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【絵本レビュー】 『オニのきもだめし』

作者/絵:岡田よしたか
出版社:小学館
発行日:2017年7月

『オニのきもだめし』のあらすじ:

ある晩、ふたりのオニが夜道を歩いておりました。
そこに、ゆうれいやろくろっくびがあらわれて、オニたちをこわがらせます。やっとのことで家にたどり着いたふたりのオニに起こったおどろきのできごととは!?

『オニのきもだめし』を読んだ感想:

私はホラー映画もお化け屋敷も苦手です。テレビの心霊特集などは絶対に見れません。小学校の夏合宿できもだめしなどという時はめまいがするほど怖くて、一緒に歩いたこの腕にしがみついて、ずっと目をつぶって歩きました。そうすると変な声が聞こえてきて、急に何かが私に触れてきたり。。。怖くて怖くて声も出ず、その代わり喉の奥から「ぴー」なんて変な音が出てきました。

ある時日本語を教えていた生徒さんは大の日本ホラー映画ファンで、週末に見た「地縛霊」の話を延々とされ、夏であったにもかかわらず私は聞いているだけでシーンが想像できて怖くて怖くて背筋が凍りました。気がついたら座席の端をぎりぎりと握りしめ、体にも力が入りまくりです。好きなことを話せた彼女の日本語はだいぶ上達したけれど、日本語教師も楽ではないと実感しました。

さて、そのまま大きくなってしまった私ですが、そのとき付き合っていた彼とホラー映画の話になったのです。私が怖いから好きでないというと、「怖いのはちゃんと見ていないから」と言うのです。見ないと想像してしまって、大抵想像したシーンは実際のものよりすごいことになっているのだ、というのが彼の理論でした。それを実証すべく、私たちは「ホラー映画の夜」をすることになりました。全然嬉しくないデートの誘いではないですか。私の心はその週ずっと重く、こんなに週末が楽しみではないのは初めてだったと思います。

そしてその夜、彼のシェアアパートに着くと「リング」と「仄暗い水の底から」のDVDが準備されていました。「リング」は日本で公開になった時の予告編をうっかり見てしまい、怖くて仕方のなかったものです。私たちはソファーに座り、いよいよ私の初ホラーナイトの始まりです。

案の定、映画は最初からどこがおどろおどろしく、私の膝はグラグラです。貞子が出てくるたびに「ひっ」と喉から変な声が出て、思わず横にあったクッションをつかんだ途端、「今が肝心!」とクッションを彼に取られてしまいました。「ちゃんと見て! 目をそらしちゃダメ!」ひいいいい、私は怖くて瞬きもできず、まるで「時計じかけのオレンジ」状態になって見てしまいました、貞子。何度も。

なんとか全部見終わった時は、水泳の100mダッシュをしたかのように息苦しく、ぐったりとしてしまいました。「どうだった?」と聞く彼を死んだ魚のような目でぼんやりと見つめます。「怖かった」声を絞り出すようにして応えました。

ただ、いつもと何か違います。予告編を見た時の方がずっと怖かった気がするのです。見ているときは確かに怖かったけれど、見た後に不思議と覚えていません。予告編を見た後は、何度も恐ろしいシーンがフラッシュバックしてきましたが、その時全部見た後はなぜかあまり具体的なことを覚えていないのです。想像の余地がないほど見尽くしてしまったからでしょうか。悔しいことに彼の理論は一理あったようです。

彼は満足そうに頷くと、「じゃあ明日はこれね!」と「仄暗い水の底から」を見せつけてきました。もうジャケットからして見たくない。でも翌日もしました、ホラーナイト。そしてその日以来私はホラー映画を見ていません。見たいとは思わないけど、見るときのトリックは心得ているので多分大丈夫だと思います。

『オニのきもだめし』の作者紹介:

岡田よしたか
1956年 大阪生まれ。 著書に、『おーい ペンギンさーん』『特急おべんとう号』(福音館書店)、『ちくわのわーさん』『こんぶのぶーさん』『うどんのうーやん』(ブロンズ新社)、『ハブラシくん』(ひかりのくに)などがある。奈良県在住。 2012年『ちくわのわーさん』(ブロンズ新社)で、第3回リブロ絵本大賞を受賞。


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