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薬割りの少女

私は薬割り機。いつも薬を割っているの。
なぜ薬を割るのかって? そりゃあ薬を飲む人が飲む量を調節するためよ。
その人のために私は、こう、丸い錠剤を、体の下にはさんで割るの。
これがけっこう大変なのよ。ただ力を入れればいいってわけじゃないの。一息にエイッとやらないと、きれいに半分にはならないの。
でも、勢いよくやりすぎると錠剤を吹っ飛ばしてしまうし、あまり力が足りないとかえって薬が粉々になってしまうのよ。これがなかなか難しい仕事なんだから。
それでも、私を使って薬を飲む人のためにがんばって割っているの。
え? 最初から割っている薬をもらえばいいんじゃないかって? それは飲む人に聞いてちょうだいよ。
それに、それなら私、はっきり言って用なしじゃない?
まあ、それはそれで楽にはなるんだけど…せっかく薬割りになったからには、やりがいのある仕事や生きがいがほしいな…。
さて、今日はちょうど割った薬がなくなる頃合いだから、私の出番が来るわ。
いつかは仕事がなくなる日が来るかも知れないけど、そのときまで、私、精一杯やらせてもらおう。
よーし、はりきって割るわよ!

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