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今週の1冊

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オススメ本の書評を書きます!
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【今週の1冊】2021年3月②『教養の書』(戸田山和久,筑摩書房)

教養とは何か?あなたは考えたことはあるだろうか? 大学生は教養科目を低学年のうちにたくさん履修することが多いと思う。しかし、世の大学生はその意味を理解して学んでいるのかと言えばかなり怪しい。進級や卒業のために単位を埋める、つまり単なるタスクとして処理していないだろうか?正直、耳が痛いという人も多いのではと思う。 本書は、大学で教養科目を教えてきた著者が長年考えてきた「教養とは何か?」という問いに答えた教養論である。具体的には、教養とは何かを考察したうえで、私たちがそれを身

【今週の1冊】2021年3月①『生物多様性を問いなおす-世界・自然・未来地の共生とSDGs』高橋進(ちくま新書)

突然だが、生物多様性という言葉をご存じだろうか? 一言でいえば多様な生物が存在しているということだ。具体的には①遺伝子の多様性、②種の多様性、そして③生態系の多様性が含まれている。 生物や環境を学んでいる人はおそらく何度も聞いた言葉だと思うが、以前どこかで、この言葉の世間一般での認知度が意外と低いということを聞いたことがあり、とても驚いたことを覚えている。本書でも言及されているが、私たちは日々の生活(特に消費活動)のなかで世界の生物多様性に多大な影響を及ぼしている。また仕

【今週の1冊】2020年12月②『人生を思い通りに操る 片付けの心理法則』メンタリストDaiGo(Gakken)

もうすぐ年末。大掃除の時期である。 「来年から心機一転頑張っていくためにも、今年は思い切ってモノを処分しよう!」と部屋を片付け始めたものの、なんだかんだ捨てる決心がつかず、結局部屋の様子はそこまで変わらないまま新年を迎える、という経験をした人も多いのではないだろうか?そんな時に読みたいのが本書である。 本書では、メンタリストDaiGoが科学的に効果のある片付け術を解説している。また単なる片付け本というよりは、部屋の片づけを通して決断力を向上させることを目指した本だという。

【今週の1冊】2020年12月①『自分の価値を最大にする ハーバードの心理学講義』ブライアン・R・リトル著 児島修訳(大和書房)

自分はどんな性格の人間か?その性格は自分にとってより良い人生を生きるためにどのように活かしていけるのか?本書ではこれらのことについて、パーソナリティ心理学で有名な心理学者が科学的な視点で解説している。 巷にあふれる性格診断はほとんどがエンタメであり、基本的に科学的根拠に基づいたものはほぼない。そんな中で、本書が解説しているビッグファイブテストは、心理学的にある程度の信頼性があり、自己分析に有効な性格診断と言えるだろう。 ビッグファイブテストとは、具体的には誠実性、協調性、

【今週の1冊】2020年11月⑤『正義の生物学 トキやパンダを絶滅から守るべきか』山田俊弘(講談社)

現在、地球は第6の大量絶滅の時代と言われ、史上かつてない速さで生物が地球上からその姿を消している。その主たる原因が人間活動であるということはもはや疑いようがなく、絶滅の危機に瀕した生物の保全は緊急の課題であるとされる。 私たちも日々ニュースを見る中で、何かしらの生物が絶滅しそうだと知るとなんとなくヤバい感じがしたり、絶滅したと知るとなんとなく残念な気持ちになったりする…。生物を保全することがよいことであるということは多くの人の共通認識としてあるだろう。 しかし、そもそもな

【今週の1冊】2020年11月④『超AI時代の生存戦略』落合陽一(大和書房)

テクノロジーの発展が著しく、変化の激しいこれからの時代には、どのような生き方が適しているのだろうか?本書からはそのような時代に自分らしく生きるためのヒントを学ぶことが出来る。 本書では、インターネットが発達し、あらゆる専門性がコモディティ化していくこれからの時代において必要となるスキルやマインドセットについて述べられている。全体は大きく3つの章に分かれており、それぞれ超AI時代の「生き方」「働き方」「生活習慣」について書かれている。 まず本書ではワークライフバランスならぬ

【今週の1冊】2020年11月③『読書について』ショウペンハウエル著 斎藤忍随訳(岩波文庫)

