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Funny Bunny / the pillows ―夢が叶うのは誰かのおかげじゃない― 勝手に曲紹介


ただ楽曲を紹介していくだけ、という誠に他力本願なエッセイなのは承知の上。しかし、どうしても書かざるを得なかったのです。

だって、僕が小説やエッセイを書き始めたのは音楽があったからですからね。

ある楽曲から受けた感動を誰かに伝えたい。そこから浮かんだ話を通して、この楽曲の良さを分かって欲しい! そんな傲慢な自己表現の極みともいえる不純な動機から、僕は2019年、拙くも文字を書き始めましたから。いつか、その種をそのまま紹介したいと思っていました。念願叶って良かったです。

さて、今回はthe pillows(ピロウズ)ファニバニですね。王道です

ピロウズはもう大御所と言っても良いと思います。若い人たちの指針。この曲はELLEGARDENやBase Ball Bearがカバーしています。ミスチルは「ストレンジカメレオン」をカバーしていましたし、pillowsは僕の好きな人達にカバーされているんですよね。とても嬉しい。

ご存じの方は肩透かしを食らったかもしれませんが、王道は正道ですよ。やっぱり良い曲です。

王様の声に逆らって
ばれちゃった夜にキミは笑っていた

シンプルなドラムのリズムが鳴り出して、ギターとベースの音が重なるイントロ。物語の始まりです。歌い出しは分かり易い比喩から。王様というのは、もちろん権力者。圧倒的な力を持つ存在。個人的に、この王様というのは個人ではないような気がしています。大きな力を持った存在。流行、常識、同調圧力。そういったものが、この王様には含意されているように思えます。

そんな、大きな存在に逆らって、手痛い目を見ても「キミ」は笑っていた。通常であれば萎縮する存在に対して、隠したくなる出来事に対して、笑っているんです。

「僕」はそんな「キミ」の姿を見ていました。

道化師は素顔を見せないで
冗談みたいにある日居なくなった

世界は今日も簡単そうにまわる
そのスピードで涙も乾くけど

そして、突然姿を消すのです。どこに行ったのでしょうか。それも皆目分からないまま時は過ぎる。流れた涙も跡には残らない。「僕」はもう「キミ」には会えません。居場所も、行き先も、何も聞いていないんですから。

でも、ひとつだけ分かっていることがあるんです。それはずっと見てきたこと。全力で王様に逆らうその姿。「キミ」の目が見ていたもの。

キミの夢が叶うのは
誰かのおかげじゃないぜ
風の強い日を
選んで走ってきた

飛べなくても不安じゃない
地面は続いてるんだ
好きな場所へ行こう
キミなら それが出来る

キミの夢が叶うのは誰かのおかげじゃない。

素直な歌詞に震えますね。あ、この連載では「震える」とか「エモい」とか使いまくると思います。常に震えているかもしれませんが、ごく正常ですから見守っておいてください。震えを止めようとして、一緒に震えてしまうのは歓迎します。

本筋から逸れますが、正直、僕はpillowsのにわかです。FLCL(フリクリ)というガイナックスのアニメを見て、pillowsにハマった口です。ただ、そうなったのも必然といえます。だって毎回、めちゃくちゃ盛り上がる所でpillowsの曲が流れるんだもの。もはや「pillowsのサントラにアニメが付いている」と言っても過言ではありません。それほど、映像と音楽が調和した素晴らしい作品でした。
 
その中でも、この曲は好きなのです。

彼らは2019年で結成30周年という息の長い3Pバンドですが、音楽が好きな方以外にはあまり知名度が無いように思います。
だからこそ、この歌詞は僕に響きました。表現者が自身の表現をするのにこれほど真摯で素直な言葉があるのか、と。どうしても僕はこの歌詞は、Vo.のさわおさん自身に向けて言っているように思えるのです。

この曲は1999年、約20年前に発表された曲です。当時はCDがバンバン売れ、上位ヒット曲を公共放送で聞かない日は無かったように思います。僕はまだ小学校に入ったかという年齢だったので、売れ筋というものをきちんと認識していた訳ではありませんが、今ほど好みのバンドを各人が持っているというものでは無かったと記憶しています。売れるものはおかしいほどに売れる。だから、20年前を振り返った時に出てくるのは「だんご三兄弟」、GLAY、浜崎、宇多田、モー娘……といつものメンツ。
 
そんな時代背景で発表されたこの曲。今聞いても時代を感じさせない心地の良いテンポ。さらっと流れる別れのシーン。そして、最後には前を向いて一歩踏み出したくなるような歌詞に何度後押しされたでしょうか。

夢が叶うのは誰かのおかげじゃない――。

押し潰されそうになるメジャーヒットの嵐の中で、こんな気持ちをずっと持って歌っていたのだと思うと、pillowsというバンドが更に好きになります。

虫の声から始まるMV、シンプルなドラムのリズムが耳に入ると自然と顔がほころぶのは、pillowsのなせる業でしょうか。

ばれちゃってもいい。笑って風に立ち向かいましょう。
世界が廻るスピードで涙が乾いても。空を飛べなくても。

僕らは好きな場所に行けるのです。




FLCLのエンディングも置いておきます。キャラデザはエヴァで有名な貞本義行さん。FLCLの影響でベスパが好きになりました。



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