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『Thymesia』レビュー

Thymesia』は、中世ヨーロッパをベースに剣と魔法の世界観を舞台とした、いわゆるソウルライクと呼ばれるジャンルに相当する3Dアクションゲームだ。

かつて栄華を誇ったヘルメス王国には疫病が蔓延し、錬金術によって対抗しようと試みたが、その代償は大きく今では見る影もなく荒廃してしまっている。

主人公Corvus(コルヴス)は災厄の真実を知る人物だが、本作の序盤のある出来事によって記憶を失い、それを取り戻すべく行動していくことになる。

開発:OverBorder Studio
販売:Team17
配信日:2022年8月19日 / 日本語サポート有
Steamにも同レビューを公開中:Link

ソウルライク

本作の目的は主人公の失われた記憶を取り戻すこと。拠点である『Philosopher's Hill (賢者の丘)』をハブとして、記憶の中の様々なロケーションへと赴き、その過程で行く手を阻む敵を退けながら進んでいく。

ゲームデザインとしてはソウルシリーズにインスパイアされた、いわゆる「ソウルライク」と呼ばれるもので、BloodborneをベースにSEKIROの要素を加えて2で割ったような印象だ。

プレイヤースキルに比重を置いた難易度バランス。敵の体勢と体力を削ってからの致命の一撃。敵を倒し記憶の断片(=ソウル)を得てのレベルアップ。技能(=スキル)習得や体力回復、回復薬(=エスト瓶)補充に加えて敵も復活する休憩ポイント(=篝火)など。

その他、様々な要素がソウルシリーズを踏襲したもので、ソウルライクと聞いてイメージされるものはおおよそ押さえられているといったところだ。

本作ではメニューを開くと戦闘中であってもゲーム内時間が停止する。RTAシーンには向かないが、宅配などの現実的な問題には対応できるので、多くのプレイヤーにとっては素直にメリットだろう。

ゲームシステム

操作性はスタンダードな3Dアクション。

片手剣での近接攻撃が主体で、敵の体勢ゲージを削ってから体力ゲージを削り、致命の一撃に当たるフィニッシュムーブでとどめを刺す。体勢削りに有効な爪を使った攻撃や、敵の特殊攻撃を奪って戦技のように扱うことも可能だ。

体勢ゲージと体力ゲージが分かれているのはSEKIROをイメージさせるが、実態はそこまで効果的に作用しておらず、単純に複数ゲージがあるだけのように感じられてしまったのは惜しい。

回避はステップだが初期状態では距離も無敵時間も短く、機動性の落ちたBloodborneという印象。またSEKIROのように敵の攻撃を弾くこともできるが、受付時間が短くタイミングはシビアだ。

しかしレベルアップ時に獲得できる技能点を使って『技能(=スキル)』を習得すると、攻撃アクションや回避能力の拡張、弾きの受付時間を延ばすといったことができる。

技能はノーコストで振り直しができるので、探索やボス戦といった状況に合わせ、ビルドを組む感覚で思うままに試してみると良いだろう。

技能の『処刑者の満悦 Lv1 (致命での体力・気力回復)』、『大胆跳ね返し Lv1~2 (弾きの受付時間延長)』、『大回避 Lv1 (2連続回避+距離延長)』、『回避突き Lv1』を取ると、初期状態に比べて相当立ち回りがしやすくなる。 特に『大胆跳ね返し Lv2 (弾きの受付時間延長)』を取ると、SEKIROには及ばないものの、多少は近い感触になるのでおすすめだ。

日本語サポート

UI/テキストが日本語に対応している。

ソウルシリーズ本家に見られるようなフレーバーテキストの類はないが、ストーリーテリングや探索中に発見できる読み物があり、いずれも品質は高い印象だ。

なお、ローカライズサポートは 架け橋ゲームズwww.kakehashigames.com/ )、翻訳は 福嶋美絵子 氏@Eugene_Roserie ) が担当されている。

気になるポイント

高難易度が特徴となるソウルライクはゲームバランスの調整がすべてと言っても過言ではないため、これを怠ると「困難だが挑む楽しさ」ではなく単純に理不尽さが勝ってしまう。

あくまで筆者の主観として気になったポイントを上げておこう。

  • すべての敵に「妨害無効」という、攻撃モーションに入ると無条件にスーパーアーマーが付く

  • 自身の攻撃のキャンセル不可

  • 敵の攻撃のホーミング性能が強すぎる

  • 被ダメージに無敵時間がない

総評

ソウルライクと聞いてプレイヤーが求めるものは、本家に近しいプレイフィールだろう。だが先に「足して2で割ったようだ」と表現した通り、そこまでのゲームバランスには到達できていないというのが正直な印象だ。

しかし、いくらか気になるポイントはあるにせよ、同ジャンルの中では平均以上の完成度でプレイフィールも悪くはないことも事実。気になれば触ってみても損はないはずだ。

これからフィードバックを得てのブラッシュアップにも期待したい。

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