かげふみ1

私がお隣の心中事件を知ったのは、地方の大学で部活動に、明け暮れていた夏の日、

隣の家で、ものすごい悪臭が漂い、新聞受けもひと月はそのままで、奥の方から雨水が染み込み、また、その上に新たな新聞が重なり、うちの母が見兼ねて、新聞紙を片付けに行った。

玄関のチャイムを鳴らしても、反応がなく、何とも言えない臭いが中から外へ向けて、放出されている。

母は、裏口にまわった、昔から、お隣さんとは、家族ぐるみのつきあいで、私もそこの一人娘の有花ちゃんと物心つく頃から、よく遊んだ幼なじみだった。
夏はよくかげふみをして遊んだ。
お互いの影を踏み合うだけの単純な遊びだった、しかし、
まだ幼かった私達には、とても面白い遊びだった。そして、近所の駄菓子屋でかき氷を食べる。

かき氷は、真夏の太陽で、体温があがった体を急激に冷やしてくれる。頭がキーンとなるのがまたたまらない。
その駄菓子屋は、今はもうない。店主だったおばあさんが亡くなったからだ。
幼なじみだった有花ちゃんは、小学生になると、どんどん交友関係を広げ、私の事は見向きもしなくなった。

少し寂しい思いはあったが、年齢が上がるにつれて、それぞれ新たな交友関係を見つけるのは、成長の過程において、普通の出来事だ。

中学生になると、有花ちゃんは整った顔立ちと明るさで、人気者となった。その頃から、ティーンズ雑誌のモデルの仕事を始め、学校を休みがちになった。

私はその頃からバレー部でボールを追いかける毎日。有花ちゃんとは、別のクラス。廊下で会っても軽い挨拶を交わす程度だった。

確かに有花ちゃんは、人気者だった。しかし、それを妬む人は多かった。

ある日、有花ちゃんは、学校に来なくなった。
ただ映画のオーディションに合格したと、友達に話しただけ。しかし少しだけ嘘をついた。
映画の主役に抜擢されたと。

実はそうではなく、主役の友達の友達役だった。

人気者の有花ちゃんは、大ホラ吹きのレッテルを貼られた。
そして、それをきっかけにキツいイジメが始まった、

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