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なにもかもうまくいかないことだけど

                   

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フカザワカズキ


F警察署死体安置所

系、死体の布を顔からそっと
剥ぎ取る。

「朝」

系の目から思わず涙が零れ落ちた。
「ほんとだ、たしかに朝ちゃんだ」
茜がたしかめるようにつぶやいた。

「冗談なのかと思ったら

本当に死んでやがる」
系が悔しさを滲ませるようにつぶやいた。

そのとき、死体安置所のドアが開いて

黒いスーツを着て黒いネクタイを締め、黒い鞄を持った
30さいくらいの男が入ってきて、ひとつ咳をした。
「なんだい、おっさん」
茜が突っかかった。
「わたくし、こういうものです」
男が系に名刺を差し出した。

「歴史変更機構サムエル 日本支部

副所長 名代(なだい) 厚」

系が名刺の名前を読み上げた。

「そこにいる未來朝はうちの社員だったんです」
「やっぱり」
茜が手を打った。
「うちの学校に転入してきたのは偶然ですか」
系がそう聞くと、

「実は」

名代は歯切れ悪そうに言葉を押し出した。

「狙いはアナタなんです。系さん」

名代が系をしっかりと見詰めて説明した。





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