会話というのは自分の考えや今までの経験から得た知識など、少なからず「自ら」反映されるものです。ところが、稀に自分のことを語らない人。というのが存在します。それが「人の話ばかりする人」です。今まで数人。そんな人がお客さんでいました。

自分の考えや意見がなければ話さなければいいのに、「人の話ばかりする人」は饒舌です。また、人の話を横から取り上げて自分の話にする、ということもよくやります。あ、もちろん自分の話じゃなくてそれも「人の話」なんですが。

こういう人の話は大体次のような話題になります。

１、友だちが有名人と知り合い

ポイントは、自分自身が知り合いなのではなく、自分の友だち、あるいは親戚、あるいは職場の人、というところです。例えば、次のような感じです。

・妻夫木聡の妹と従姉妹が同級生
・羽生結弦の家の近所のクリーニング店で友だちのお母さんが働いていた

もちろん、ここで言う有名人とは人が聞いてすぐ分かるような人のことで、石野真子とか板東英二など、若干旬を過ぎた人の場合もあります。よくよく聞くと、別に知り合いちゃうやん。という場合がほとんどです。

２、どこかの会社社長と友だち

人が聞いて分かるようなブランド会社であることがまず大切です。例えば、

・レクサスの部品を作っている会社の社長
・Yahooにいて独立した人

などです。友だちであることを証明するかのように、その場でいきなり電話をかけたりすることもあります。相手は迷惑がっていることがほとんどです。

３、知り合いの成功話をする

偉業を成し遂げた知人の自慢をよくします。例えば

・後輩が甲子園へ行った
・妹の旦那がホールインワン賞を取った

それって偉業なん？って感じですが、本人は偉業と信じて疑わず、延々とそれについて語ります。自分のことではないのに熱く語れることが不思議でなりません。

４、自分がいかに人から頼られる存在であるかを強調する

人の話ばかりする人はちゃんとそこに自分も投影します。つまり、自分は周囲から頼りにされる存在であると言うことが言いたいわけです。今まで挙げたような（間接的に）有名人とか社長とかから

・よく相談される
・何かあるとすぐに呼ばれる

そんな自分はすごい。と言うことをアピールします。また、こちらが頼んでないのに「紹介しようか？」と言ってセッティングしてくれることもよくあります。いかに顔が利くかを知らしめたいからと思われます。この場合、本当に紹介してくれて、相手の人は普通にいい人のことも多いです。

「人の話ばかりする人」というのは、自分で自分を語らず、周囲を語ることによって自分を際立たせようと言う作戦なのかも知れません。確かに、そういう技法はアリでしょう。しかし、それは自分ですることではなく、人がしてくれた場合に効果が出るのではないでしょうか。

Aさんがいるとして、Aさんの奥さんは美容師で別居中、職場の部下はAさんを怖がっている、よく行くスナックにはツケも多いとか。そんなを人から聞かされると、Aさんという人をぼんやりと思い描くことができます。

だけど、Aさんの奥さんの美容院には野宮真貴のいとこがお客さんで来るとか、職場の部下が箱根マラソンを走ったとか、いつも行くスナックにサイバーエージェントから独立したIT社長がいて飲み友達とか、そんな話をAさんの口からいくら聞かされても、Aさんがどういう人なのかさっぱり分かりません。

だけど、本人は懸命にそういった話を延々とすることで、

いかに自分はすごい人間か

ということを力説するのです。これはですね、本当にエネルギーを吸われます。こういう「人の話ばかりする人」は最初は分かりません。誰だって、いきなり最初から自分の話だけをしないものです。最初は接点のあるような話題から入ります。共通の知り合いとか、場所とか、趣味の話とか、他人を媒介する場合も多いのです。だけど、だんだん分かってきます。しばらく話してもちっとも自分のことを話さない。

あ、この人それか…

ってなります。けど、そういう人って、ある意味話術が巧みなので、割に周囲に人が集まったりするんです。もちろん、話題の有名人やネームバリューのある会社社長、成功話など、華やかなトピックですから、身を乗り出して聞く人も多いわけです。でも、

それ全部人の話ですけど…

そんな「人の話しかしない人」も、ごくたまに自分のことを話ます。それは大体

過去の栄光話

です。過去にいかに評価されたか。これが多い。もしかして、あなたの時間ってそこで止まってる？って思うこともあります。絶頂期以降を下ってきた（と、本人は思っている）ため、自分以外の人で自分を埋めようとしているのでしょうか。分かりません。ただ大きな黒い穴が喋っているように思えてならない。自分もそこに飲み込まれそうになります。危ない危ない。近づかないほうが無難です。どこかの飲み屋で、今日も巨大なブラックホールが大きな口を開けているかも知れません。