私になるまで11

大学3年生の秋深まる頃。大学から山の方に上がったところにある精神薄弱児更生施設ー当時は、そういう呼び方だったーに実習に行く事になった。夏休みに一緒にに実習をする子と園長に挨拶に行く。ここの子達は、叫んだり暴れる子もいるけど大丈夫?って聞かれ私は、障害者の余暇活動のボランティアをしてると言うと、じゃ、大丈夫やね。の一言で終わった。ここは実習生に対して指導はしないから、他の職員がやるの見てやる事自分で考えてやって!との事。少し不安があったが、やるしかない!

さて、あっという間に実習に入る日が来る。大学も家からも近いが、山の中に入る感じ。門にしっかり鍵がかかってる。脱走防止だと言うが、何だか刑務所の中に入るみたいに思えた。私達も住み込みでここで4週間。共に暮らす子どもたちはどんな感じだろうか?と思いながら、中に入る。初日は、職員さんたちの様子を見て、食事の用意と後片付け、部屋の掃除だけで終わる。夜同じ実習生と語り合ったこと。ここはおもちゃとか何にもないね。ただいつも同じ音楽が流れるだけ。地域の中にありながら、異空間に来たみたい!そんな話をした。次の日からは、見よう見まねで、子どもたちと接する。はじめはなんか変なやつが来てるみたいに見られてたが、毎日一緒にいる中で慣れてくれて、時には膝の上でおしっこをされたり、お尻がうんこまみれの子が笑って座り来たり。突然髪の毛を引っ張られ痛たたって叫んでしまうこともあった。けれど、実習も半分も経つと、まぁ後で着替えたらいいや。とか思えるほど、馴染んでいた。一番懐いてくれたのは3歳のT君。最初は全然相手にしてくれなかった彼は、ある日から私の膝の上で昼寝タイム。1日が終わり部屋に戻る時、ついて行きたいと泣かれた。そんなふうにされ、より一層愛おしい気持ちになるそんなことが度々ありながら、実習は終わりを迎えた。寂しい気持ちとほっとする気持ちを抱えながら、施設を出る。しばらくの間はあの子どうしてるやろ?とか考える日々が、続いた。

しかし、今考える。何で頑丈な門にしっかり鍵?しかも何にもない山の上?普通とはかけ離れたはずの事が普通に思えてしまったあの頃の私。今考えると恥ずかしい。

その当時は、上から目線の自分だったように思う。けれどその頃から私は少しでも役に立つ仕事がしたいと思うようになった。だから教師を本気で目指してみたい!障害のある子どもたちに寄り添って行きたい。そう決めて、勉強した。


今はまだ修行中の身ですが、いつの日か本にしたいという夢を持っています。まだまだ未熟な文章ですがサポートして頂けたら嬉しいです。