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6人の工房で実現させたフリースケジュール -1-

その日、私は肘折温泉のひなびた旅館に泊まっていた。積雪は3メートル。新庄の駅からバスで真っ白な世界を1時間、山に向かって走ると肘折温泉に到着する。温泉は鉄分を含んで芯から温まるし、宿泊先の三春屋はご飯がめちゃおいしい。1ヶ月の旅程のちょうど中ほどにきたところだった。

肘折温泉三春屋の風呂 めちゃ熱い

地下にある温泉から上がった私は「強い温泉に入った後は30分程度休む」という温泉の作法に従い、浴衣姿で布団の上をゴロゴロと転がりながらポッドキャストを聞いていた。フリ-スケジュールを実践しているパプアニューギニア海産の社長、武藤北斗さんのラジオだ。

さて、ここでフリースケジュールとはなんぞや。と言う人のために説明をしよう。


多くの人はなにかしら労働をしていると思う。労働は行く時間が決まっているし行く日も決まっている。なぜなら雇用保険の申請書類に書かなくてはいけないし、契約書にも勤務の曜日や時間をかく欄がちゃんとある。行く日も時間も決めずに雇用するなんて、雇われるほうが不安になるからちゃんと決めるのが正しい社会である。

しかし、このフリースケジュールは行く日や時間を働く側が決められるシステムだ。もちろん、雇用保険や契約書は一応はあるけれど、縛られるものではない。例えば、雨続きの梅雨の時期、パーーッと晴れた日があったら、家じゅうのものを朝から洗濯したくなるではないか。服もシーツも洗濯してパリッと乾かせばそれはもう豊かな生活だ。しかし(洗濯したいので休みます)と言って休めないのが一般社会のルールだ。そして翌日はまた雨で洗濯したものを持ってコインランドリーの乾燥機に並ばなくてはならない。

こんな時、会社になんの連絡もせずに休むことができる。晴れた日、物干しざおいっぱいに洗濯ものを干して取り込んで畳むまでできる。これがフリースケジュールだ。

また、こんなこともあるだろう。

高齢の両親がいたとしよう、急に転んでしまった。病院には付き添いが必要で午前中は一緒に病院に行かねばならない。こんなとき職場に電話をして今日の午前中休ませてください、と言うのが正しい社会のルールだ。電話先の上司には「ええ?そうか、仕方ないけど、なるべく早くきてもらえるかな」と言われるし、午後から行くと(今日忙しかったのに…)と言う顔の同僚に迎えられバツが悪い。(もう…こんな忙しい時に転ぶなんて…)と両親に対する不満が生まれるかも知れない。

しかし、そんなときでも会社にまったく何も言わず両親に付き添って病院へ行き、午後からも涼しい顔をして出社できる。周りもなんにも気にしない。それがフリースケジュール、というシステムなんである。


武藤さんのことは最初noteでたまたま知って、そのあとすぐえびを通販で購入した。武藤さんが書いた本も売っていたので、これも一緒に買った。

本を読んだとき(うちでは無理だな)と、すぐに思った。単細胞の私は影響されやすく(うわー、これすごいわー)ってなったら結構すぐ真似する。本の中に書いてあることはどれかは真似できそうな気がしたけど、だからと言ってどれかを真似したわけでもなかった。なぜならかなり準備が必要なことに思えたからだ。

そこから何年か経って、武藤さんがラジオを始めたというので布団の上でゴロゴロしながら聞いた。前の分の放送もあったのでまとめて10個とか20個くらい聞いたかも知れない。聞いているうちにだんだん疑問が湧いてきた(もしこのフリースケジュールをうちでやるとしたら?誰も来ない日は製造ができないしどうすればいいのだろう)これは誰もが最初に持つ疑問だと思う。私は怠け者だから、働かなくて済むなら働きたくないし、サボりたい。だからフリースケジュールなんかにしたら来なくなる人がほとんどでは、とか考えた。

だが待てよ?

みんななんでうちに来てるんだ?稼ぎたいからだろ?そりゃ今日は体調がイマイチとか、子供が急に風邪ひいたとかあるだろうけど、そんなに毎日休むか?

そんな人がたまたま今日二人いた、とかはあるだろうけど、全員休む日が何日もあるとか、ないだろ。

それに…

スタッフから「今日急に子供が熱を出したので休みます」って言われて「えー、それは困るな。なんとか出てきてよ」とか「誰か代わりに見てもらえる人探して」とか、言ったことない。いつも「了解~お大事に~」って言うだけなんだ。それで、その時出勤してきてる人数でやる。だってそうするしかないから。あれ?ということはもしかして、この「知らせる」&「了承する」という行為がなくなるだけなんじゃねーの?

そもそも、そういうのって電話するほうも億劫だし、実は「了解~」って言うほうもどうせ「了解~」って言うだけなんで、いうなれば儀式みたいなものだ。

その儀式をなくせば…あれ?もしかしてうちもできるのか?フリースケジュール。

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