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【絵本レビュー】 『ゆうちゃんとめんどくさいサイ』

作者:西内ミナミ
絵:なかのひろたか
出版社:福音館書店
発行日:2009年4月

『ゆうちゃんとめんどくさいサイ』のあらすじ:

何でも「めんどくさい! 」と言うゆうちゃんが、何にもしない“めんどくさいサイ"の子になります。ところが、あんまり手が汚れたので洗おうとしたら、めんどくさいサイが「手を洗うな」と言うのです。堂々と「めんどくさい! 」を連発するゆうちゃんは、子どもたちの憧れの的! そして、めんどくさいサイのところを自分から飛び出していく結末も、共感を呼びます。


『ゆうちゃんとめんどくさいサイ』を読んだ感想:

一瞬私のことかと思いました。ゆうちゃんではありません、めんどくさいサイのことです。そう思いながら横目で乾いた洗濯物の山を見ます。床に散らばった息子のコートや靴、旦那のタオルのことを思い出します。トイレに行くたび、席を立つたびにそれらが目の端に見えて、「あ〜、立ったついでに拾って持っていかなきゃ」と思うのですが、「私のじゃないし。。。」と思うとともに「めんどくさ〜い」と思ってしまうのです。

「自分でいることが大切」とよく聞くけれど、私が私でいたら今頃家はものすごくめちゃくちゃになっていると思います。私のお尻からも立派な尻尾が生えて、頭からもキノコが生えていると思います。だから私が完全に「自分自身」でいられることは今のところなさそうです。

子供の頃よく母にも父にも怒られました。「めんどくさがらずにちゃんとしなさい!」何千回も言われた言葉です。学校から帰って来たらランドセルをダイニングテーブルのところに置きます。手を洗ったらお弁当も出さなきゃいけないし、宿題もするからです。宿題が終わったら呼んでいる途中の本を出してリビングに行って、ランドセルのことは忘れてしまいます。そのあと何かの用事で二階の部屋に上がる時も持って行きません。大抵母に「なんでランドセル上に持って行かなかったの?」と言われますが、たった今降りてきたばかりなのにまた上がるなんてめんどくさい!「つぎ上に行くとき持って行くよ」と答えます。でも私はほとんどの時間をリビングで過ごしたので、次に部屋に上がるのは寝るときです。そして考えるんです。
「今上に行ってもランドセルは必要ないし、どうせ明日起きたらまた下ろさなくちゃならない。めんどくさ〜い」
だからランドセルはそのままダイニングの床か椅子の上に取り残されるのです。床に物が置かれているのが大嫌いな母は、始終キーッとなっていましたけどね。

それから大きくなっても私は床積みをやめられませんでした。高校生くらいになると私はそれを「ローライフ」と呼び、部屋の家具も低めのものばかり買ってもらって、ほぼ床でゴロゴロする生活になりました。だから床に本が置いてあるのもオッケーなのです。机もありましたが、高校三年間のうちそこで勉強したのは本当に数えるほどだったと思います。大抵は普通の棚を横に倒してローライフ仕様にしたところに置いたステレオの音楽を聴きながら、床に寝っ転がって宿題もテスト勉強もしました。高校生にもなると母はあきらめ顔で見ていましたけどね。

一人暮らしをするようになってから私はあるテクニックを生み出しました。「すぐする」です。上着は玄関を入った瞬間にかける。バッグもすぐ引っ掛ける。ベッドは起きたらすぐ空気を通して整える。お風呂で脱いだ服はすぐ寝室の洗濯カゴに持って行く。食べたらすぐ食器を洗う。思い立ったら吉日です。その場でしないと絶対面倒くさくてしないことがわかっているのでするのですが、旦那はどうやら私がきちんとしすぎている、と思っているようです。旦那の靴は玄関前から廊下いっぱいに広がり、タンスから物を取ったら開けっ放し、「乾かしている」というという理由でドアに引っかかっているTシャツやタオルはほっておくと数日そのまま、靴下も家中のいろんなところにあるし、ゴミは適当に投げ入れるので周りに落ちているという始末。「あ〜うちも〜」という方もいるかもしれませんね。

まあこんな面倒臭がり屋の旦那からすれば私はちゃんとしているのかもしれません。でも彼のお尻を叩いてきちんとさせるのは、同等に面倒臭がり屋の私にはできません。ましてやいちいち言うのもめんどくさいのです。彼が捨てるつもりでシンクに置いた空のシャンプーボトルを私が捨てないのを旦那は私が意地悪していると思っているようですが、ぶっちゃけた話「めんどくさいサイ」なのです。何しろ分別用ゴミ箱は台所にしかなく、私は台所に行く用事はないのですから。はい、私は筋金入りの「めんどくさいサイ」でございます。


『ゆうちゃんとめんどくさいサイ』の作者紹介:

西内ミナミ
1938年京都生まれ。東京女子大学卒業。在学中より児童文学創作を志すが、広告会社にコピーライターとして約10年勤務。堀内誠一氏のすすめにより、はじめての絵本「ぐるんぱのようちえん」を書く。「おもいついたらそのときに!」(こぐま社刊)、「しっこっこ」(偕成社刊)、「ゆうちゃんとめんどくサイ」(福音館書店刊)などの作品がある。


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