見出し画像

もう一度、あのおかゆを

正直、白いごはんよりも
玄米や雑穀米のほうが好きなのだが

おかゆとなると話は別だ。
おかゆは、白米でなくてはならない。

しかも、わたしが好きなのは
日本の白粥ではなく

香港にあるような出汁で炊いたおかゆ。

あれは、ふっくらまるいお米ではなく
少し崩れたお米のほうが適してる気がする。

砕けたお米が出汁を吸うとともに
まわりのデンプン質が溶けて
絶妙なとろみを生み出す。

お肉やお魚の出汁が混沌としつつも
ひとつの世界を作り出していて本当にお見事。

上にのる薬味も素晴らしい。

パクチーでしょ
油條でしょ
ザーサイでしょ

香りや歯ごたえ、味、どれも違うのに
ちゃんとおかゆをサポートするのだ。

そして、熱さ。
香港のおかゆの最大のポイントは熱さだと思う。

大鍋で煮たおかゆを
お客が注文したタイミングで
ひとり用の土鍋にうつしかえ

あの、中華鍋が踊る火力で温められる。
いや、熱せられるといったほうがいい。

店員さんが持ってくる頃には
沸騰を超えてマグマ状態。
土鍋が割れてしまいそうなほど。

ふっつふっつと土鍋の上で米が舞う。
さっきのせられたであろうパクチーは
一瞬でしんなりしている。
油條もふやけている。

これがまたいい。

白いマグマを見つめながら唖然としてると
レンゲを渡され

なぜ、いま、この瞬間に食べないのか?

という目で店員さんから見られる。

絶対にやけどする。
わかっているけどもう止められない。

奥底からふっつふっつと沸くおかゆをレンゲで混ぜながら、そのうちのすこしを口に運ぶ。


あ つ い !!
お い し い !!!!


土鍋の中身が半分くらいになるまで
このふたつの気持ちは共存する。


半分を超えるとやっと普通の熱さになり
(それでも、お粥だから熱いのだけど)

食べ終わる頃になると、土鍋を一瞬ぴゅんと触れるくらいになる。

恍惚と熱さで、いろんな生体反応が上向きなのを感じながら、お水を飲んで口の中を冷やす。

このとき、次の日もまた来ようと決めたのだった。同じおかゆにした。


これが、わたしの香港ひとり旅の思い出。

さっき、このnoteを書こうと思いたち、スマホの写真をスクロールしたのだけど香港の写真がうまく同期されてなかったのか、1枚も残っていないことがわかった。ひどい。

あの白いマグマのようなおかゆ
出汁で米を炊くという概念を超えた食べもの


あのときの記憶が失われないうちに
再び食べられる世界がやってきますように。

おいしく食べられるわたしでいられますように。

貴重な時間を使い、最後まで記事を読んでくださりどうもありがとうございます。頂いたサポートは書籍の購入や食材など勉強代として使わせていただきます。もっとnoteを楽しんでいきます!!