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ろくでなし子裁判と日本の女性器の位置づけが悲しすぎる!

数年前の話で恐縮ですけど、ろくでなし子さんの裁判の記事を見て改めてびっくり。

女性器ってこんなに地位が低いものだったのか…!!


裁判の話自体は当時ネットで見てたんだけど、
「こんなバカバカしいことが裁判になるんだ、警察って暇なんだなー」
くらいに思ってたんですね。
だって、どこに事件性があるのかさっぱりわからないもの。

性器とアートの融合なんて目新しくすらないし、あれがダメなら春画とか一体どうなってんの。もっと生々しく性を表現しちゃってるけど、あれは芸術って認められてるのはいいのかとか。

目新しい点といえば、女性器単体という点ですね。男性器単体というのは過去にもたくさんあったし今でも普通にあるけど、女性器単体はなかったな、そういえば。

女性器があれば男性器も一緒にあって当然、エロはエロでOKってことで今まで女性器のソロ活動は認められていなかった。それをお前芸術とか言って何勝手に個人行動してんだ、と警察に怒られたというのが事件の発端のようです。

ろくでなし子さんの裁判でいうと、「ろくでなし子さん本人の女性器を型取りして、ダウンロードできるようにした」という部分です。

どうでしょう、この「うん、だから…?」
としかいえない、事件性のなさ。

私も大人なので人前で性器を丸出しにしたら逮捕案件、というのは知ってます。でももしそれが公共の場ではなく、お互いが同意の上だとしたら別に問題ありません。そうでなければ100%全裸で寝てる私のパートナーは即逮捕です。

インターネットは公共の場ではないのか?
という疑問はちょっと置いておいて、まずこの事件の経緯から。


そもそも、なぜ自らの女性器をダウンロードできるようにするに至ったの?

ろくでなし子さんはアーティストとしての活動の一環としてクラウドファンディングを開催。「3Dスキャナーを使ってマンボート(女性器の形をした、実際に人が乗れるボート)を作りたいです。」
クラウドファンディングを知ってる人ならご存知の通り、資金をしてくれた人へのお礼として「リターン」というのがあります。リターンは実際のグッズだったり、お礼の手紙だったり人によって様々です。それで、ろくでなし子さんはそのリターンの一つに「自分の女性器の3Dデータをダウンロードする権利」を提示したんですね。

え、つまり両方同意の上じゃん??

ろくでなし子さんは、「○○円支援してくれた人へのお礼には、自分の女性器の3Dデータをダウンロードする権利を差し上げます」とクラウドファンディングのサイトに表示し、寄付をしてくれた人はそれを見た上で寄付してくれたわけですよね?

「そんなもん、欲しくねーよ。でも寄付はしたい」という人は別に寄付だけしてダウンロードしなくてもいいだろうし。ろくでなし子さんが自宅に押しかけて強制ダウンロードさせたってわけでもないし。

うん、事件性…?

ろくでなし子さんは一貫して全面的に無罪を主張。
裁判は結論、無罪になった。めでたしめでたし。


私はこの事件について俄然面白いと思い始め、

他の人は一体この「事件にすらなれなかった事件」についてどう思ってるのだろう?
特に女性はどう感じたのか?
気になって検索してみたんですね。


そしたら事件そのもの以上に衝撃な検索結果ですよ。


「おばさんキモい」
「意味わからない。下品。やめてほしい」
「非常識。モラルに反する」



確かに私も最初「自身の女性器を3Dプリントでダウンロードできるようにした」という部分だけ読んで「え??」って思ったけど
そもそもろくでなし子さんが女性器をアート作品として選んだのって、
「女性器に対する差別をなくしたい」という気持ちからきたもの。
「公共の場に男性器をかたどったものがあるのは許されて、女性器は許されないのは女性差別にあたる」

私は完全に同意ですけど、そう捉えない人も多いみたい…。
これはほとんど女性器そのものに対する条件反射ですね、こりゃ。

もう一つ気になったのは、やたら「40すぎのおばさんなのに」とろくでなし子さんの年齢推し。

年齢関係なくない…??
え、20歳ならいいの…?
女性器って女の人なら一生ついて回るものだよね…?
人類の半分は生まれつきもってるやつだよね…?


