結果ギターを購入しただけ。


今日は日曜日ということもあって、いつも通りの生活をするなら特に何もせずだらだらと過ごすのだけれども。
「映画館で映画が観たい」との思いに駆られて昼前くらいに家を出た。

久しぶりに乗る休日のJRはなんだか新鮮で、平日の朝の殺伐とした雰囲気とは相まって、日差しは燦々と輝いて見え空気は透き通っていたように感じた。

窓から見える景色は白を基調とした長閑な街並みで、春独特の眠っていた木々が起き出してきて、新しい日々が始まったぞ!というような、新鮮な風景のフィルターがかかって見えた。

スマホのカメラアプリにはお洒落なフィルターがたくさん入っているけど、人間の脳にもフィルターはたくさん入っているように思う。

僕は普段移動中はずっとAirPodsをつけて音楽を聴いているのだけど、今日みたいなフィルターがかかったような視界を感じたときは音楽を停止し、景色を感じることに集中するようにしている。
その景色にあった音楽を選曲して、目でも耳でもいい雰囲気を感じたいなとも思うのだけれど、この時ばっかりは街の音をBGMに景色を楽しんだ方が断然気持ちがいい気がするのだ。

そんな街の風景も目的地に近づいてくるにつれ、だんだんといつもの雰囲気へと収束していく。
新宿駅はいつも通りの人の往来があり、スーツ姿の人間が若干少ないくらい。
電車を乗り換えて池袋へ向かう最中の山手線は、お洒落をした人がたくさん乗り合わせ、みんな日曜日を楽しんでいるように感じた。
久しぶりに降り立った池袋は、コロナ前と変わらず大盛況で、緊急事態宣言下ではあるものの街は完全に前と同じ雰囲気を取り戻しつつあるような気がした。

事前にネットで映画のチケットを買っていて、上映時間まで少し時間があったため冷やかしのつもりで近くの楽器屋へ入ったのが間違いだった。

目に着いたのはフェンダーのストラトキャスターで、2トーンのサンバーストカラーが特徴の57年製造モデルの復刻版ギター。
最近レッチリに復帰したジョン・フルシアンテを彷彿とさせるサンバーストカラーが僕の心をズバッと打ち抜いた。
試奏をさせてもらったら見事に、弾き心地、音、雰囲気、ギターを持つ自分のたたずまい、全てが完璧だったのだ。
僕はたちまち「このギターが欲しい」という衝動に駆られてしまったのだ。
購買欲の高まり・衝動買いという沼に足を突っ込んだわけだ。

店員さんに色々話を聞いているうちに、いつの間にか購入してしまっていたというわけだ。
あまりにも簡単に購入してしまった。後悔はしていない。
鴨にされたというわけではないが、鴨がネギだけでなく鴨鍋用の出汁をとって他の食材も持参してやってきたくらいの感じで購入したことには自分でも驚いた。

その後、ギターのクリーニングや細かいセッティングを施してもらいながら好きなバンドの話やギターヒーローの話で盛り上がっていると、ついつい3時間ばかり話し込んでしまっていた。

観たいと思っていた映画の上映時間はとっくに過ぎ去り、僕はギター代だけでなく観てもない映画のチケット代まで払って日曜日を終えたのである。

もちろん自宅に帰ってからはさっきまでずっとギターを弾いていた。
アンプに繋がずジャカジャカやっていたので騒音問題は多分大丈夫だろう。

あとは、ただひたすらエヴァのネタバレの恐怖に耐えて、ギターを弾きながら次の映画鑑賞チャンスがくるのを待つだけなのである。





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