映画『永遠に僕のもの』感想

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「すまない、ホモ以外は帰ってくれないか!」

 というのは冗談として、今回取り上げるのはアルゼンチン・スペイン製作の『永遠に僕のもの』です。
 ざっくり説明すると、天使のような美貌を持つ実在の連続殺人犯カルロス・ロベルド・プッチの人生を元にした作品ですね。
 監督はルイス・オルテガ。
 プロデューサーの一人、ペドロ・アルモドバルは『トーク・トゥ・ハー』の人なんですね。『私が、生きる肌』と『人生スイッチ』は観ました。どっちもめちゃくちゃ好きです。

 予告

 人間の自由を謳い、他人の物という感覚を知らないと嘯く主人公カルリートス(音で聴くとカルロスって聞こえます)は、転校先でラモンという少年と出会い、接近する。
 ラモンとその家族は裏社会の人間であり、仲間に誘われたカルリートスは、彼らとともに窃盗・強盗・殺人を繰り返していく――

 とにもかくにも、カルリートスを演じるロレンソ・フェロがヤバいのです。
 本作はまるまる、彼のエロ可愛さを撮るために作られたといっても過言ではない。

 蠱惑的で官能的で背徳的。

 美少年って、想像上の生物じゃないんです。
 原題は『EL ANGEL』というんですが、正しく天使のように純粋無垢な外見なのに、やってることは身勝手で非道という……。
 スタイルも抜群というのではなく、ちょっとお腹がぽっこりしてるのが宗教画の天使ぽいんですよね。
 相方のラモン(チノ・ダリン)はワイルドなハンサムという感じで、ロレンソとは好一対を成しています。
 どちらかというと、ストーリーを追うよりも、人物同士が対峙することで醸し出される雰囲気や、危ういバランスの上で成り立っている緊張感、何を考えているかよくわからない主人公の内面を想像して愉しむタイプの作品でしょうか。

 鑑賞を終えて思ったのが、これはグリゴリの話なのでは? ということです。
 グリゴリというのはエノク書などに見られる天使の一団で、人間の女性を愛したことで堕天し、悪魔と見なされるようになりました。
 よんでますよ、でおなじみのアザゼルさんは、グリゴリのリーダーだったとも言われてますね。
 まず、ラモンと出会う以前のカルリートスは、なんとなく盗みたいから盗む、つまりは窃盗という行為自体が目的で、盗んだ物自体にはまったく執着しないんですよね。これは盗みを稼業としているラモンの一家とはまったく違う。
 そんな彼が唯一執着するのがラモンで、反射的だった最初の殺人以降は、基本的に人を殺すのも彼のためなんですよね。
 でも、最初のアプローチからしてかなりズレていたように、カルリートスの心はラモンに伝わらずドン引きされるという(笑)。
 かくして、人間界の倫理からは多少外れてはいるものの、無邪気に人としての生を謳歌していた天使ちゃんは、愛を知ったことで社会の敵、狂った悪魔へと堕していく――
 そんなお話が性癖という方には、絶対おススメの一本です。

                             ★★★★☆

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