かげふみ13

「私もついて行くって、じゃあ私はこの世界でひとりってこと?」

「亜子はもう成人している。家を出て一人暮らしもして、打ち込めることだってある。仲間もいる。卒業までの学費と生活費は、通帳に入ってる。もし、どうしても困ったことが出てきたら、あちらの世界に情報が入る。どうしても助けて欲しい時はこの世界に戻って、あなたとと共に生きるわ。だけどね。あなたは、精神的に強くなった。私達が、居なくなっても、困難を乗り越えて行ける力があると、私は感じる。」

母の瞳の奥に光るものを見た。私を過剰評価しすぎるのは、子供の頃から変わってない。しかし、そんな母のお陰で好きなことが続けられ、今の私は、バレー一色の毎日を過ごしている。父とはあまり触れ合うことは子供のころは少なかった。いつもパソコンのキーボードを打つ姿。今、思えば、子供の扱い方が分からなかったのだろう。

思春期になり、余計に、父との距離は開いた、

悶々とする中、ボールを追いかけると、嫌なことが一瞬忘れられた。有花ちゃんのいじめ、引きこもり。
何故か自分に罪悪感を感じながら、過ごしていたあの頃。

父は一言だけ言った。
「亜子は亜子のままでいい。」

あまり喋らない父の一言で、私は自分の道を進めた。

アンドロイドであろうが、父は、私の父だった。

そして、今、
その父は、また闇と闘う戦士に戻るという。母もまた、そんな危険な状況下の世界について行く覚悟だ。

2人の愛の深さを私は受け止めた。

「父さんと母さんは本当に愛し合っているのね!」
もうどう説得した所で、母は、父について行くだろう。

「分かったわ。でも、絶対死なないって約束して!私はしっかり自分の道を進んでいくから。父さんも、母さんをしっかり守ってね!」

本当にこれでいいか、疑問符が脳裏を渦巻く。

今、親離れ、巣立ちの時期かもしれない。私は自分に言い聞かせた。
「母さん、父さんと共に生きて行くこと後悔したら、承知しないよ。」

3人は共に抱きしめ合った。

自室に久しぶりに入った。押し入れから、古いアルバムを出した。

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