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常熱

埋み火(うずみび)

 だんだんと寒くなってきては、暖かさが恋しくなります。過去に『人肌』について触れましたが、炬燵に囲炉裏、カイロや暖房など、日々を温める物は他にも様々です。アメリカは基本、空調管理なので日本のように「炬燵やヒーターを出す」と言う文化は一般的ではありません。というかほぼない…。

 意外にも過ごしやすく、朝起きた時や家に帰った時でも部屋が常に一定気温を保っているのですが『染みるような暖かさ』は感じにくい毎日です。なので冷えた手を暖房に近づけて、その暖かさに胸を高鳴らせるような感覚が今はとても恋しいです。炬燵に入りながらのんびりと過ごす冬の日も、今ではなんだか懐かしい気がしてきます。そんな数ある暖の中でも私は『炭』の暖かさと香りがとても好きです。(炭火焼き料理は至高!)

 この時期の夜の寒さは舐めてはいけません。夜も気を抜かずにいないと凍えて死んでしまいそうです。昔の人々は炭を使って火鉢や七輪などを使って暖を確保しました。また凍えるような夜の中、少しでも暖かくあるように、とその炭の火を完全には消さずにその灰の中へ埋めて置き、夜を過ごしました。

 これを『埋み火(うずみび)』または『埋け火(いけび)』『埋け炭(いけずみ)』と言いました。灰の中で完全には消えぬように温めておくのです。それは微かですが確かに熱を帯びたまま炭として灰の中で生きているのです。

 埋み火の情景を想像したあとに、なんだか『完全燃焼』と言う言葉が儚く、また虚しいことだなと感じてしまいました。数多の体育会系部活の指導者が言いそうな言葉で「完全燃焼しろよ〜」みたいな表現があります。大和魂が刷り込まれていて大変ありがたい応援ですが、完全燃焼してしまっては残るのは灰です。これに対して清少納言もこう言いますでしょう!

白き灰がちになりてわろし。

枕草子

 冗談はさておき、ここで伝えたいのは情熱を持ち続けることです。何かに対して強い心や熱い気持ちを抱くことは誰しも経験があると思います。ですがそれを抱き続ける、常に熱く在れることはとても難しいことです。完全燃焼でもなく、不完全燃焼でもなく。生きている道の中で微かな暖かさで、埋み火のような何かしら心に秘めた熱を、温め続けられたらなと思います。

忘れてしまった思い。
過去に置いてきてしまった感情。
漠然とした日々の
積もり積もった灰をどかしてみれば
まだそこにあるのかもしれませんね。

素晴らしい日が訪れますように。


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