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新人美容師が「美容師」になるまで

気が付くと4月になっていて、沢山の人達が学生を終え、新社会人となります。
これから大きく広がる自分の世界を思う存分に楽しんでもらう為に
今日は特に今春から美容師になられた方、これから美容師をやってみようと思っている方に読んで頂けると幸いです


新人って言われていたこと

気が付くと美容師になって30年以上経ってしまって
すっかり可愛げも愛嬌も亡くなってしまいましたが
それと反比例するかのように僕の体形は可愛く愛嬌あるものになり
ただの優しそうなおじさんになりました

思い起こせば30年前…って
偉そうに言いたいんですけど30年前の事って覚えていますか?
僕、殆ど忘れていましたがこの時期になるとフッと

フッとね「新人美容師時代」の事を思い出します。

メチャクチャ緊張していて、初めての美容室の朝礼で挨拶した瞬間の映像は今でも頭から離れず、鮮明に残っているので脳って凄い

「初めまして、マツエタケシと言います!しっかり頑張りますけん、よろしくお願いします!」って言ったら

周りの先輩美容師がクスクス笑いだしました

え?
ちゃんと挨拶したのに
何が可笑しかったのか全く分かんない…
これが都会の美容室か…
大きい声は駄目なんだな…

って

勝手に解釈したのですが、この場合おかしかったのは熊本弁
「しっかり頑張りますけん」って今は熊本でも言わないかもしれませんが
何かオシャレな美容室での朝礼で張り切り過ぎたのかな
しっかりと方言が出ていてそれにも気が付かないくらい緊張していました

僕も新人美容師でしたから

言葉ってね
本当に大事なんですけど当時の僕は気持ちで乗り越えようとしていたけど
結局何話したって「イントネーションが違う」って笑われて
そのうち話すのが苦手になってきました

なんか話したって笑われるし
チョット張り切ると馬鹿にされるし
標準語ってなんか気取っているようで嫌なんだよな
俺は俺

別に周りの事なんか気にせんでもよか
それが九州男児たい!
実力ば付けてからあいつらば黙らせるったい!

てな具合にね

でも、何をやっても上手くいきません

この時点で一番の問題点は
「自分がどう見られているか」だけしか考えていなかったから

だけん俺は駄目だったったい

強い自分の想いの弊害

誰にも負けないように、ひたすら練習をしていましたが
シャンプーのテストになかなか合格出来ません

んー  なんか違うんだよな

なんて、フワッとしたアドバイスを受けて「ありがとうございます」って言ってたけど、全く意味も理解できずに練習を重ねます

「何か違う」って何が違うんだ?!
もっと明確に教えてくれなきゃ解んないよ
同期はさっさとシャンプーを合格してヘアカラーの練習しているって言うのに俺は何をやってるんだ

早いとこカットをして皆に自分の実力を見せつけないといけないのに
シャンプーでつまずいている場合じゃないんだよ!!
えーいもっと練習だ練習だ練習だー!!!

って、先輩を捕まえては練習しようとすると、ある日先輩に言われました
「俺も練習あるし、いつまでもお前の練習に付き合えない」って

アーそうですか
はいはい分かりました、もう頼みませんっ!!
友達でも何でも呼んでシャンプーの練習してやるわ
見とけよ先輩ども。
今度のテストは必ず受かってやるわぁぁぁぁっ!!


意気込んでは見たものの次のテストも不合格…
同期はヘアカラー合格して、次のワインディング(パーマを巻く作業)の練習を始めていました



はっ!!
これはあれかっ!! イジメかぁぁ!
やっと気が付いたぞお前らめ
この天才の俺を合格させない事でどうせ陰でクスクス笑ってんだろう
そういえば最近、クスクスクスクス聞こえるから変だと思ったよ
もういいっ!!

こんな会社辞めてやる!!

と、「自分は正しいのに周りがクズだった」理論に基づき
社長の自宅に訪問し、退社する事を告げるとビックリする事を言われました

「お前、誰の為に仕事してるの?」って

誰の為に何の為に

「お客様の為です。でも、僕はもう辞めたいんです」

「そっか、じゃあ辞める前にシャンプーしてくれないか?」

「えっ…はい…」

それから社長と二人でサロンに行ってシャンプーをすると
テストの事は一時考えなくて良いから明日もう一度俺の為にシャンプーして欲しいと言われ

あれ?これって辞められないのかな??なんて思いながら一人暮らしのアパートに帰り悶々と考えます

俺の為にシャンプーしてくれって、社長は太ってるからきちんと洗えないのかな?
社長はどこを洗うと気持ちいいんだろう?
社長のおでこって結構狭いからもっと細かくシャンプーしてみたらどうだろうか?

気になって気になって
え?これって恋?
くらいの勢いで社長の事を考えました

何故かもう嫌になっていたシャンプーを「早くしたい」と思うようになり
数日間にわたって社長の事を考え、シャンプーをしていたある日
「やれば出来るじゃないか、テストを受けてみろ」と言われ
見事にテストを合格する事が出来ました
「ただの通り道」くらいにしか考えていなかったシャンプーなのに、嬉しくて涙が止まりません

新人美容師の僕は「自分を良く見せる為の武器」として技術を覚えようとして、挙句それを先輩やほかの美容師に勝つ為に使おうとしていました

そこに「この人の為に」が無かった事を周りの方々に見透かされ
誰も協力してくれなかった事を周りのせいにしていた

自分が恥ずかしくなったと同時に「誰の為に何の為に」を理解した僕は
「新人美容師」から「美容師」への第一歩を歩んだんだと思います。

お世話になった社長や先輩方、本当にありがとうございました

人の喜びが喜び

今年、美容室に入った皆さんは未来の自分にどんな期待を持っていますか?

オシャレな仕事をしてお客様は全員アリガトー!!って帰っていって
SNSで取り上げられて有名になっちゃって
有名になった後はサロンを出しちゃって
自分の想いに共感してくれる仲間と伝説のサロンが出来ちゃう

もしくは有名サロンに入社して熱い思いで切磋琢磨し
誰もが認める業績を上げ、独立後は海辺にヘアサロンを個人で開いちゃってお客様と楽しく趣味と仕事を両立しながら生きていく

なんてね

色んな事を妄想しながら未来の自分の姿をフワッとで良いですから
その空間、その時に流れている音楽、話している会話、自分の洋服やお客様の表情に至るまで出来るだけイメージしてみて下さい

大事な軸は「お客様」を中心に考えないといけない

頻繁に聞く言葉で聞き飽きたかもしれませんが
誰かが喜ぶ姿を想像しながら練習をしてみると不思議と上達も早いし
ファンが付くのも早くなります

そうして人の喜びが自分の喜びになった時に
行き詰っている努力も報われ、きっと良い美容師さんになると思います

うちのサロンにも4月になって「新人美容師」さんが入ってきました
どうかしっかりと先を見て、数年後に楽しんで美容師をやれますように

最後まで長文を読んで頂きありがとうございました

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