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荒波になんか放り込んでみたくなる人

かつては恵方巻きの是非を、私も論じていました。twitter上でも、突如湧いた新イベントに賛否両論、そもそもの出自は花街だとか、関西のものなのにとか、かぶりつくのは下品だとか。それぞれ言い分が展開されます。

しかし、そんな言い分、誰も耳を貸したりしませんよ。

スーパー、百貨店、コンビニに寿司屋。どこも正月早々、今年の恵方とともにオリジナル太巻き寿司を発表。人々は正月の余韻に浸ることもなく、早速翌月のイベントであるかぶりつきの太巻きの種類を選びに入ります。

恵方巻き業界は日本海の荒波と同じ。いくら、私のような異論者が荒波に向かって恵方巻きの是非を叫んでも、大きな波しぶきの前では岩にへばりついたフジツボのくしゃみと同じ。虚しく波の花となって消えるばかり。

「うえ〜い!恵方巻きじゃー!無言で食べるのじゃー!」と、みんなのように買い求め、浮かれる気にならないのは、なぜでしょう。それは分かっているのです。私は、そういうのを外側から見ていたいタイプ。わーー!ってなってる人を観察したい側の人間だからです。それは、私がなにかを表現したいと思ってる人間だからかも知れません。単に天の邪鬼で、少数派に属して優越感に浸りたい、というだけかも。

そんなことで、みんなが盛り上がる一般のイベントというのがとにかく苦手。母の日も、クリスマスも、バレンタインも。なるべく高速で通り過ぎて欲しい。世間がどっぷりイベント風味になってくると「うわー、きたなー、きたなー」って構えちゃいます、ラジオで母の日に「お母さんの感動的な思い出メール」が紹介されると大体ラジオに向かって毒づいていた私。バレンタインのチョコ売り場に並ぶ人を冷たく横目で見ていた私。

でも、大人になって、ちょっと改まってきました。波に向かって叫ぶのはヤメにして、波を見るようになって。そうしたら、波の中になにか放り込みたくなってきました。

例えば、ライブに行っても、みんなと一緒に盛り上がれない人っていませんか?若い頃、コンサートに行って、一緒に行った友だちが

「キャー!ボウイーーーー!!!」

と叫んだ時、(わあ、この子こんな風に叫ぶんだー意外ー...)って、横で思った私は、当然舞台に集中できる訳もなく、前を行き来する警備員を見たり、横で跳ねるお客さんを見たり。コンサートって、こんなんなんだ!という感想。見ろよ!ボウイを!

でもきっといるんですよ。私みたいなのが。中に入って行かずに外から見るのが好きって人が。それで、そういう人は、そのうち、そこに何か放り込みたくなってくるんじゃないでしょうか。こういうサービスしたらどうかな、こんなもの提供したら興味示すんじゃないかな。そして、そんな風に考え始める人は商売向きのはずなんです。

私の祖父は剥製師だったのですが、よい剥製を作るコツとは、

「生きている姿をとにかく観察すること」

だと言っていました。そうすれば、生きているように作ることができる。けど、本物を見たことない人は本物のような剥製を作ることができない。商売も同じで、消費する人や消費の動向を観察することで、先の消費の姿が見えて来るのではと思います。

その消費者の中からどういったタイプの人に選んでもらいたいか。大多数の人なのか、あるいはニッチなサービスなのか。でも、一番大事なのは、自分がワクワクするかです。自分のワクワクがどういった人たちと共有されるか。そこが商売の面白さだと思います。自分の楽しみを第一に考えないと結局消費者の反応ばかり気になって、順番が逆になり、消費者の顔色をうかがって商売をするようになってしいます。

特に、商品の売れ行きが芳しくなくなってきたり、商売が暇になってくるとそうなりがちです。でも、消費者の顔色を伺って、こういうサービスを求めているんじゃないか、となると、かなり後手になって、大抵はずしちゃいます。サービスを求めていることが顕在化してきたときは、もう既に遅いですし、本当に求めているものって、潜在的である場合が多い。消費者は語ってくれません。読みが必要です。

でも、売れなくなる時期って、商売をしていると定期的に訪れます。これが実は大変大事で、やっぱり売れてるときって、なーんにも気付かないんです。それで、徐々に売れなくなってくるとアレ?どうしたん?ってなってきて、あわあわしてきて、考え込んじゃって。まあ、私もよく陥るスパイラルです。でも、ホントはそう言うときこそ見直しの好機ですね。スピリチュアル的に言えば「神様がもたらしてくれた“Thinking time”」とでも言いましょうか。

そうだ、恵方巻きの話をしていたんだった。それで、恵方巻きなんですが、たった1日で終ってしまうのはもったいない。私も太巻き寿司は好きなんです。色々選べて普通に嬉しいんです。でも、恵方巻きイベントは苦手。なので、普通に太巻き週間を作ってほしいですね。節分なんて言うのは、多分みんなどうでもよくて、太巻きが食べたいだけなんですよ。来年からはぜひ、そうしていただいてですね。それに、その方が廃棄が少ないでしょ。だれか提唱してくれないでしょうか。でも、そうすると、やっぱり売れないですね。太巻き週間じゃ絶対に売れない。1年にたった1日の節分の特別な太巻きだから売れる。荒波はまだまだ奥が深いようです。

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