マガジンのカバー画像

バルゼレッタ barzelletta

29
お題の“バルゼレッタ”とは伊語で【笑い話】と言う意味。2004年からHPで連載した話をまとめている進行形のマガジン
運営しているクリエイター

記事一覧

バルゼレッタ barzelletta vol.29

バルゼレッタ barzelletta vol.29

シチリア料理

郊外にある新しい滞在先の農家民宿に無事

着いてホッと一息。

しかし、私は一体どこに来たんだろう、

初めは位置が全くわからなかった。

しかも予想通り

夕食が終わると夫婦は街の家に帰り、

私だけ一人、ぽつんとその民宿に取り残されるのには閉口した。

玄関の外にある頑丈そうな鉄格子は牢屋のよう。

鍵を閉めて夫婦が車で去って行った後は

それはそれは恐かった。

初日の夜はあ

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.28

バルゼレッタ barzelletta vol.28

シチリアのはじまり

長い電車とバスを乗り継いで

さらに内陸に向かい車で数十分。

やっと目的地の農家民宿に着いた。

車から降りると

アンジェラはちょっと待ってと

家には入らず、

「こっちにいらっしゃい」と促され、

隣といってもずいぶん離れたお隣さんの家に連れて行かれた。

おじいさんとおばあさんが2人だけで住んでいる風で、

テーブルに置いてあるものや調度品から

そのつつましい暮ら

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.27

バルゼレッタ barzelletta vol.27

シチリアの人

目的地シチリア島の南のはずれ

シャッカという名の街の中心部にようやくついた。

バス停そばで迎えを待っていると

すぐ農家民宿の夫婦が現れた。

日本人は珍しいんだろう。

「すぐわかったわ」と

奥さんのアンジェラ。

夫のエンツォともども、2人とも独特な顔つきだ。

肌の色が茶褐色。

目の色もイタリア本島の人とまったく違う。

茶色の目に茶褐色の肌。

アラブ系なのかとぼん

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.26

バルゼレッタ barzelletta vol.26

アフリカの風と埃

シニョーラにどのように言ったか全く覚えていない。

それはこの農家民宿を出て

シチリア島に行くということを。

10月も終わりの頃だったと思う。

しかし

出発の日のことだけはよく覚えてる。

そしてついにその日はやってきた。

目が覚めるとすぐは理解できなかったが

数分もすると

ああ、今日は出発の日なんだ。

ここを発つ日だ!

シニョーラと共に寝た部屋の天井を見なが

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.25

バルゼレッタ barzelletta vol.25

プーリアの終焉

民宿の周りもすっかり秋の深まったある日。

シニョーラは私にきのこを取りに行こうという。
二人で5分もかからない裏庭にいくと

茶色の見たことのないキノコがわっさわっさと生えていた。

日本のなめこの二回り大きく丈の長い。
見るからにおいしそうなキノコだった。

夏ふんだんにあったトマトやズッキーニはすっかり終わり
食材も秋深しモードのプーリア。

そのとったキノコは二人で丁寧に

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.24

バルゼレッタ barzelletta vol.24

長い長~い一日


おいしかったフォカッチャの余韻に浸りながら車で帰宅。
すぐ昼ごはんを食べ早速ワインの仕込みが始まる。

ワインってどうやってつくるんだろう?

見た事も聞いたことも無いので全く見当がつかない。
木の桶にブドウを入れて足で踏みつぶすのか?

そんなわけないよね。

息子ドメニコと使用人のアルバニア人(名前が思い出せない。どうしても、思い出せない)
ともう一人近所のおばさんジョバ

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.23

バルゼレッタ barzelletta vol.23

~ 長い一日 ~

滞在しはじめて数日後家族だけでの昼ごはんでのことだった。

シニョーラもドメニコモ、
アルバニア人の使用人も、皆せわしなく働いており、殺気立っている。

なぜ?
変だ!

