イオンスタイル

友達の家に遊びに行った。道中で買い出しを頼まれることはよくあるが、買い出しほど困難なものはない。よく知らない町のスーパーはどこに何があるかわからず焦ってるので大体すぐ見つけ出せない。さらに頼まれた商品がないときほど絶望することはない。その絶望たるや、飼い主が投げたボールを己の嗅覚で見つけ出せない犬の如し。(直喩)

MOWの桃味。
イオンスタイル御嶽山駅前のどこを見渡しても見当たらない。
こういうとき考えられる行動は、正直になかったことを伝える。または、別のスーパーないしはコンビニを探す。
こういう時毎回後者を選んでしまう。(NOと言えない日本人)

スーパーはなさそうなので、コンビニに行くことにした。大体、駅前のコンビニは線路を挟んで一つずつある。大抵、一軒目になければ、道向かいの二軒目にはない。大概、一応確認するも結局大量の汗と時間だけが流れる。
悲しいけど、こうなるとただただ買い出しがノロいやつ、地図に弱いやつ、仕事ができないやつだと思われるのだ。
日本人は冷たい。どうせ過程よりも結果だけで判断するんだ。(だから、ぺことりゅうちぇるの離婚にも首を突っ込むんだ!)

MOWを探す旅に出てしまい、全く他のものが買えていなかったので改めてスーパーに戻った。この時点で予定より20分以上遅れている。
日本人は遅刻にも厳しい。
刻一刻と、(賀来賢人の発音にちょびっと似てる)社会的信用が下落していくことに焦りながら、言われたまま(榮倉奈々の発音にちょびっと似てる)の商品をカゴに入れていった。
(一部、読者に読み方をこじつけた場面がございました。お詫びして訂正いたします。)

一番最後にアイス売り場に行った。
もう一度、MOWが無いかじっくりと見た。
よーく隅から隅までみてみた。
右上の隅から左下の隅までみた。
やっぱりない。諦めてバニラを買おう。
そう思った時

「なんで無いんだよぉ!!!!」

一瞬自分の心の声が漏れたかとビクっ!として、周りを見ると真後ろでおじいさんが店員さんに怒鳴ってた。

「こんな形の丸いアイスあるだろ!どこだよ!!!」
「えっーと、、、アイスの実ですか?」
「違う!!!アイスの実じゃない!!」
「アイスの実ってまんまるの果物の味のアイスですよ?」
「分かってるよ!!!アイスの実じゃない!!!丸くてー、、、円筒の形したやつだよ!!!」
「はぁ、、、?」

おじいさんの大声は店内に響き渡り、色んな人から白い目(真っ白ほどではなくバニラくらいの白)で見られ距離を置かれていた。
ただ、店内で唯一自分だけはおじいさんの気持ちに甚く共感した。
わかるよ、おじいさん。探し物が見つからないときほどしんどい時ってないよね。それなのに、みんなは知らん顔して嫌んなっちゃうよね。

「ピノですか?」

今度は心じゃない方の声が自分から出た。おじいさんの気持ちもわかるし、店員さんも困ってたし、なにより絶対ピノで勝ち確だと思った。店員さんはびっくりしてアイスの実くらい目を丸くしている。

「違う!!!ピノじゃない!!!でも、何個か入ってるやつ!!!」

え????
ピ、ピノじゃない?????
勝ち確から一転、頭の中のちゃぶ台がひっくり返されたような気持ちになり、何故だか店員さんと無言で見つめあった。

「え?じゃあ、何味ですか???」
「いくらぐらいでした???」
「いつ買いました???」
「最近じゃなかったら、季節限定の可能性は???」

見つめあったあと、なぜか二人で協力しておじいさんを質問責めした。おじいさんは怯むことなく全て返してくれた。

「抹茶味!」
「70円!」
「昨日!だから季節限定じゃない!」

まるでドラマ「Nのために」のように、話は複雑になっていく一方だった。(伏線回収どや顔)

「俺はさ、奥さんが今朝このアイス美味しいっつーからよ、また買ってやろうと思って今日きた訳よ。どうにか探してくれねーか?」

さっきまで怒鳴っていたおじいさんが自分たち二人の若者を説き伏せるように言った。
そうだったのか。おじいさん。ごめんよ。ずっとただのワガママ親父だと思ってたよ。

「一応、昨日で終わったものがないか調べてきますね。」

店員さんも心を打たれたのか、改めてバックヤードにも確認しに行った。それを見て、おじいさんも落ち着いたようだ。
日本人は情に弱い。忘れていたよ。ここには人を想う気持ちがあり、なにより月日を重ねてもパートナーへの思いやりを忘れない素敵な人がいる。捨てたもんじゃあないね、日本人。いい街なんだねぇ、御嶽山。


おじいさんのことがひと段落し、ふとケータイを見ると通知がきていた。
「道に迷ったのかな?」
日本人は行間も大切にする。オイラにゃ分かる。これは京都でいうところのお茶漬けだ。
お会計を済ませ、スーパーを出ると、商店街をガンダした。

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