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ユラユラユーフォリア

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「キリちゃん」と「私」にまつわる連作ショートショートです。
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記事一覧

抵抗

 キリちゃんの背が毎日一センチずつ縮んでいるらしい。キリちゃんの身長はだいたい一七〇セン…

ヤヲラ
4年前
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その時を待ちわびて

 耳が巨大化しはじめてかれこれ数週間が経つ。  両耳が日毎にに膨れ上がっていく恐ろしさっ…

ヤヲラ
4年前
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約束

 どうやら寝ている間に冬に取り残されてしまったらしい。  ちょっとうたたねをしていたくら…

ヤヲラ
4年前
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Find me

 このところ毎日顔が変わる。  例えば日曜日の私は小学六年生の頃の担任にそっくりだったし…

ヤヲラ
4年前
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「記念日に花束って憧れるな」

 脳天にホームランボールがヒットしてからというもの記憶力の低下が著しい。他人の顔と名前は…

ヤヲラ
4年前
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悪趣味

 気に入っていたアイスが生産終了になってしまった。半日ほどスーパーとコンビニをはしごして…

ヤヲラ
4年前
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目元のあたりがよく似てた

バイトに向かうべく玄関のドアを開けると、そこにはサンタクロースの幽霊が立っていた。聞くところによるとこの季節はずれのサンタクロース、二十年近く前に死んでしまったのだという。そのせいで君にプレゼントを渡しそびれてしまったんだと申し訳なさそうに眉を下げた彼の顔にどことない既視感を覚えながら、はてさて子どもの頃私は一体何を欲しがっていたのだっけと記憶をまさぐっていると、大きな手が白い袋の中から黒々と光る拳銃を取り出した。そうして私が驚いているうちにメリークリスマスとにこやかに告げて

目玉焼きに粉チーズかける君はチェーホフなんて読まなかった

 キリちゃんが七人に分裂してしまった。混乱を避けるため、彼女たちは週に一日にずつ交代で外…

ヤヲラ
4年前
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To be continued!

キリちゃんはいつだって私のピンチに駆けつけてくれる。例えば私は階段から足を滑らせた後にや…

ヤヲラ
4年前
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ジンクス

「キリちゃん」に贈り物をすると幸せが訪れるらしい。そんな噂が広がってしばらく経つ。実際に…

ヤヲラ
4年前
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選ぶということ

キリちゃんの恋人の意識が戻らない。冬に流行ったひどいインフルエンザに罹ったのだ。その人は…

ヤヲラ
4年前
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The best place to hide a tree

不吉めいた亀裂音とともに物陰から突如現れたおぞましい亡霊にたまげたことで私の心臓は勢いよ…

ヤヲラ
4年前
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白い棺

その巨大な箱の中に躊躇いなく身体を滑り込ませる時、キリちゃんはたしかに「おやすみ」と言っ…

ヤヲラ
4年前
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形見

ある朝起きた大爆発に不運にも巻き込まれたキリちゃんは木っ端微塵に吹き飛んでしまってあとには右腕が一本残ったきりだった。そういうわけで私は自分の右腕を切り落とし、現場から持ち去った彼女のそれとすげ替える。初めの頃は腕の長さが違うのでバランスが上手くとれず、歩くだけでも難儀した。 それにキリちゃんの右手はとても不器用だったので私は以前より化粧も絵も下手になってしまった。砂糖と塩を間違えるなんてベタなことをしょっちゅうしでかしてしまう手に、ハンドクリームを塗り込んだりキリちゃんが好