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『呪いのマーブリング』プロローグ

【あらすじ】
東京のIT企業に勤めていた出口春でぐちはるは、心身ともに疲弊して仕事を辞めて愛媛に移住した。ある日、ドライブ中に見つけた深ヶふかが集落に初めて足を踏み入れた出口は、その集落で古民家カフェを経営する若夫婦と出会う。そこで出口が目にしたのは、2人の背後に佇む着物姿の女と、2人の全身を染め上げる黒いマーブル模様だった。

大学生の水野颯太みずのそうたは、友達の山本歌留多やまもとかるたと休日のショッピングを楽しんでいた。そこに怪しいスーツ姿の男が現れて歌留多を拉致しようとする。2人は逃げるが、以後その男から付け狙われることとなる。

歌留多を狙う男の目的は?
人を死に至らしめるマーブル模様の呪いとは?
静かな田舎町で巻き起こる怪奇と呪いの長編ホラー小説。



とある田舎の小学校で、三年生がマーブリングの授業を行っていた。

各自が机の上に広げた道具を使って、様々な形のマーブル模様を生み出している。楽しそうな子供達の声が響く中、女性担任が机の間を歩きながら作業の様子を眺めていた。

次々と用紙に写し出されるマーブル模様は、男女ともに明るいニ色の色でできている。
青と緑。
赤とピンク。
紫とオレンジ。

黒と、–––

急に、暗いマーブル模様が目に飛び込んできた。
担任はその生徒の机の横で思わず足を止める。用紙に写し出された濃い色のマーブル模様は、黒一色で作られていた。

一人、無言で作業をしている彼女の名前は横田織絵よこたおりえ
大人しい子だが優しくておっとりした性格の彼女は、マスコット的存在として皆に好かれている。

けれど彼女には一つ問題があった。
強い霊感があり、幽霊が見えているという噂があることだ。

「織絵ちゃんは、黒色が好きなのかな」

織絵はそう声をかけてきた担任を見上げたあと、悲しげに目を伏せて小声で言った。

「校長先生は、この色の模様に呪われたから、死んじゃったんだよ」

「え?」

「校長先生の全身が、この模様に染まってるのを見たの。それからもずっと、この模様が校長先生から消えることがなくて…。そのまま校長先生、死んじゃった」

織絵の言葉に担任は息を呑んだ。

校長は一週間前に、車で電柱に激突する自損事故で亡くなった。高齢だったため前方不注意だろう、寧ろ子供達を巻き込む事故じゃなくてよかったと、職員達の間では同情薄く囁かれていた。

「織絵ちゃん。周りの子にその話はしちゃダメよ。みんな怖がっちゃうからね」

担任は背筋に悪寒を感じながらも、頬に無理矢理つくった笑みを浮かべて言った。

「まだ時間あるから、もっと明るい色を使って、もう一回作ってみようか」

「……」

織絵は黙ったまま小さく頷いた。
担任は少しホッとしたが、誰かに見られているような気がして、斜め後ろを振り返る。

女子生徒が、じっとこちらを見つめていた。まるで睨みつけるように。

彼女の名前は、阿墨竹子あずみたけこ
長い黒髪とほっそりとした体つきに色白。伸びた背筋から育ちの良さが感じられる。

担任は首を傾げた。そして気づく。竹子が見ている相手が自分ではないことに。
竹子の強い視線は揺らぐことなく、織絵だけに注がれていた……。


*現在執筆中です。一章完結ごとに公開していきます。宜しくお願いいたします。

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