かげふみ4

真夏の太陽は、ジリジリと、アスファルトを照りつける。火葬場で、私達はお骨ができるまで待つ。他人なのだから、別に待つ必要はなかったが、両親は、昔からの付き合いがある。娘は同い年で幼なじみ。だから、最後まで待つと聞かなかった。
両親を待合室に置いて、外に出る。

喪服は、半袖だったが、汗が流れる。

「あ〜家族揃って心中するなんて!馬鹿じゃない?」

後ろから声が聞こえる。振り返ると、30代の女性が、黒のスーツに黒のサングラスをかけ、煙突を見上げていた。

サングラスをかけているので、目が合っているかどうかは分からない。

彼女は、私の横に並んで私の顔を見つめているようだ。

「あなた、亜子ちゃんでしょ!」
見知らぬ女性に声をかけられ、ぎょっとした。

「そうですけど、あの何で私の名前をご存知なのですか?何処かでお会いしましたでしょうか?」

黒スーツの女性は、サングラスをはずして微笑んだ。

「私だよ!有花。と言っても幽霊じゃないよ。」

私はポカンと口を開けたまま、上から下まで彼女を舐めるようにみる。

「有花ちゃんは、もうこの世にいません。悪い冗談はやめてください。」

「まぁいいや、とりあえず、私の話を聞いてよ。私は確かに有花なの。小さい頃一緒にかげふみして遊んだ。その後のかき氷は、格別だった。あの後、亜子ちゃんとは、あんまり遊ばなくなったんだよね。中学時代、久々にイジメをきっかけに登校拒否。亜子ちゃんが知ってる私ってそこまででしょ?」

「まぁ…はい。」何処で調べたのだろうか?疑いの思いは、どんどん強くなる。

「亜子ちゃん、私は別の世界では、生きているの。中学時代。屋上から、飛び降りようとして臆病者の私は家に帰ったって事になってる。アレね!本当は、屋上から、飛び降りたんだ。」

アニメの中では有り得る話だが、実社会では、絶対にない。

「パラレルワールドって聞いたことあるでしょ?飛び降りた瞬間、時空が分離したの。同じ時は流れるが、違う世界を生きているの。」
「でも、私より随分歳上に見えますが、現実的に考えたら、おかしな話ですね。」

「亜子ちゃんが信じられないのは、仕方ないけど、あちらの世界はこの世界よりずっと科学技術が進んでいるの。だから、私は時空を超えてここに来たのよ!あちらの世界は生きているうちにたった1度だけ。時空を超えて現世界にやってこられるの。」

「あの!その世界に私はいますか?」
信じた訳では無い。ただ私は別の世界でいたとしたら、どんな生活を送って居るのか?聞いてみたくなった。

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