日記54 「荒地」が何にもわからなかった話

 T. S. エリオット『荒地』(岩波文庫)を買って読んでみた。そこでの原注、訳注の多いこと多いこと。まだ「荒地」(他にもふたつの詩集が同書には収められている)しか読んでいないが、原注にあった作品を僕はまるで読んでいないので、いまのままではどれだけ読んでも、エリオットの深奥には迫れないだろう。僕は非常に悔しい。大学で世界文学を学び、モダニズムについても教わったのに、エリオットのつま先にも触れられないのだ。こんな醜態があるだろうか。僕には文学の素養がまるで足りないのだ。
 それはそれとして、とりあえず「荒地」だけは目を通した。「V 雷の言ったこと」がいまのところいちばんよかったかな、と思う。僕がもっともゾッとしたのはここだった。荒地というよりも、もっと厳しく、われらを孤立させる荒野である。都市なんか目じゃない、まさに打ち捨てられたWaste Land。
 僕に言えるのはこれだけだ。

(2023.10.2)

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