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障害者は避難所に避難しないしできない

 台風19号でたまたま死ななかっただけの朝乃です。
 本当は若干体調が悪くて、半日は布団に突っ伏しているのですが記事書きました。

 さて。
 ああいう災害時、避難のアテのない僕がもしいるとしたら。


はっきり言って死ぬしかない

 親が死んで生活保護にでもなって、孤立すれば死んでもしょうがない。
 たとえ災害に遭わなかったとしても。

 理想もヘッタクレもなく言ってしまえばそうなります。
 先日の台風でホームレスが外で耐え忍ぶしかなかったという記事も出ました。

 ホームレスが避難所に入れてもらえないというのは、実は実質的に「障害者の一部は避難所に入れない」ということにもなります。

 このように、ホームレスになってしまうまで適切な支援を受けられなかった障害者というのは実際にいます。

 しかしながら、今更「人を死なすのか」「人権はどうするんだ」ぐらいのことを言ったって仕方ないです。
 だから弱い立場の人間はNPOなり何なりの頼れる人がいないのなら死ぬしかないです。
 みんなで避難所で受け入れればいいだろとか、そんな安易な話ではありません。


障害者は何故避難しないのか

その1:そもそも動けない

 車椅子生活をしている方、視覚障害の方。
 あるいは重度障害だけど家族に介助されている方。
 地方の生活保護受給者で、車を持っていない方などがこれに相当します。
 体の不自由な人は早めに避難を、と言われても実際には難しいですし、避難したところでまともに動けないのは変わりがありません。
 自宅でひたすら耐えることを選びます。

 また、親御さんの中には「自分の子供が障害持ちだと知られるのが恥だ」「迷惑がかかるんじゃないか」と考える方も未だに多くいらっしゃいます。
 普段から障害者(児)の家族がいることを隠しているのですから、いきなり地域の人と協力することは難しいのです。


その2:健常者よりも病状が悪化しやすい

 ただでさえうつ病などになりやすい環境です。
 特に精神障害を持っている方、発達障害を持っている方は体調が著しく悪化してしまいます。
 うつ病や双極性障害を元から患っている方は、薬がない、環境がストレスになった、などの理由から最悪の場合自殺するかもしれません。

 発達障害者の場合ですと、感覚過敏を持っていることによって避難所という環境そのものが駄目になります。
 知らない場所に人が大勢いて、常に騒音がするような場所はかなり辛いものです。

 子供のうちは暴れたり泣き叫んだりすることもあってパニックが分かりやすいですが、成人であってもパニックは起こりえます。
 その他、身体の不調がいっぺんに押し寄せることもあります。

 また、てんかんやパニック障害を持っている方にとっても避難所というのは危険で、ストレスで発作を起こして倒れてしまう可能性があります。
 さらに知的障害が伴うと、自分で体調が悪いということを周囲に伝えられないこともあります。
 親御さんが世話をするにしてもかなりの負担となりますので、良くても車中泊になることがあります。

 この記事のように、難病の方にとってもハイリスクであることはままあります。


その3:他の人を加害しかねない

 知的障害者や発達障害者にも色々います。
 その中には、普段から多動が著しい方もいます(主に子供のADHD)。
 また、自分の気持ちを言葉でうまく伝えられず、普段から周囲に物を投げたり、暴力を振るうタイプの障害者もいます。
 避難所で「自分は殴られてもいい」なんて言ってくれる人間なんていません。
 ですから、環境の変化に耐えられずにパニックを起こしてしまう可能性を家族が見越して、避難所に行かず自宅で待機するという選択をする場合がしばしばあります。


その4:取り残されるのが分かっている

 これは以前の災害でも問題になっていたことでした。

 たとえば聴覚障害を持っている方ですと、介助者もおらず掲示板などもないので情報が得られないのです。

 避難所の人に助けを求めても意味がないのを分かっているなら、始めから「避難所に行くこと」は選択肢として存在しません。


その5:女性、または子供なので性被害に遭う

 障害関係なしにあるリスクです。
 ただでさえ治安の悪さ、性被害の深刻さについては周囲に理解されにくい状況です。
 そのような現状なのに、コミュニケーションに難のある障害者(場面緘黙、自閉症など)が周囲に「私は男に付きまとわれた」「知らない人に抱きつかれた」とすぐに言えるでしょうか?


