浅木ユウト

A型/高知県出身/2024年noteデビュー/エブリスタ・一風ノ空でも活動中/ホラー小…

浅木ユウト

A型/高知県出身/2024年noteデビュー/エブリスタ・一風ノ空でも活動中/ホラー小説メインに執筆

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第一章 背後にいるもの

■ 「ふぁあ…」 あくびをして、スマートフォンの時刻を確認する。九時ジャスト。 布団から体を起こして、枕元に置いてあった煙草の箱とライターを握りしめて立ち上がる。 四畳半の和室から短い廊下に出ると、窓の向こうに広がる雲ひとつない青空をぼんやり眺めながら煙草に火をつけた。有毒な煙が肺を満たし、ふぅ、と息を吐く。 東京で働いていた出口春が仕事を辞めて、愛媛県の内子町に移住し早三ヶ月が経った。 独身の一人暮らしに選んだのは、木造平屋建。 築年数不明の月二万五千円。トイレや浴

    • 執筆作業を順調に進める為にしていること

      私は応募したいコンテストがあれば、仕事以外の時間を執筆に費やします。 去年の秋ごろからずっとスランプで書けなかったけど、ようやく抜け出せたのでモチベーション高い今がチャンス! 執筆作業って本当に孤独な時間です…。なので途中で書くのを辞めてしまうことも良くあります。 下記は、私が長編小説を完結させるために行なっているスケジュール管理と執筆の流れです。ここ数年この流れで長編小説を完結させることができるようになりました。 【カレンダーアプリに目標を設定する】 応募したいコ

      • 『呪いのマーブリング』プロローグ

        【あらすじ】 東京のIT企業に勤めていた出口春は、心身ともに疲弊して仕事を辞めて愛媛に移住した。ある日、ドライブ中に見つけた深ヶ集落に初めて足を踏み入れた出口は、その集落で古民家カフェを経営する若夫婦と出会う。そこで出口が目にしたのは、2人の背後に佇む着物姿の女と、2人の全身を染め上げる黒いマーブル模様だった。 大学生の水野颯太は、友達の山本歌留多と休日のショッピングを楽しんでいた。そこに怪しいスーツ姿の男が現れて歌留多を拉致しようとする。2人は逃げるが、以後その男から付け

        • 自己紹介

          観覧ありがとうございます。 浅木(あさき)ユウトと申します。 四国の高知県生まれ。海と山のど田舎育ち。 職業→グラフィックデザイナー 好きな食べ物→チョコ・コーヒー(健康に害がないならお菓子中心の食生活がしたい) 趣味→読書・小説の執筆・絵を描く・ひとり旅・神社巡り(特に稲荷神社が好き) 電撃文庫とケータイ小説世代です。小説を書き始めるきっかけにもなりました。 初めて小説を書く行為をしたのは中学生の頃だったと記憶してます。 最初は100均で原稿用紙を購入して手書きをして

        第一章 背後にいるもの

          エピローグ

          ■■■  今年の春は、寒暖差も少なく過ごしやすい気温が続いていた。  高知は三月の下旬に桜が満開になった。  全国ニュースでも高知城や五台山の桜が特集で紹介され、休日はお花見を楽しむ人々でどこも賑わいを見せていた。  土曜日。  この日は朝から、体育館で男子バスケ部の練習試合が行われていた。  ピーッと、試合終了のホイッスルが鳴り響く。相手チームと整列をして礼を交わした後、ベンチに戻る光一の真横に同級生の松下が並んだ。 「光一、さっきのナイスシュートだったぜ!」 「あ

          第四章『再会と別れ』

          ■■■  翌日。  目を覚ました梓沙は、首に残る圧迫感を不快に思いながらベッドから降り、制服に着替え始めた。シャツのボタンを留めながら、ふと見た鏡に映る自身の姿を見て、胸元のボタンを留めていた手が止まった。  首筋にそっと手をやる。  そこには、両手で首を絞められた痕が残っていた…。 ■■■  母親とろくに口を利かないまま、三日が過ぎた。  水曜日の放課後。  この日は、朝からずっと雨が降っていた。  梓沙は電車から降り、黒い傘をさして、マンションまでの道のりを無言で

          第四章『再会と別れ』

          第三章『梓沙』

          ■■■  穂乃香から連絡があったのは水曜日の夜、梓沙が風呂上がりで部屋に戻って来たタイミングだった。  向こうの候補の日時を聞いた梓沙は、問題ないと穂乃香に伝える。要件も済んだ為、お礼を言って通話を切ろうとしたが、穂乃香に阻止され、そこからはデートプランについて長々と話しを聞かされる羽目になった。 ■■■  次の日。  梓沙はいつもより早く登校して、生徒玄関から渡り廊下を歩き到着した体育館の中を覗いた。  男子バスケ部が朝練をしている光景を眺めていた梓沙の姿に気づいた光

          第三章『梓沙』

          第二章『彷徨う親子』

          ■■■ ……………… …… 生後十ヶ月ほどまでに成長した裸の赤ん坊が、ベッドの横のカーペットの上で一人座りをしていた。  むくみのないすっきりとした顔立ちに、ぱっちりとした可愛らしい目。色素の薄い髪も生えている。 きゃっきゃっ  赤ん坊は笑っている。 「まま、まま」  ベッドから上体を起した梓沙を見て、はっきりと、“ママ”と口にした。 「まま、まぁま」 短い両手を上下に振ったり、叩いたりして、無邪気にきゃっきゃと笑っている。  梓沙は困った顔のまま、可愛らし

          第二章『彷徨う親子』

          第一章『呪いの遊び』

          ■■■ ピピピピピッ 「…ッ!」  耳元でスマホのアラームが鳴り響いたことで、須藤梓沙は夢から目覚めた。 「はっ、はっ…」  自室の天井を見つめたまま、口から乱れた呼吸を繰り返す。手のひらを当てた額には汗をかいていた。 (嫌な夢だ…)  夢でありながらリアルな痛みを思い出し、梓沙は青ざめた顔のまま、スマホのアラームを何とか止めるが、身体を丸めて横になったまますぐにベッドからは抜け出せなかった。 腹を突き破って出てくる赤ん坊。  グロいホラー映画のワンシーンに

          第一章『呪いの遊び』

          『怨名』プロローグ

          【あらすじ】 東京から高知に引っ越してきた転校生の少年、須藤梓沙は、クラスメイトの叶光一に映画部の撮影の協力を頼まれ、とある廃墟マンションで『ケンちゃん遊び』という降霊術を行う。 それが一つの呪いの始まりであり、そして、梓沙自身が抱えるもう一つの呪いの始まりだった……。  目の前は真っ暗で、状況も何も分からない。そんな自身の体を襲うのは、下腹部の強烈な痛みだ。  硬い台の上に仰向けになって、両足を広げて固定されている。両腕も動かせず、完全に身動きがとれない。この痛みから逃れ

          『怨名』プロローグ