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自転車のダメージ

あらゆるものが朽ちていく長期ツーリング。
すべての自転車パーツが交換されてきた。

何度溶接しても折れるキャリア。

街に着いたら溶接屋探しが日課になることも。

荒い。

-10℃以下の寒冷地では金属も折れやすくなる。

粗い。

溶接屋も見つからないような時は、結束バンドで固定。

市販のキャリアでは、どうやっても折れる。

一時帰国中に、金属のプロの友人にお願いして「絶対折れないキャリア」をつくってもらった。

ステンレスの丸棒で組んだキャリア。
これは現在にいたるまで一度も折れていない。

スタンドも、市販のスタンドはなんとも脆く折れまくる。

一時帰国中に、ハーレーのカスタム屋を経営している友人にお願いして「絶対折れないスタンド」をつくってもらった。

これもステンレス製、現在にいたるまで一度も折れていない。
バイク専門店なのに自転車パーツをつくらせてしまって、かたじけない。

リム割れも、やっかいなトラブル。

ブレーキによって外から内へつぶれるパターンと、タイヤの圧によって内から外へめくれるパターンがある。

まっぷたつに割れそうなクラックも。

リム割れは修復不可能なので、買い替えるしかない。
ツーリングにも耐えうる頑丈なリムが必要なのだが、自転車ツーリングの理解がない国の店では、いつも適当なリムに交換されてしまい、結局数ヶ月でまた割れてしまう。

なので、自分でホイールを組むスキルを習得した。

ツーリング向けのリムを現地で取り寄せて、自分で組み上げる。
スポークのテンションなんかも、自分のさじ加減で調整する。
下手にプロに頼むよりも、自分の自転車のことは自分がよくわかっている。
本来は振れ取り台が必要だが、なくてもできるようになった。
簡単ではないが、手順に従ってやれば、素人でもできる。
自分で組んだホイールがブレずにまっすぐ回転するのは、なかなかの快感だ。

超絶僻地のラダックでリムが割れた時は、懇意にしている日本のショップにお願いして、日本からホイールを送ってもらった。

発送から20日でレーに到着、長かった。

フレームも割れる。

ぶつけたわけでも何でもない、金属疲労。

オーストラリアの砂漠のど真ん中で。
この時ばかりはヒッチして、一番近くの街まで乗せてもらい、新車を買った。

アフリカでもフレームが折れて、日本からマラウイまで送ってもらった。

発送から10日でマラウイに到着。

アフリカでは、しょっちゅう自転車の値段を聞かれる。
初対面で人の所有物の値段を聞くなんて無礼なので答えないのだが、一度だけつい「2000ドルぐらいかな」と言ってしまったことがあった。
すると、相手は大きな目をひんむいて、
「自転車に2000ドルだと!? おまえ正気か!? ここでは2000ドルあれば家が買えるぞ! おまえのかあちゃんは何て言ってる? もしおれが2000ドルの自転車なんて買ったらかあちゃんにブン殴られるね!」

でも正直、パーツはすべて交換され、フレームさえも交換されると、この自転車がいくらかなんて、自分でもわからないのだ。

飛行機に乗る際、空港職員による荷物の扱い方は実にひどい。
モンゴルからイランに飛んだ時、修復できないほどフレームを曲げられてしまった。
歪んだフレームでしばらくだましだまし走り続け、日本からキルギスまでフレームを送ってもらった。

発送から25日でビシュケクに到着、長かった。

フレームとキャリアの接続部も折れやすい。

これは溶接できるが、しばらくするとまた折れる。

チェーンリング交換。

チェーンリング崩壊。

リアディレーラープーリー交換。

コートジボワールからアラスカに飛んだ時、空港職員によってリアディレーラーが破壊された。

これでは動けないので、アンカレッジで滞在する家のホストに助けを求め、空港まで車で迎えにきてもらった。

スポーク折れ。

スポークは、リアのスプロケット側が最も折れやすい。
リアのスプロケット側のスポークを交換するには、スプロケットをはずさなければならないので面倒。

自転車トラブルの原因は、8割方が過積載。
荷物の重さは、水や食料の積み具合にもよるが50~60kgだろうか、プラス僕の体重を支えながら何万kmも走行することなど想定されていないのだ。
荷物が重いとパーツの消耗があまりに激しいし、飛行機に乗る時の超過料金があまりに高いというのもあって、今は荷物が重くなりすぎないよう軽量化につとめている。

自転車メンテナンスツール。

工具フルセットを持ち歩いていた時期もあったが、それ自体が重すぎて、その重さがまた自転車にダメージを与えていくので、今は必要最小限にしている。

パンクも、荷物が重いほど頻発する。

パンク修理は日々のライフワーク。
今まで何百回修理してきたことか。

タイヤが寿命に近づいてくるとパンクも頻発するようになり、ひどい時は2~3時間に1回ぐらいのペースでパンクすることもある。

タイヤは、ツーリストたちから絶大な支持をされているドイツ製シュワルベのマラソン。

僕もこれ以外は使う気がしない、というぐらい信頼しているタイヤ。
パンクもしにくいし、耐久性も驚異的。
シュワルベマラソンの出現によって、スペアタイヤを持つ必要がなくなった、まさに革命的。

ヨーロッパでは入手しやすいが、意外にアメリカではシュワルベは普及しておらず、入手困難。
ちょうどタイヤ交換したいタイミングで、どこの国のどの街でシュワルベが入手できるかという情報が、旅を大きく左右したりする。

そんなしびれるほどタフなシュワルベのタイヤも、いずれ寿命がくる。
寿命を越えるとと、まずはここが裂ける。

僕の得意技、なんでもかんでも結束バンドで補修。

これ以上裂けないよう結束バンドで固定して、空気圧はゆるゆるにして、タイヤが入手できる街に着くまでそ~っと走る。

バッグも破れる。
ネパールの道端修繕屋さんはとても優秀だった。

ツーリングバッグの定番、やはりドイツ製のオルトリーブも、けっこうあっけなく破れる。

ブルックスサドルの経年変化。

乗るほどにケツになじみ、年を経るほど渋味を増す。

しかし、一生モノだと思っていたブルックスサドルも、崩壊。

二代目。

二代目も、テンション調整ボルトが折れてしまった。

三代目。

ペダルも折れる。

ステムも折れる。

これもぶつけたわけではなく、金属疲労。

分厚いグリップもこのザマ。

雪道走行では、ブレーキもギアも凍ってしまってきかなくなるので、工具を使って氷を砕きながら進む。

ボトルケージは無事だったが、帰国直後、小6の姪っ子がふざけて乗っかってきて、折れてしまった。

過酷な世界ツーリングにも耐えた物をヘシ折るなんて、末恐ろしい娘だ。

それから、何よりもあってはならないのが、自転車盗難。
セルビアでの自転車奪還劇以来、トリプルロックしている。

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