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農民社長のための経営入門 3

拠点を絞ってフリースケジュール

私は現在、クッキーの製造所である工房、配送所、店舗と3つの拠点を行き来して仕事をしている。もしも私が3人いれば、ひとりは朝から工房で製造状況を確認しながら事務のパートさんと資材やお金のことで細かい打ち合わせ、ひとりは配送所で受注処理や熨斗のし作成、梱包といった作業を確認して調整。で、ひとりは店番をしながら接客や来客に対応、そしてもうひとりが今後の仕事の展開や現状を分析。ってあれ?ひとり増えてる?

まあ、とにかく、何が言いたいかと言うと私はひとりしかいねえ!ってことなんですよ。なのに拠点が3つもある。何度も言うようだけど、私はひとりしかいない。それを私自身が多分あんまり分かってなかったんだと思う。ちょっと拠点が多すぎなんです。大変なんです。それでこないだ慌て込んで電車に乗り遅れまいと(拠点間の移動は電車or歩き)走ったらコケて伊勢市駅のコンクリート階段に激突して血まみれになり膝を3針縫った。情けねえ。そう、私がひとりというだけでなく、私はもういい年なんである。

それで、配送所をなくすそうと今考えている。今は製造所で作ったサトナカを車で配送所に運び、そこからネット注文の人に発送をしている。うちはフリースケジュールをしていると言ったけれど、実はフリースケジュールに対応しているのは製造している工房だけで、配送所はガッチガチのシフト制。例えば、今日注文して7日後に商品が発送されても悪いレビューが書かれない、ってことならば、まあいい。しかしスピード発送がネット通販の必須事項となっている今、たかだかクッキーの発送に1週間もかかっていたら必ず「配送が遅い」と書かれてしまう。

人気で予約待ちという商品なら許されるかもだけど、そんなもんでもないから「今日は出勤者が少なくて商品が送れません」ってわけにいかない。だからシフト制なんだけど、本当にシフト作るのって大変だ。注文が多そうなときに人数を配置したけど思ったより注文が来なかったとか、反対に少ないと思ってたらめちゃ注文が来て人が足りないとか、もうそんなことばっかりでへとへとになる。

Aさんが受注処理している間、熨斗を作るBさんには商品のラッピングしてもらって、そのうちにCさんが出勤してくるからCさんがすぐ作業できるよう受注処理の終わったAさんに組みをやってもらってBさんには熨斗だしてもらって、短時間勤務のDさんには熨斗を切ってもらって…

とか、全員に指示を出して細かく動けるようにするのがもうホントに大変。それだけではなくて、配送所は狭いので個人面談する場所もない。配送所にいるのはひとりだけ!って時を狙って面談するのだがそうそうそんなタイミングもなく、数人面談するのに1ヶ月かかる。また、狭いので休憩を取る場所もない。必然的に場所を共有することになるから、昼ご飯のときは数人でワイワイしゃべりながらになる。いいようにも思うが実際のところ、いつも同じ人が喋っていたりするから結果的に個人の時間を大事にできていない。

私が配送所を廃止しようと思った理由は家賃や人件費といった資金面も大きいのだけど、同時にフリースケジュールができず、工房との環境に格差がありすぎる、というのがある。また、この格差を放置しておけば工房と配送所の間に同じパートでありながら分断が生まれてしまうのではという懸念もある。

最初は工房に配送所を併設しようと思っていたのだけど、今は配送そのものを外注にしようと考えている。もし、年中そこそこ均一に忙しいならパートさんに配送のプロフェッショナルになってもらうのもいいだろう。けれど、うちが忙しいのは1年のうち12月~5月。残り半年は閑散期(ヒマな時期)だ。一方で忙しい時は商品が足りずに売り止めをすることがある。年に2回くらい売り止めになる。現に去年の12月も商品がなくなって苦渋の売り止めとなった。

それを考えたとき、自分たちは製造に注力をし、配送は外部に任せたほうがバランスがいいのでは?パートさんが配送のプロフェッショナルになったとしても、その力が発揮されるのは繁忙期はんぼうきだけ。ヒマなとき製造に入っても、製造自体もヒマな時期になるのだからやはりバランスがよくない。だったら、繁忙期にもっとしっかり売って、利益を確保し、全員フリースケジュールで働いてもらったほうが争いも起きず、きちんとそれぞれの力が発揮されるのではないか。

そんなこんなで、現在3社から配送外注の見積もりを取っている。工房には配送組が転入し、人が増えるから作業場所など工房の拡張をしなくてはいけない。お金もなく、補助金の獲得も難しいので、順を追って徐々に取り組んでいこうと思っている。まずは実家の蔵を改築、資材と商品在庫の収納場所にする予定だ。

ここまでは私の今後の展望だけれど、配送所のパートさんはそもそも配送業務をする、ということで面接に来てくれた人たち。いきなり製造と言われても困ってしまうだろう。変化を厭わずむしろ歓迎していくのはうちの社風だけれど、ここでしっかり面談を行ってパートさんたちと私の考えや希望など話し合う必要が出てくる。

また、必然的に製造数が増えるので沢山売らなくてはならない。忙しい時はいいけど、ヒマな時に売るのは大変だ。クッキーを夏に食べたい人とかあんまりいないので、今年はなにかがんばって考えないとなぁ。けれど、10人体制になってフリースケジュールになればまたどうなるか楽しみになってくる。さらにはしっかりとしたルール作りも必要になってくるから、さあ、まだまだ完成しないフリースケジュール、どこまで行けるかな。

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