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絵日記|雨の日の結婚式、エディンバラ市役所にて。

エディンバラのMorningsideで、なんとかという教会が毎週木曜日に開く無料の英会話教室に少しのあいだ通っていた。
そこで出会った女の子と仲良くなり、彼女のパートナーや友人も交えて、ケイリー(スコットランドのダンス)や8月のフリンジフェスティバルに何度か一緒に出かけた。たまに遊ぶ程度だったけど、それでもその子が中国に一時帰国したとき、急に寂しい気持ちになったのを思い出す。

そんな彼女がイギリス人パートナーと結婚することになり、わたしは証人として式に参加した。

証人を頼まれたとき、とても嬉しかった。これには英国の住所が必要で、それだけでも、自分がビザを得てここにいることが誰かの役に立ってよかったと心から思った。

式場のエディンバラ市役所に向かう


その日は大雨だった。
前の週に急ぎの用事で一度日本に帰ったので、式用のドレスを用意できたのはよかったけど、長い裾はすでにびしょびしょだった。
式が行なわれるエディンバラ市役所に30分早めに着いてしまい、職員に「早すぎ」と言われる。時間ぎりぎりになるまで、向かいのカフェ・ネロで雨を眺めた。


月曜日だったこともあり招待客は新郎の親族中心で、顔見知りはいなかったけど、みんな温かく接してくださってよかった。私の人生は9割インドアで、でもたまにとんでもなく遠い場所にしれっとした顔で居座っている。理由なくエディンバラにいることも、数ヶ月前は知らなかった子の結婚式に参加していることも、残り1割の出来事かもしれない。だとしても、これもわたしの人生だ。

市役所での結婚式は今まで出席したどんな式ともちがう、荘厳な音楽なく、うやうやしい牧師もなく、シンプルを極めたものだった。とり仕切っていたのはキビキビとした市役所職員という雰囲気の人で、小さな会場はそれでも温かい空気に満ちていた。友人の姿を見ると、胸がいっぱいになった。生まれの国とは違う場所で、市民として生きることを選んだ彼女の勇気。


窓の外はチャコールグレーの建物と降りしきる雨。

“This is Scottish”
パートナーの彼がうんざりした、同時になぜか誇らしげな顔で言う。やれやれ。

結婚式を描いたはずが絵も「結婚式?」と首をかしげたくなるような青さ、どんより感…かもしれない。エディンバラを描こうとすると青をえらびたくなる。明るくするつもりで入れた黄色さえ逆効果な気がする。これでも、祝福の気持ちなんだけど?

描き直そうかなあ。少なくとも渡す機会があれば、もっと明るい雰囲気の絵を渡したい。

ただ何度直しても、結局青くなりそうな気がする。
なぜならThis is Scottish.
便利な言葉だなあ。

Bride at Edinburgh City Chambers
水彩画

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