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知らなかったこと

世の中は無農薬ブーム。だから兼業農家のような人たちはみんな無農薬でお米を作っていると思っていました。もちろんそれは私の勝手な思い込みだったのですが。

私の町は田舎で、多くの家が田んぼを持っています。しかし、その田んぼを自分で作る人はどんどん減っています。それを町内で大きな機械、田植機、耕うん機、コンバイン、乾燥機、籾摺り機などを持っている2,3人が引き受けてやっています。町なかに近い田んぼの多くは住宅地に変貌していますが、こちらはまだそんなことはありません。まあ、中途半端な田舎過ぎて住みたがる人も少ないみたい、というのが幸いしています。

ところで、私が父から引き継いだ稲作を始めて3年ですが、無農薬、ましてや無肥料で米を作っている人は皆無です。田んぼの所有者は100人以上いますが、私以外無農薬で作っているというのを聞いたことがありません。

それくらい、普通に農薬が使われているのですね。だから、初心者で無農薬で米を作ろうとすると、間違いなく周囲からは変わり者扱いされるか、夢見る素人だと思われます。マイノリティーです。また、煙たがる人も出てきます。農薬を使っていないと、病気が発生した時、「あんたが薬を撒かないから病気が発生した」と、言われたり、「あんたの田んぼから虫がやってきた」と、言われます。私は幸いまだ言われたことありませんが、そんな時は「そうか、虫に名前が書いてあるんなら、こっちに持ってきてくれ」と、言えるくらいの面の皮の厚さも必要になります。いっそのこと最初から変わり者で通したほうが楽だったりもします。

田んぼは畔を隔てたらもう隣の田んぼで。しかも、水を共同で使います。また、イノシシよけの電気柵は背が低いです。もし、自分ちが草ボウボウで、電気柵にあたったところから漏電してイノシシが入ったとします。自分ちならまだしも、隣の田んぼに入るかも知れないのです。そう考えると草刈りも怠るわけにはいきません。お米を作るということはよくも悪くも「日本人的」な共同体なんです。
都会で人付き合いに疲弊した人が田舎に移り住んでのんびりお米でも作ろう、などと思っているとしたら要注意。田んぼは農産物のなかでも高いコミュニケーション力を要するのです

自分の田んぼは好きな作り方をしても自由。でも、いくら変わり者でも、最低限守らなくてはいけないこと、守ったほうがいいこと、というのがあるのだと知りました。

なんだか不自由に聞こえますが、そうでもありません。特に、力も機械もない女の場合は周囲の助けが必要です。水栓バルブが固い時は隣の田んぼの人が開けてくれたり、畦草をついでに刈っておいてくれたり。本当にありがたいのです。ああ、田んぼがこんな風に助け合いになっていてヨカッタ。と思えます。これは畑とはまた違う世界で、案外知られていないのでは、と思います。



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