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ノルウェー語の試験に挑戦してみた結果

ノルウェー語力を測る試験 norsk prøve

日本の英検や、外国人向けの日本語能力試験と同じように、ノルウェーにもノルウェー語の語学力を測る試験が存在します。norsk prøve(ノシュクプロゥヴァ)という名前で、Kompetanse Norge(コンペタンセノルゲ)という組織が運営しています。

ノルウェー語習得メモでも少し触れたのですが、なぜこの試験を受けることにしたか、試験はどんな感じだったかなど、私自身のストーリーを、ノルウェーのワーホリを考えている人、語学やVISAの申請等に関して誰かの参考と勇気につながればいいなと思い、心を込めてメモします。

まず試験の概要です。

開催は春夏秋冬の年4回。
2020年もコロナの状況に関わらず通常通りの方法で実施していました。試験日時は会場によって異なり、オンラインで申し込みをしてから数週間で試験会場から試験日時がメールで送られて来ます。

リーディング Leseprøve(75分以内、早く終われば試験会場から出ても良い)
リスニング Lytteprøve(25〜50分)
ライティング Skriveprøve(90分、レベルが高くなると120分)
スピーキング Muntligprøve(20〜30分)
の4つのパートに分かれ、スピーキング以外は試験会場で指定されたパソコンを使って、同日に行われます。

スピーキングは対面で、同じレベルの受験者とペアで試験の部屋に入り、試験官の指示を受けながら個別に話したり、2人でやり取りをしたりします。

試験のレベル(nivå・ニーヴォ)は、概ね4段階に分かれます。ウェブサイトに書いてあることをすっごく簡略化して説明すると。
A1:レベル1
身近な日常の言葉や表現を理解して使うことができる。
A2:レベル2
短くてシンプルな会話、メッセージをすることができ、自分の経験について簡単なフレーズや文を使って表現することができる。
B1:レベル3
身近な話題について話すことができ、テキストを書いたり意見を交わしたり、計画や理由を簡単に説明したり文章にしたり、ほとんどの状況に対処することができる。
B2:レベル4
自分に関係する分野についての学術的な議論に参加でき、比較的流暢に幅広いトピックについて意見を交わしたり、文章を書いたりすることができる。

これ以上のレベルC1〜もありますが、通常ノルウェーで働き、特に言語で困ることなく暮らせるレベルはB2と言われています。

B2までのレベルの試験は3つに分かれ、受験希望者は次から自分のレベルに合わせて試験を受けることになります。
● A1-A2
● A2-B1
● B1-B2

リーディングとリスニングの場合は、最初の数問で受験者が正しい回答を選択できている場合、自動的に高い方のレベルの問題に切り替わります。コンピューターが勝手にやっていることなので、どこで切り替わるのかは私にはよくわかりませんでしたがが、この仕組みは受験者にとってより高いレベルを狙えるチャンスになるのでいいなと思います。

それから、リーディングとライティングは、制限時間内であれば先に次の問題に挑戦したり、前の問題に戻って回答を書き替えたりすることができます。受験者にとって時間を有効に使える仕組みになっています。

試験の結果は、試験会場から登録した住所に郵送されます。
私の場合はスピーキングの試験の最後に5週間後に届くからねと言われ、ちゃんとそのくらいで届きました。

試験の受験料は、ウェブサイトには300〜2,200クローネと書いてあり、実際に受験を申し込むときにポータルサイトで金額を確認できます。これは人によって受けるパートが異なるからで、人によっては必要なスキルだけで良くてスピーキングは受けないとかいう事情があるからのようです。
私が申し込んだときは、スピーキングとそれ以外のパートの値段がそれぞれ800クローネ。合わせて1,600クローネ、日本円に換算して17,000円ほどでした。

ちなみにレベルに関わらず、試験はすべてノルウェー語で行われるので、問題文や試験官が話す指示も全部ノルウェー語です。
まぁ指示はわからなかったら「わからんからもう一度言ってください」って言えるし、周りの様子を見れば何をすればいいのかだいたいわかるので特に問題はありませんでした。

なぜノルウェー語の試験を受けたのか?

