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ハウスメイトはアフガン人①-ハウスシェアのすすめ

「アフガニスタン」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか?

タリバン?難民?貧困や暴力の国?

私は一時期、アフガン人の友人たちと一軒家をシェアして住んでいた。上記のどのイメージとも全く違い、日本の若い女の子と同じようにおしゃれやおいしい食べ物が大好きな友人たちだ。

イスラム教についてはほんの少しの知識しか持っておらず、知らず知らずのうちに彼らの尊厳を傷つけてしまうのではないか、と一緒に住むことに不安もあった。でも結論から言うと、何物にも代えがたい、忘れられない思い出となった。 

今回はそのことを書こうと思う。

シラキュースにも遅い春がやってきた頃、アメリカに来て以来、住んでいた家を出なければならなくなった。

学期はまだ1カ月以上も残っているが、その前に賃貸期限が切れてしまうのだ。私の通っていたコースは通常より授業が多く、その分大学に通う期間も長い。ということを頭に入れずに、なぜか当初から1年だけしか契約していなかった。

今の部屋はとても気に入っている。家主もとても親切な人だし、イチかバチか「数か月、延長できない?」と聞いてみた。しかし、もう次の借主が決まっているとのこと。キャンパス周辺の部屋は、毎年新しくやってくる学生たちで空いてもすぐに埋まってしまう。

さて大変だ。家探ししなきゃ。キャンパスにもスーパーにも近くて、仲良い友人たちが近所にたくさんいる今の住環境は気に入っている。引っ越しは大変だし、なるべく近い範囲で探したい。家賃も抑えたい。そもそも学生たちであっという間に埋まってしまうSyracuseの住宅事情、このタイミングで空き室なんてあるのかな。

subletで探してみたものの、なかなか希望のところがない。私はなるべく一人暮らしがしたかったのだが、ほとんどはルームメイトがいるところだったり、家賃も今よりかなり高い。(subletも非常に有効な仕組みなので、次のnoteに詳しく書こうと思います)

同時進行していた就職活動もうまくいかず、体調もすぐれず、何もかもが煮詰まったようになり気持ちがふさいでいたある日のこと。

アフガン人の友人、BeheshtaとSadafの2人とごはんを食べに行くことになった。フルブライト生の会合で知り合った2人は、ともにLaw Schoolの学生だ。いつも朗らかで聡明で、そしてとても美しい2人。我が家からはほんの数分ほどの距離にある一軒家をもう1人のアフガン人と一緒にシェアして住んでいて、私とはご近所さんでもある。

食事をしながら、ふと思いついて言ってみた。

「私、今の部屋を出なきゃいけないんだ。どこかいい空き部屋知らない?」

すると、2人が同時に言った。

「うちに来ればいいじゃない!」

聞けば、一足早く卒業したSadafが職を見つけたため、NYCに引っ越すという。Sadafの部屋が空くので、そこに来ればいいというのだ。

確かに、大学までの距離もほぼ変わらず、家賃も今より大幅に下がる。何より、人柄のよいBeheshtaと一緒に住むのはとても楽しそうだ。

そこである日、下見と称して彼女たちの家にお邪魔した。

彼女たちの家は、とても大きな一軒家だ。玄関前にはポーチがつき、目の前には大きな公園があり、周りにも同じような家が並んでいるがとても静かだ。


私たちの家のリビング。テーブルの上にはナッツやドライフルーツ、クッキーなどのお菓子がいつも置いてあった

ドアを開けると、目の前にはすぐにソファやテレビがあるリビング。BeheshtaやSadafが選んだというカーテンやカーペットは落ち着いた色合いで、センスの良さが醸し出されている。花が生けられた花瓶や、アフガニスタンのスナックが入ったお皿がさりげなく置かれ、まるでアフガニスタンにある誰かの家に遊びに来たような気分になる(ほんとのアフガンのおうちには行ったことないけど)。

なんだか暖かく迎え入れてくれるような雰囲気だ。「ここに住みたい!」と思った。

一緒に住むとなると、リビング、キッチン、バスルームはすべて彼女たちと共有だ。ベッドルームだけが私専用の空間となる。

Beheshtaはいつも必ずヒジャブをきちんとかぶっている敬虔なイスラム教徒。もう1人のハウスメイト、ZuhalもSyracuse Universityで情報学を学ぶアフガン出身の学生だ。

一方で、私はイスラム教の教えや生活習慣などに関してはほぼほぼ知らず、イスラム教徒と一緒に住むのももちろん初めて。

私は普段の食事はほぼ自炊で、ほぼ日本食。食材も肉、魚などなんでも食べるし、調理にはみりんも使う。

アルコールは飲まないが、宗教とは縁遠い生活を送る私。知らず知らずのうちに、彼女たちの信心を冒とくするようなことはしたくない!私の何気ない一言や習慣で彼女たちを傷つけるようなことは絶対に避けたい!

彼女たちの思想信条・生活習慣はもちろん尊重する。でももし、彼女たちが私の習慣を忌避するようであれば、一緒に住むのは難しいかも。

そこで引っ越す前に、念のために気になることをいくつか尋ねてみた。

 「あなたたちのキッチンで、牛肉や鶏肉を調理することがあるかもしれない。(もちろん、調理器具や食器は別。豚肉は使わないことにした)。魚のだしを使った味噌汁とかも作るし、みりんも使うことがある」

「冷蔵庫(これも共有)の中に、これらのものがあっても平気?」

「あなたたちの信仰はリスペクトしているけど、知らず知らず傷つけてしまうことがあるかもしれない。何か気になることがあれば言ってね」

すかさず、彼女たちの返事。

 「あなたのやりたいことを、何でもやって!私たちは皆大人、お互いのことを尊重しあって暮らすことができるわ!」 

なんて大人な回答!オープンマインドで優しくて、感謝してる。

一気に不安が溶け、新生活への期待が膨らんだ。

 ②に続く。


 



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