読書を習慣化しよう!じゃあまずは読書について考えよう!と考え、言わずと知れた古典である本書にたどり着く。これから読書をしていこうという自分の背中を押してくれる金言が満載の本と思いきや、読んでびっくり!”読書は言ってみれば自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである。”多読は慎むべきである”など、ぱっと見では読書を否定しているようにも見える文言が目に飛び込んでくる。 最初は出ばなをくじかれたような気分になるかもしれないが、しっかり読んでいくと、読書をする際に注意すべきことにつ

【今週の1冊】2020年11月②『アリエリー教授の「行動経済学」入門』ダン・アリエリー著 NHK白熱教室制作チーム訳(ハヤカワノンフィクション文庫)

「行動経済学」という学問分野をご存じだろうか? 行動経済学とは、簡単にいうと経済学×心理学の学問であると言える。経済学で想定しているのは合理的な人間である。しかし現実には、人間はしばしば非合理的な行動をとることも多い。そこで心理学の観点も含め、非合理性な人間の行動を考えるのが行動経済学だ。人間について考えるときに不可欠な学問分野と言えるだろう。 本書では、「予想通りに不合理」で有名なアリエリー教授による行動経済学の講義を学生との対話形式で読むことが出来る。講義といっても、

【今週の1冊】2020年11月①『サイコパス二学ぶ成功法則 あなたの内なるサイコパスを目覚めさせる方法』ケヴィン・ダットン、アンディ・マグナブ(竹書房)

サイコパスというと、どんなイメージをもつだろうか?良心をもたない人、残虐性をもった人、猟奇殺人犯、狂った人、執行対象()….。いろいろあると思うが、とにかく平気でむごいことをするような人をイメージするだろう。 このようなイメージは必ずしも間違ってはいないだろうが、正確ではない。本書によればサイコパスとは、「冷酷」「恐怖心の欠如」「衝動性」「自信」「高い集中力」「重圧下での冷静さ」「精神的な強さ」「魅力」「カリスマ性」「共感度の低さ」「良心の欠如」といった特性をもった人のこと

【今週の1冊】2020年10月④『勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版』千葉雅也(文春文庫)

勉強するとはどういうことか?本書ではまず、この問いに対する一つの考え方を知ることが出来る。その後、勉強を進める過程がどのようになっているのかということと、それに基づいた勉強の手法が紹介されている。 本書いわく、勉強するとはキモくなることだという。どういうことだろうか?簡単に言うと、新しいことを学ぶことで自分のノリが変化し、それまで所属していたコミュニティのノリに合わなくなって浮くようになるということだ。友達と話すときなどになんとなくノリが合わない感じがする、相手の発言に対し

【今週の1冊】2020年10月③『アイデアのつくり方』ジェームズ・W・ヤング(CCCメディアハウス)

本書は題名そのまま、アイデアのつくり方についての本である。広告界の重鎮ジェーム・W・ヤングが、アイデアをどのように生み出すかをシンプルかつ分かりやすく解説している、いわゆるアイデア本の古典である。実際に手に取ってみればわかるが、本書はページ数がかなり少なく薄いため非常に読みやすい。値段も800円+税と手ごろだ。しかしその分アイデアのつくり方のエッセンスのみが書かれており非常に内容は濃いものになっている。しかも本文の後に解説付きである。つまり何が言いたいかというと、この本は「買

【今週の1冊】2020年10月②『武器になる哲学』山口周(KADOKAWA)

 皆さんは哲学についてどんなイメージを持っているだろうか?「文系」「高尚なもの」「長い歴史がある」などのイメージを持つ人は多いのではないかと思う。だが一方で、学んだとして一体「何の役に立つのかわからない」とも思うのではないか?本書では、コンサルティング業界で活躍してきた著者が、仕事をする中で役立った哲学についてわかりやすく解説している。  本書の特徴として、様々な哲学(や心理学などその他の学問)を私たちが生きていく中で題名の通り”武器になる”という基準で取り上げているという

【今週の1冊】2020年10月①『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』末永幸歩(ダイアモンド社)

美術の授業というと、なんとなく自分で作品をつくったり美術史や作品と作者の名前を覚えさせられたりという印象が強いのではないだろうか?本書では、現役の美術教師がアートの見方や考え方について解説している。知識の暗記やクラスメイトと比べてうまく作品を作ることは本質的には重要ではない。近年ビジネスマンの間でアートが流行っているが、仕事も含めこれからの人生で役立つアート思考を本書で学ぶことができる。 本書では全体を通して、アートとは何か?アーティストとは何か?を考えていくことになる。