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フォトジェニックへの道のりが遠すぎる話

インスタグラムが2010年にリリースされてから、はや10年以上経ってしまったらしい。

世の中がインスタでの写真映えを意識するよう動き始めてからもうだいぶ経ったというのに、未だに写真を撮られる時の場の空気がうまく理解できないため、おかしな写真が出来上がる。

以前、友人の結婚式に参加した時の事だ。
会場に早めに到着し、旧友と昔話をして待合室で式が始まるのを待っていた。
パーティ会場には、そういった客が手持ち無沙汰にならないよう、フォトスポットが用意されている。その会場にはソファが置いてあり、目の前の机の上には棒の先にリボンやハートの形のカードが貼り付けてあるものがいくつか置いてあった。

これはフォトプロップスという名前で、いつからか結婚式場の待合室に置かれるようになった定番のアイテムらしい。

フォトプロップス

はじめて手にする物ではあったが、どうやって使うかは直感的に分かるので、あたかも使い慣れているかのように、ハートのついた棒を手に取り友人とポーズを取って写真に写った。

うまく撮れているかと思ったが、写真を見返すと自分だけハートを裏返しにして持っていた。
みんなのハートはパステルカラーの色になっていたが、自分のハートだけ白い紙にマスキングテープが貼り付けてある面が見えているだけだった。

またある時、紙のカップを持って友人と写真を撮る際に、上から見て星形になるように撮影する流れになった。
その時もなぜか逆向きに持ってしまい、一瞬全体に「ん…?」という空気が流れてから、自分だけ違う方向で持っていることに気づき、慌てて正しい向きに直して素知らぬ顔で撮影した。

こんな風にフォトジェニックな写真を撮ろうとしているのになぜかおかしな動きをしてしまう時、よく忍者やスパイが敵陣に潜りこみ、1人だけ違う動きをしてバレてしまうというシーンを思い出す。

涼しい顔で場の空気に合わせているつもりが、ことごとく逆の動きをしてしまい、「友人とフォトジェニックな写真を撮る」という事に慣れていないのが一瞬で炙り出されてしまうのだ。

せめてそこで笑いに変えられれば良いのだが、そんな雰囲気にもできない。
なぜかというと、フォトジェニックなどと言う以前に、友人と遊ぶ際にどのようなコミュニケーションを取っていいか本当はよく分からないのに、「私は周りと合わせられていますけども?」というような体で振る舞ってしまうため、その時点でおかしな空気をかもし出しているからである。
そのどこか変な感じが、写真を撮る時にいよいよ実体として残ってしまうのだ。

しかし今更、人と一緒にいる時にかもし出してしまうぎこちない、変な感じというのは直そうにも直せないのである。
自然にしようと思えば思うほど更に空回っていくのが目に見えているからである。

結局のところ、私はこのままでいることにしている。
フォトジェニックとは程遠い、へんてこな写真を見返しては1人で半笑いをして、一緒にいてくれる友人に感謝しながら今日も眠るのである。

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