その6:福祉避難所の意味がない

 さすがに受け入れる側も何も策を講じていないわけではありません。
 障害者や難病の方、高齢者のために福祉避難所が用意されている場合があります。
 多くは老人ホームなどの高齢者施設だったり、特別支援学校だったりします。

 茨城県水戸市だとこのようになっています。

 残念ながらこれらは地域によって数のばらつきがありますし、災害の危険性があったらすぐ開設されるものではありません。
 開設されても、介助者がいなかったり車を持っていない場合はその福祉避難所にたどり着けないという地域もあります。
 成人して独居しているなどして、介助者のいない障害者も多いのです。


 このように様々な理由をざっくりと挙げましたが、それでも素直に「配慮をくれ!」とは言えません。


避難所は弱者のためのものではない

 そもそも、通常の避難所というのは「死なないだけマシ」程度のものでしかありません。
 配給に並べなくておにぎりがもらえなくても、死なないだけマシ。
 眠れなかったり、パニックを起こしても死んでないならいいだろ。
 強姦に遭った? しょうがないだろ、男だって被災者だしストレス溜まるんだから。
 ……等々。
 本来は災害弱者のサポートに回るべき側が既に疲弊して、余裕がなくなるシステムになっています。
 「パーテーションを用意する」とかそんな程度でどうにかできるようなものではありません。
 あったとしてもそれはそれで救えなくなる人たちが多く出てきます。

 もっと根本的な問題といいますか。
 防災に関する人員やお金をかけていないのですから、健常者にとってもストレスフルな環境になるしかありません。
 助け合いだの人との絆だのと言いますが、果たしてあんな劣悪な環境で成立するのでしょうか。
 難民キャンプよりひどいのですよ?
 そのことを、末端で働かされてる公務員に文句言ったところでどうにもなりません。

 ……こんな絶望的なことばっかり書いても仕方ないので、今できることが書いてある記事も載せておきます。

 もし避難生活をされている方で「それでも生きていく他ない」と感じるのならば、まずはご自分の身を大切にされることです。


「助けてくれない!」が当たり前なら

 僕はこういうツイートを確かにしましたが。
 「合理的配慮」など到底求められないような環境下では何を言っても周りの人の迷惑にしかならないだろうというのを後々になって考えました。

(合理的配慮とは。通称「障害者差別解消法」でよく出てくる言葉です)

 「困った時は避難所へ行こう」というのはホームレスでない障害者でも無茶であって、それを分かっているから多くの障害者は避難をしませんし、できません。
 できないからといって「これは差別だ!」「配慮しろ!」とはやっぱり言えません。

 公務員やボランティア、他の避難してきた方など、周囲の健常者だって万能なわけではありません。
 たとえ福祉のプロであってもそうです。
 彼らだって被災者なのですから、余裕がないのが普通です。

 よっぽど重度の障害者なら施設に入所しているでしょうから、ヘルパーや施設職員が何とかしてくれます。
 子供のうちならば親が何とかしてくれます。
 しかしそれ以外はまず自分で何とかしなきゃ駄目なのです。
 だから障害者本人がまず「自分で自分を守る方法」を確立させないとまともに生きてはいけません。

 僕の場合は東日本大震災を経験した上での台風で、病気持ちで体が不自由になり始めた家族と一緒にいたので、このことについては随分悩みました。
 まぁ、後で福祉職の人なんかに相談してうまいことやっていきたいと思います。

 それではまた別の記事にて。