ももちゃんが愛されるワケ
今、勤めている病院にはももちゃん(仮)という、名物ヘルパーさんがいる。
はじめて会った時は、魔女の宅急便に出てくるおソノさんにそっくりだな〜と思った。
髪型はショートカット
たまに刈り上げている時もあるけど、すぐ伸びてくるらしい。
身長は170cm近く。
体重は、大変失礼だけど、めちゃくちゃあるだろう。
ユニフォームの一番大きなサイズをピチピチにしてしまうほど。
ゆえに、なのか、もともとそういう体質なのかすごく力持ち。
いつも、大量のタオルと洗濯物を抱えて8時くらいに病棟に現れる。
本来、患者さんの移動は複数で行うのが理想だし、欧米では一人で行ってはいけないくらいなのだけど、彼女は患者さんをお布団みたいにひょいと持ち上げてしまう。
持ち上げられる患者さんも、いつもキョトンだ。
何が起こったかわからないという表情をしている。
もし、ももちゃんが転倒しそうになったら、手を差し伸べるかどころか逃げると思う。じゃないと私が危ない。
そんな彼女。
勤続20年近く、すべてのスタッフが顔見知り。
正社員だけでなく、パートさん、派遣社員も顔と名前も把握している。
一応、外来所属なのだが、勤続年数が長いためほぼすべての部署で働いたことがあり、ゆえにピンチヒッターとしてスタッフの足りない部署に毎日のようにローテーションしている。
今日はどこなの?と聞くと
今日はオペ室と外来!
「病棟ではこっそりひっそり生きていく」がモットーの私のこともなぜか覚えていてくれて、いつも夜勤明けに声をかけてくれる。
今日も夜勤明けじゃないみたいに元気ね〜!
帰ったらまた他の仕事いくんでしょ?
本当に元気の塊みたいな人で、会って話すだけで元気になる。
もちろん、ももちゃんは私だけじゃなく他のスタッフにも声をかける。
お子さんの腸炎、治ったの〜?
とか
阪神、負けちゃったね〜
ドンマイ、ドンマイ!
こういう他愛のない会話を繰り返している。
彼女が今の病院に欠かせない存在となっている理由
それは、2つあると思っている。
1つは、ピンチヒッターとして各部署を回ることにより、誰よりも最新で正確な情報を持っていることだ。
あとどれくらいで手術が終わるかを手術室に尋ねるより、ももちゃんに聞くほうが早い。
たぶん、閉創(傷を縫うこと)に入ってたからあと30分くらいじゃないかな。あ!でも、今日の看護師さん、まだ慣れていない人だから45分くらいかも〜
すると、45分後にお迎えの電話がなる。
また別の話。
緊急入院のおばあちゃんって、どんな人?ってきくと
認知症バリバリって感じ。
外来の看護師さん、蹴られながら採血してたわよ〜
ありゃ、ナースステーションから近い部屋じゃないと無理だわ
カルテよりも確かな情報を持っている。
さすが、ももちゃん!といつも心の中で拍手している。
病院は新聞社ではないけれど、それでもやはり正確な情報を早く入手することが、迅速で的確な医療を提供することに繋がっている。
ももちゃんは、ここに大きく貢献していると思う。
それから、もう1つ。
彼女は関わる人の機嫌を良くする天才だ。
さきほど、他愛のない会話を繰り返していると言ったけど、視点を変えればそれは戦略性のあるものになる。
病院という職場は、急変したりスタッフのイライラが一気に溜まったりする場所だ。
こういう時、日頃の関係性がものを言うし、それがそのまま医療やケアの質に直結する。
きっと、ももちゃんはそれがよくわかっているから、他のスタッフとのコミュニケーションを絶対に怠らない。
助けて欲しい時に助けてもらうための関係性を、毎日丁寧に作っているのだ。
現に、私だって夜勤明けでももちゃんに会えるととても嬉しいし、元気をもらって帰るような感覚になる。歩くパワースポット。
だから、私もももちゃんがピンチの時は頭よりも先に手と身体が動いている。
ももちゃんが、イライラしてあたっているところを見たことがない。
以前、Twitterで上機嫌はタダじゃないっていうのが流れてきたけど、まさしくももちゃんでは!と思ったところだった。
相手を上機嫌にし自分も上機嫌でいることは、アウトプットや仕事の量と質に大きく貢献する。
ももちゃんのスキルは、スタッフのためにも、そして患者さんのためにもとても有効だ。
以前このnoteにも書いたけれど、人事評価の項目には載らないようなこういうことこそ、もっと評価され認められる世の中になって欲しいな、と願うばかりだ。
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