まあ、この裁判で最大に意味がわからないのは、被害者がいないのになぜ事件になるんでしょうか?ってことなんですけど。
ぶっちゃけ事件ですらないわけですけど、っていうモヤモヤ感。

「有罪でいいよ、キモいから」という人がもっと注目すべきは、こんな些細な事で有罪ってなったらですよ。女性向けのあれもこれも全部タブーって事になりますけど、でもって「前の事件が有罪だったんで全部有罪です」って言い訳を与えるという事ですよ?
だったらたまたま開いたサイトに無作為に出てくる男性向けエロ系のバナーの方がよっぽど露出狂に近いんですけど、どうなんですか。

…と言いたいことが100万個くらい募ったんですけど、
この事件で改めて浮き彫りになったのが「女性器って本当に迫害されてるんだなー」って事です。特に女性からの迫害がすごいよ。

自分たちのものなのに、なんでこんなに嫌悪感、羞恥心にまみれまくってるんでしょう。逆にそっちの方が気になる。
生理があるおかげでシモの世話なんて毎月やってるのに、一体何故?
自分の体の一部なのに「こんなものが私についてるなんて自分が恥ずかしい」と思いながら生きてるなんて悲しくないんだろうか?

また、「そもそもこの人の作品は芸術とは呼べない」(だからアウト)
というのも完全に個人の感想です。
「私には理解できないから、これは芸術ではない」
なんて言ったら世の中のアートはだいたい私には理解不能です。バレエとか見てもさっぱりわかりません。


アートとは表現でアーティストは表現者。
だから絵を描く人だけじゃなくて、彫刻家も写真家もミュージシャンもパフォーマーも全部「自分(または自分の中にある思い)を表現している」人は全員アーティストです。
(裁判では「自称」アーティストと差別発言されてますが、アーティストって基本自称しかいないよね…別に資格試験とか必要ないし)

この事件は海外でも大きく取り上げられたそうで
(残念ながら私のところには届きませんでしたが…)
海外メディアの反応は主に
「こんな事を事件にするとか意味わからない。
もっと他に取り締まるべき性の問題が日本にはたくさんあるのに…?」

という驚きだったそうです。わかるわー。


どうなのこれ?と思ってパートナー(オーストラリア人)に
事件の顛末を話してみると、
「そんなの、表現の自由で逆に訴えられる案件」と言われました。
ですよねー。

というのも実は西洋では女性器をモチーフにしたアートは
珍しくもなんでもないんです。

「ヨニアート」というアートの一表現としてすでに確立してます。
アートギャラリーでも普通に売ってますし。
Etsy(世界最大のオンラインクラフトマーケット)で「Yoni art」で検索してみると、絵画になってる女性器やらジュエリーになった女性器、陶器になった女性器などがあって楽しいです。

ヨニアートに対する人の反応も「ビューティホー!」って感じで、全く「日陰者扱い」されてないのがわかります。


モデルを募り、実際の女性器の「肖像画」を描いてる画家の人と話す機会があったんで「なんでヨニアートを選んだのか?」と聞いてみました。

「メディアに出ている女性は現実の女性とかけ離れてるから。どの雑誌を開いても、毛穴一つないようにフォトショップで加工されてるでしょ?

そんな「現実に存在しない」女性に憧れて膣の整形手術をしたり、自然のままの自分の体にコンプレックスを感じる不幸な女の子を増やしたくない。

だから自然体の自分のままでいいんだよ、って伝えるために描いてるの」



日本では未だに忌み嫌われてる存在の女性器。知識を教えるはずの学校ですらその存在は公に認められず、亡き者として話題にすら登れない日陰者。

このまま性に関する海外との温度差はますます開くばかりなのでしょうか?


私は、せめて次世代の女の子たちにはポジティブなイメージを伝えたい。


なんだかんだいって、自分の体の一部だもの。