正直、自分がノルウェー語のテストを受けることになるとは全く思っていませんでした。というか、次の試験がある2ヶ月前まで試験の存在すら知りませんでした。

ですが、2020年の8月にノルウェーに来て、当然ながら仕事を探すにもノルウェー語ができないと難しいとたくさんの人に言われたし、自分も言葉がわからないというストレスを抱えることになりました。

そしてノルウェーは、何かと証明が必要な”証明書社会”。

通常、ノルウェー語学校に通っていると、必要に応じて「ノルウェー語を勉強しています!」という証明書をもらえます。これは教会や慈善団体が開いている無料のノルウェー語コースも同じで、とにかく「勉強してるから!これから上手になる可能性があるよ!」ということを、例えば雇用主や仕事の面接時にアピールすることができるので、有利になる可能性があるのです。

すぐに仕事を見つけるつもりはなかったし、Språkkaféで日常会話は無料で練習できるからと思って、私は特に学校やノルウェー語コースに通っていなかったのですが、今後何かとこの「勉強しています証明書」が重要らしいと知って、急に焦り始めたのが9月の終わり。

ノルウェー語学校について改めて調べたり、無料のコースについて担当者に尋ねて回ったりしたものの、たいていのコースは8月もしくは10月スタートで、10月分の申し込みはもう終わっており、次の開講時期は2021年の1月だと言う…😫

オーーーーーーーーーーーノォーーーーーーーーーーー!!😱

無料のコースの場合は、内部に同じ国から来た人や仲の良い人がいると受け付けてくれるケースもなくはないとか何とか、あまり要らぬ情報も聞かされ、自分のタイミングの悪さを呪いそうになり、一瞬落ち込んだのですが。

この証明書を得るために学校に行くのもなぁ…と思っていたときに、在ノルウェーの日本人お姉さまが「ノルウェー語の試験を受けてみたら?」と教えてくれたのです。なるほど、そんな手があったのか…!🤔

すぐに調べてちょうど2ヶ月後に試験があるとわかり、よくわからんけどこれは受けるしかない!と決めました。

私のnorsk prøve体験

私はノルウェー語にはまったく自信がなかったので、とりあえず1番レベルの低いnivå A1-A2を受けることにしました。
とにかく証明になるものをもらう!この一心でした。

試験がどの日時でどのパートから始まるかは、そのときの試験会場に都合や受けるレベル等によるのでしょう。
私のときは、ライティング、リスニング、お昼を挟んでリーディングの順番でした。どれが何時からか、何時までに会場に着いてなければならないかなどは、メールに書かれているので特に心配は要りませんでした。
私は、2020年・冬の試験で、12月9日にスピーキング以外の3つのパート、12月10日にスピーキングの試験を受けました。

試験を受けると決めてからは、試験のサンプルを見たり、借りているノルウェー語のテキストNy i Norgeの教科書を読んだり聴いたり、ノルウェー人との友達とのメッセージに積極的にノルウェー語を使ったり、友達に自己紹介の仕方を教えてもらったり...そんなふうに過ごしていました。

A1-A2の試験内容は、記憶にある限りですが、こんな感じでした。
試験のサンプルはKompetanse Noegeのウェブサイトでも確認することができます。

<ライティングの問題>
● あなたはパーティを主催することになりました。友達をパーティに招待するメッセージを50単語以内で書いてください。
解答例
「Hei. 今週末にうちでパーティを開くことにしたよ。6時からスタートするんだけど、来られる?ルームメイトと私の友達が7人が集まる予定だよ。もし来られそうだったら連絡してね!あなたに会えるの楽しみにしてる。じゃまた!」というようなことを書けば良い。

● この絵について、あなたが説明できることを80〜120単語で書いてください。
解答例
「9人の人がいて、庭でパーティをしているようです。青い服の男の人は飲み物を飲んでいて、ピンクのワンピースを着た人と一緒にしゃべっています。… 」という調子で書いていく。

<リーディング>
●(SMSのメッセージを読んで、答えを4つの選択肢から選ぶ)このメッセージを受け取った男性は、何をすれば良いのですか?
●(短い文章を読んで)この単語と同じ意味の単語を次の文章中から選び、クリックしてください。

<リスニング>
● 絵を見て、質問される内容に合致するところをクリックして選んでください。
●(男女の会話を聞いて、答えを4つの選択肢から選ぶ)〇〇さんはどうするつもりですか?

