 京香が振り向き、暁のオデコにキスをした。 「やだーっ、なにするのよ、おかあさん」 暁が激しく胸の前で両手を振った。 「もう、お別れだから。これが最後のキスよ」

          ラストダンスなど踊らないで  

          なにもかもうまくいかないことだけど

                                            10                            フカザワカズキ F警察署死体安置所系、死体の布を顔からそっと 剥ぎ取る。 「朝」系の目から思わず涙が零れ落ちた。 「ほんとだ、たしかに朝ちゃんだ」 茜がたしかめるようにつぶやいた。 「冗談なのかと思ったら本当に死んでやがる」 系が悔しさを滲ませるようにつぶやいた。 そのとき、死体安置所のドアが開いて黒いスーツを着て黒いネクタイを締め、黒

          なにもかもうまくいかないことだけど

          何もかもうまくいかないけれど9

          「系、歴史変更機関、検索してみたんだけどな」茜がスマホを系に向けて喋った。 「やっぱり、ヒットしないんだよ。どうしても」 「ほっとけよ、そんななもん。汚らわしい」 系がぶんむくれた。 放課後の教室には暖かい秋の夕陽が差し込んでいて、どこかしら ほのぼのとした空気が漂っていた。 「なに、むくれてんだよ。あれか好きなほどキライっていう」 茜が系をおちょくった。 「てめぇ、1765万回ぶっ殺すぞ」 系が凄んだ。 「何だよ、その数字。特別な意味でもあるのか」 「ない、適当にいっただ

          何もかもうまくいかないけれど9

          核弾頭を喰らう

          核弾頭を噛み潰し喰らって生きながらえている という怪物(マリリン)を愛してしまった 高校生、玉出は凄まじい放射能に被爆しながら マリリンと結ばれて、史上最強のバケモノ(フリシアン)に変身し 異世界で途轍もない強敵たちと闘っていく。  一方、玉出の子供を身ごもったマリリンは 歌手としてデビューし、歌を歌い、なかなか会えない 玉出への想いを募らせていく。  そんな時、ひょんなことから異世界と戦争を することになった地球防衛軍は玉出に対抗するため マリリンとその子供を異世界に送り込

          核弾頭を喰らう

          何もかもうまくいかないけれど8

          「よう、朝」「だーれが、呼び捨てにしていいつった! 朝さまだろうが」 「それは言い過ぎだろ」 朝礼の後、教室で系と茜は朝を問い質した。 「オマエ、歴史変更機関って知ってるか」 「歴史変更機関?」 朝がキョトンとした顔をした。 「なに、それ」 「サムスルとかなんとか」 茜がうろ覚えの単語を並べた。 「フランシスコザビエルなら知ってる。 ネットで検索した」 「なんでそんなもん検索したんだよ」 「うっさいわねえ、どうだっていいじゃない。 アンタには関係ないでしょう」 「なに」 「や

          何もかもうまくいかないけれど8

          何もかもどうしようもないことだけど7

          「どれもこれもたしかに、銃乱射事件 が記載されている」 茜が(世界の猟奇殺人ベスト200)という解説書付きの分厚い本のページを捲りながら、つぶやいた。 「やっぱりあのオンナとんだくわせもんだよ」 茜がそういうと、 「ああ」 系が浮かない顔でボソッとつぶやいた。 「どうした」「ここ。この箇所」系が右手の人差し指でページの 一部分をなぞった。 「あっ、消えた」「うん」 「インクが薄かったんじゃないの」 「イヤ、何か文字が浮かんできた」 系が文章を読み上げた。 「歴史変更機関(

          何もかもどうしようもないことだけど7

          何もかもどうしようもないことだけど6

                                    フカザワカズキ 「あの女やっぱりおかしいよ」茜がsnsをけんさくしながら系に零した。 「銃乱射事件のことはちゃんと検索できるし、誰も懐疑的になってる様子もない」 「ということは、あのメギツネおれたちに一杯 食わせやがったんだ」 系が悔しさを表情に滲ませた。 「クソ、いまいましい」 「系、一応トショカンもあたっとくか」 「いいけど、だけどオレ本読むと 下痢するんだ」 「なおせ」 茜が冷たく言い放った。

          何もかもどうしようもないことだけど6

          何もかもどうしようもないことだけど5

          「やっぱり、この女おかしいぞ、茜」系が朝から後退った。 「オカシイのはアンタだったりして」「なに」 系が朝に手をあげようとした。 「あら? レディに手を上げるの。最低ね」 「何がレディだ! ウシガエルみたいな顔して」 「オマエな―っ、さっきから聴いてりゃ いい加減にしろよ」 朝が見事に切れた。 「大体なぁーっ、おかしいやつってのは自分で おかしいってことに気づかないんだよ」 「何ですって―っ」 つかみかからんばかりの二人「けんかするほど仲がいいって法則は この場合あてはま

          何もかもどうしようもないことだけど5

          何もかもどうしようもないことだけど4

          「なんだ、あの女」系が憤ったような顔になった。 「たしかに、変わってるよな。かわいいのに」 茜が同意した。 「だけど、気になることいってたな。銃乱射事件をなかったことにするとか」 「アタマがおかしいんだよ。そうでなけりゃ俺たちをからかっておもしろがってるんだ」 系が怒りが収まらないのか、机の脚を蹴った。 「スタバ、いくんだろ」 茜がきいてきた。 「ああ、コーヒーのやけ酒だ」系がそういうと、二人が笑った。 二人がスタバに行くと朝が優雅にコーヒーを飲んでいた。 「な

          何もかもどうしようもないことだけど4

          何もかもどうしようもないけれど3

          「難しいお話ですか」 突然、朝が話に加わってきた。 「いや、別に」 系がカッコをつけた。 「コイツ、本当はバカだから難しい話 なんかできるわけがないんすよ。それより、 アサさん。今度、浅草見物にでも一緒に いきませんか?  もちろんデート代はコイツもちで」 茜が系に人差し指を向けた。 「アメリカの銃乱射事件なかったことにしましょうか?」 朝がいきなり、突拍子もないことをいった。 「ハッ、ハイ?」 茜が目をむいた。 「できるわけねえだろ、そんなこと」系が席を立とうとした。

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          何もかもどうしようもないことだけど2

          「アメリカの銃乱射事件知ってるだろう」 茜が系に言葉を投げ掛けた。 「17人の尊い命が犠牲になったそうだよ」 茜が胸の前で十字架を切った。 「何だなあ、やっぱり世の中どんどん 暗くなっってるんだなあ」 「何だよ、いまさら」 系が学食のカレーパンを齧りながら、 茜を一瞥した。 「だって、幼い子供たちまで 犠牲になったそうだよ。これが 可哀想でなくて、何が可哀想なの」 「そうとも言えないんじゃないの」 系がヤンワリトと否定した。 「犯罪者が悪くて、被害者にまったく落ち度が ないっ

          何もかもどうしようもないことだけど2

          何もかもどうしようもないことだけど

                   フカザワカズキ 二人塚(ふたりづか)系は何もかもうまくいかない16才。高校では ナンパ倶楽部に所属している。  今までに女性にフラれたこと216回。 近頃、ようやく女性の何たるかがわかったのだと とんでもない思い違いをしているので、 誰か暇があったら教えてやって欲しい。 「なあ、系」 クラスメートの売買(うりかい)茜が 教室で系に呼びかけた。 「今日、転校生が来るらしいぞ」 「転校生?」 「ああ」 茜が頻りに頷いた。 「おんなか?」 「ああ 「どうせこの世

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