何がなんだかわからず、皆があ~だこ~だと話す内容もイマイチ。
イタリア語もまだまだの頃であった。

皆が眉間にしわを寄せながら話す中、

次男ドメニコがぱっと表情を変えて笑顔で私に

「レイコ、明日はブドウ

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.22

バルゼレッタ barzelletta vol.22

イタリア家庭料理

~オリーブへの道~

翌日気持ちのいい朝を迎え3階から下の台所に行くと

もう朝食の準備が始まっていた。
シニョーラは大きな巨大エスプレッソポットでコーヒーを沸かしている。

ん~~いい香り。

濃厚なエスプレッソは朝に飲むカプチーノやカフェラッテには必須だ。

牛乳を鍋に入れて温めて、とシニョーラに言われ
パックを見てみるとロングライフミルクとありぎょっとする。

この辺りは

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.21

バルゼレッタ barzelletta vol.21

「植物に導かれて」

- 幸運のはじまり -

ひと通り出された料理に舌鼓を打ちながらも
先ほどの厨房でのシニョーラの料理を思い出してみる。

本当に信じられない事だが

あれだけの量のオリーブオイルを使って料理したにもかかわらず
なぜこんなにもあっさりと油臭さもなくスープにオイル分が浮くこともなく、

素材の味がそのまま

そして尚且つ、旨みが引き出ているんだろう。

素材がひとつにマッチし調和

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.20

バルゼレッタ barzelletta vol.20

「植物に導かれて」

- カルチャーショック -

晴れて料理修行先(と言っても有料の)が決まりご馳走になったうさぎの煮込みの昼食も大満足。
夕ご飯の支度までしばらくあるので部屋で休ませてもらう事になった。

この日はお客としてゲストルームをあてがわれる。素朴だがなかなか素敵な部屋だ。

農家民宿といっても3階建てのお屋敷なのだ。

そのゲストルームは最上階の一番いいお部屋。出窓を開けると一面に畑

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.19

バルゼレッタ barzelletta vol.19

「植物に導かれて」

 - 55人目の日本人 -

一時間ほど待っただろうか。

サングラスをかけたいかにも南イタリアのおっかさん風シニョーラ(奥さん)が現れた。

背は150cmにも満たないが横幅はかなりアル・・・・
次男のドメニコ、三男のアントニオを生んだとは思えないような三枚目系のおばちゃんだ。

慣れた手つきでサングラスを取ると

あんただれ?

というような顔で私を見る。
ニコリともしな

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.18

バルゼレッタ barzelletta vol.18

「植物に導かれて」

- 感動のスモモ -

現れた青年は私を見つけるとサングラスをはずし笑顔で握手を求めてくる。白い歯が印象的なハンサムボーイだ!

『ここにいたかイタリア美男子は!』と密かに思う私。

なにせ、イタリアに来てからいろいろなイタリア人に会ったが、
思い返すとイイ男系はさっぱりだったように思う。

ヨーロッパ人 = 背が高く、あっさり系の美男子
という勝手な想像をしていた私ですが、

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.17

バルゼレッタ barzelletta vol.17

「南へ!」

- 意外な展開 -

ボロ電車でやっと着いたアルベロベッロ。
南イタリアのかかとにあるプーリア州の中ほどの街だ。

この街は南イタリアでも有数の観光地として世界中から人がやってくる。
とんがり帽子のかわら屋根が特徴のかわいらしい家・トゥルロが
群集しているところである。

まるでおとぎの国のような町並みだ。

数年前に初めて観光で訪れ、
そこにただ一人の日本人女性がいる事を知る。

もっとみる
バルゼレッタ barzelletta vol.16

バルゼレッタ barzelletta vol.16

「南へ!」

- ボロ電車の車窓から…… -

いよいよ南へ旅発つ日がきた。
列車に乗って約6時間以上の長旅はイタリアに来てから初めての経験。

イタリアに修行で来る前に、
観光で南イタリアを周遊したことがあり、イタリアのかかと、プーリア州にあるアルベロベッロという小さな街に日本人が1人住んでいるのを思い出したのだ。

世界遺産の大観光地のお土産屋のご主人と結婚してる人だった。

とにかくその人に

もっとみる