悪玉

 トゥルーマン・ショーをまた見終わりました。素晴らしいですね。よく漫画のキャラクターがコマ枠に触れる描写がありますがあれってとてつもなく暴力的だと思うんです。暴力的という言葉では足りないくらいに破壊力を帯びた衝撃度があると思うのです。あれを現実でやるとしたら我々は何を掴めばいいのか。枠に足をかける彼らはそこから何を見たのか。それは想像を絶する衝撃です。いつも僕も漫画の枠に足をかけたいと思っていました。トゥルーマン・ショーをそれをしてくれました。映像という漫画に似た架空世界ですがそれでも追体験出来るほどの満足はあります。

 トゥルーマン・ショーの駐車場管理人たちの最後の言葉が一番しびれます。あの言葉も衝撃度は同じくらいに過激です。宇宙を蹴飛ばすような震度があります。哲学的でファンタジーでなによりニコニコしながら見ることの出来る素敵な映画でした。

 エド・ハリスさんが最高ですね。まさしくアーティストという雰囲気で演じています。最後のトゥルーマンへ声かける笑顔は狂気でした。
誰もがこの映画の設定で人権について考えと思うのですがエド・ハリス演じるプロデューサーの言う「私は彼に普通の人生を与えている」という言葉には妙な説得力があり、トゥルーマン以上に私はトゥルーマンを知っているというのもまったくその通りですし、やはり人権なんて概念は糞食らえです、みたいな感想。

 繰り返しますが、最後の本当に最後のあのふたりの台詞とやりとりはしびれます。別にどんでん返しとかそういうのがあるわけではありません。また彼らの言葉に対して特別な感情を抱くわけでもありません。それを民衆の興味に対するアイロニーだとか、ブラックユーモアだとかで評価しているのではありません。ただ、瞬間風速が限界に振りきれ、尋常ない衝撃を与える、宇宙にヒビが入るような暴力的なそれに感動しました。

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