<スピーキング>
● 最初にあなた自身のことを少し教えてください。
● この絵を見て、あなたに見えるものについて説明してください。
● 日本とノルウェーの料理はどんな違いがありますか?
● どんな分野の本を読むのが好きですか?
本来は同じレベルの受験者とペアで話す部分もあったのですが、私のときはもう一人の受験者が現れなかったため、すべてのやりとりが試験官との間で行われました。

試験のポイントは、コミュニケーションが成立するか

私は試験というものがとにかく苦手、というか嫌い、というか何というか。やると決めたにも関わらず、勉強にも全然身が入りませんでした。

そんなこんなで私がウダウダ言ってたときに、ノルウェーの友達に言われたのが、次のようなこと。

「あなたがノルウェー語を理解できているかどうかを観るテストであって、あなたの能力を観るテストじゃないよ。間違っているかどうかはそれほど問題じゃない。例えばスピーキングなら、何も言わなかったら『この人はまだこれについてわかってないんだな』と認識されるけど、間違ってても何か言えば少なくともあなたがノルウェー語について何か知っていることがアピールできるんだよ。」

「試験官はあなたを試験に落とそうとしたり試したりするためにいるわけじゃなくて、助けようとするためにいるもの。だからわからなかったらわからないと言えばいいし、知らない言葉があったら知らないと言って大丈夫。」

そうか、なるほど!
確かに、言語をわかっているかどうかを知ることと、その人の能力を判断することは、全く別のことだ。

自分にわかっていることは、体裁が悪かろうと何だろうと、恥を捨て去ってアピールする。
だからライティングやスピーキングでは、
Vi ser 〜.(この絵には〜が見えます。)
Det er 〜.(どこどこに〜があります / います。)
De ser 〜 ut.(それらは〜のように見えます。)
のように、「です・ます」だけが続くような単調な文の連続でも、理由や時を示す接続詞すら使わない状態でも、とにかく「私、それ知ってるもん👍」ということの証明に集中しました。

自分に何が見えているか、どんなものがそこにあるか、それらは何色で描かれているか。それだけで、物や動物、色の名前(名詞)を知っていることをアピールできます。

スピーキングのときは、私がこれ以上何を言おうかと迷っていると、試験官のほうから
「テーブルの上には何がある?」
「その男性は何をしていると思う?」
と質問をし、私が答えやすいようにたくさん助けてくれました。

また、試験官からの質問に私の知らない言葉があったときも
「私はその言葉を知りません。」
「もう一度言ってくださいませんか?」
と伝えることで、試験官もゆっくり言い直してくれたり、違う言い方をしてくれたりして、コミュニケーションが滞ることなく、やり取りを続けることができました。

この試験の本質的なポイントは、自分が理解してることを証明できるか、人とのやり取りが成り立つかどうか
点数が100点満点中何点とか、正解/不正解がはっきりしている試験ばかり受けてきたからか、自分の中で「知らないこと=点数が取れないこと=よくないこと」のような図式ができあがっていたことに気づきました。

だからA1以下のレベルで測定不可にならないだろうか...(実際にはA1以下というのはなさそう 笑)とか怖くて自信がなさすぎて、ものすごい緊張して試験に臨んだものの、友達のアドバイスで、もう何であれ自分が今知っていることを最大限出し切ろうと、気持ちを切り替えることができました。

結果的に、私は最も低いレベルのnivå A1-A2の試験に挑戦して、4つ全てのパートについてA2(レベル2)を取ることができました。
びっくり、なんだ自分、やるじゃん!🥳

ノルウェー語のテキストを1冊きっちりとか真面目に勉強したわけではありませんでしたが、私はノルウェーに来る前からトータルで2年間くらい、Duolingoのアプリでほぼ毎日ノルウェー語を続けていたのが功を奏したのか。電車での通勤中はノルウェー語をやると決めて最低15分間、ウトウトしながらも、やっぱり続けることで自分の中に積もってくものがあるんだなぁと実感しました。

あとは確実に、友達がくれたアドバイスのおかげ。
試験とは何たるか、特に言語の場合は合格点を取ることだけが重要なのではなく、その先の生活にフォーカスしているもの。A2という結果をもらうことができて、私はノルウェーでノルウェー語を使うことに少しずつ自信を持てるようになりました。

わけもわからず始めたことだったけど、結果的に時間やお金を効率よく使うことができたし、挑戦してみて良かったなと思っています。😊

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