【小説】牛島 零(12)

好転

 僕は左頬が腫れたまま登校する。根尾にその顔どうしたと笑われた。

「朝、鏡で見ただろ」

「ごめんごめん滑稽で笑っちゃうんだよ」

根尾は腹を抱えて笑う。僕は反論ができない。キリストはこんな時逆のほうも差し出すのかと思うとぞっとする。両頬やられていたら七福神面接に合格してしまう。

 僕と根尾が歩いていると美咲が他校の生徒の何人かに絡まれている。美咲はいやそうにしているが相手が二人なのでどうにもこうにもな感じだった。

 僕は銃を持っている。よし。

「お兄さんたち何してるの?うちの学校の生徒に手出されてもらっちゃ困るわ」

「は?んだよ」

 僕は美咲に話しかけていたやつの目をにらみつける。相手も負けじと、にらみつけてきた。美咲はあたふたしている感じだった。

 えーい。反対の頬を差し出せーい。僕は右頬を差し出した。美咲に絡んだやつが僕の右頬を殴った。そして僕は倒れた。痛い。僕は死んだふりをしていた。美咲が大丈夫か聞いてきたが死んだふりをしているため動かないでいた。

「ねえ大丈夫ねえ!」

美咲が迫真の演技をすると、まずいと思ったのか奴らは去っていった。

「行ったよ」

「死後さらに強まる念♡」

「馬鹿なこと言ってないで、さっさと立って」

僕が立ち上がると美咲が僕の顔を見て笑った。

「何あんたの顔気持ち悪!」

「昨日はごめん」

「だから大丈夫だって」

「気にしてないの?」

僕は美咲の笑顔を見て少し落ち着いた。

「逆にすごい気になってる」

「どういうこと?」

「鈍感」

僕はガチでわからなかったが、根尾は隣で笑っていた。根尾は、こっそり美咲の耳が赤くなっていることを伝えてくれた。

「美咲、俺美咲のこと好きだ。付き合ってくれ」

根尾何してるんだ!美咲はハンター×ハンターネタをやってほしいはずなのに、そんなこと言ったらまた殴られるぞ。それに抜け駆けするな!いや、待てよ、告白がここで成功したら、僕は美咲と付き合えるってコト⁉

「顔治してからまた来て。告白はロマンチックなほうがいい。次告白するときはOKするから」

美咲は顔を真っ赤にして僕に言った。

「イエス」

美咲は僕に顔を見せないまま学校へ行った。僕は立ちすくんだ。これは確定演出だよな。

「そうだよ。俺がいてくれてよかったな」

「ありがとう根尾」


しかし、根尾はそれ以来、俺の前に出てこなくなった。


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